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【ゾッとする話】崖の下に行かせて

【投稿者:夏樹さん】

友達のアヤ(仮名)から、夜中0時頃に「今からどっか行かない?」と、急にLINEが来ました。

次の日は仕事が休みだし、暇だったこともあり、すぐに了承の返事を送ったのです。

アヤは車を持っているので、私の家の前まで来てもらい、そのまま車に乗って適当に海まで走ることになりました。
お互いの近況を話したり、仕事の愚痴を言い合ったりするのに夢中で周りの景色を見ておらず、気づいた時には海ではなく、林道を走っていました。

「アヤ、海に行くんじゃなかったの……?」
「崖のぉぉーーー、崖のぉぉーーーー、崖にぃーーーーーーーー」
「あ、アヤ、どうしたの?」
「崖ぇーーーーー、崖に行くぅーーーーーー、崖のぉーーーーーーーー、崖のぉぉぉーーーーーー」

アヤはやけに間延びした声で、要領を得ないことばかり言い出し、そのうちハンドルに額を打ち付け始めました。

「アヤ、危ないから!やめて!」
「崖ぇぇーーーーーー、崖の下にぃーーーーー、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

幅の狭い林道を運転していたので、このままでは車ごとすぐ横の崖へ転落してしまうと思い、必死にアヤを止めました。
アヤの手の上からハンドルを握り、崖に落ちる手前で何とか車を止めると、アヤは先程より更に大きな声で叫び出し、車から降りて林道を走っていってしまいました。

「アヤ!危ないよ、戻ってきて!」

時刻は深夜1時過ぎ、空はまだ暗く、明かりと言えば車とスマホのライトくらいしかありません。
林道は真っ暗で何も見えず怖かったのですが、このままアヤを1人にさせるのは危ないと思い、スマホで足元を照らしながらアヤの向かった方向へ歩いていきました。

しばらく歩くと、アヤが崖の下をのぞき込むように立っているのを見つけました。
声をかけたのですが、こちらを見ようともしません。
腕を強めに引っ張ってみたりもしたのですが、まるでアヤが重い岩になったかのように、少しも動かせないのです。

「アヤ、どうしたの……。今日なんか変だよ……」
「……ぁ」
「え?何?」
「した、した」
「した?」
「した、おとうさん」

舌足らずな幼い子供のような話し方で、アヤは崖の下を指さします。
そちらに何かあるのかと思い、スマホのライトで照らしました。

「えっ!車!?け、警察、あ、救急車も呼ばないと……!アヤ!?」

転落事故に遭ったのでしょうか、崖の下には大破した1台の車があったのです。
慌てて警察と救急車を呼ぼうとスマホを操作していると、アヤは気を失い、その場に倒れてしまいました。

倒れたアヤを介抱しながら警察と救急車が来るのを待ち、来たら事情を説明して、とにかく大変な1日でした。
アヤは倒れてからずっと気を失っていて、次に目が覚めたのは2日後です。

「あの日のこと、覚えてる?」
「うん、何となく。。あの時、ちゃんと意識はあったんだけど、、なんか自分の意思で体を動かせなくなっちゃってて、、怖かった……」

アヤが言うには、夜中に私を遊びに誘ったあたりから、自分ではない第三者に体を操られている感覚があったそうです。
そして気を失う前に、男の人と子供の声で、「見つけてくれてありがとう」という言葉が聞こえたと言っていました。

焦っていたので警察に詳しい事情を聞けず、ここからは私の推測になりますが、恐らく崖の下に転落していた車には、アヤが声を聞いた親子が乗っていたのだと思います。

何らかの事情により崖の下に車が転落し、そのまま亡くなってしまったのでしょう。

あの林道はあまり人が通らないらしく、早く自分達を見つけてほしくて、アヤにとり憑いたのでは無いでしょうか。

恐ろしい体験をしましたが、同時に、見つけられて良かったという気持ちもあります。