2020年、日本政府は「ムーンショット目標」を発表しました。ムーンショット…?と聞いても、あまり聞き覚えの無い言葉でどういった目標なのか想像つきませんよね。
ムーンショット目標では、今までにない大胆な発想の研究開発を推進し、テクノロジーを駆使した新しい生活様式の提案を掲げています。
2050年までに、ロボットやアバターを使った遠隔コミュニケーションや、仮想現実世界が当たり前になる社会の実現を目指しているようです。本当に国のプロジェクトなの?と思う位、フィクションのような話ですよね。
未来に向けた明るい話題の様にも感じますが、その一方で怪しい噂も唱えられています。
ムーンショット目標は、人体と機械が融合する「トランスヒューマニズム」の推進に繋がっていて、いつか人間が生身の体を捨てて機械の体になるのでは…と言われているのです。
今回は、ムーンショット目標が描く日本の未来の姿と、噂されている都市伝説について探っていきたいと思います。
ムーンショット目標で日本の未来はどうなる?
ムーンショット目標とは?
そもそもムーンショット目標は、内閣府による「ムーンショット型研究開発制度」の中で挙げられている目標のことになります。この研究開発制度は、内閣府ホームページによると次のように説明されています。
我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する新たな制度です。
内閣府「ムーンショット型研究開発制度」より引用
今までに無い、新しい発想を用いた研究開発を進めていきたい…といった感じでしょうか。
ムーンショット型研究開発制度には、少子高齢化や災害といった日本が抱える問題をそういった発想により解決したいというねらいがあります。また、新たに生まれたテクノロジーを活用した生活様式を提案し、より人々が幸せになれる社会を目指そうとしています。
ムーンショット目標の気になる内容とは?
2020年1月には、内閣府が「48回 総合科学技術・イノベーション会議」を開催し、そこで
6つのムーンショット目標が設定されました。その後、7月に開催された「第30回健康・医療戦略推進本部」でもう1つの目標が設定され、合計7つの目標が掲げられています。「Human Well-being(人々の幸福)」を目指し、社会・環境・経済の課題を解決するための目標だとされているムーンショット目標。果たして、その目標とはどういったものなのか…ここで紹介したいと思います。
①2050年までに、人が体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
②2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
③2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
④2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
⑤2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
⑥2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
⑦2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現
これらが現在提示されている7つのムーンショット目標です。今回は、この7つの内、噂になっている都市伝説と特に関わりが強い、①と③の目標について詳しく見ていきます。
科学技術で人間の能力が強化される未来
まず、「①2050年までに、人が体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」という目標。
この目標の中で注目したいのが、「2030年までに、望む人は誰でも特定のタスクに対して、体的能力、認知能力及び知覚能力を強化できる技術を開発し、社会通念を踏まえた新しい生活様式を提案する。」という点です。
つまりは、科学技術によって人間の能力を強化する技術の開発の推進ということです。そして、それらによる新しい生活様式を2030年までに提案し、2050年までに普及することが目標と掲げられています。
では、人間の能力を強化する科学技術とは、どういったものなのでしょう?
例えば、パワードスーツの装着による体能力の強化が挙げられます。
パワードスーツは、生身の体に装着することで筋力を増強する機械や装置のことです。
フィクションのような話ですが、実際に世界中で研究開発が進められており、軍事、医療や介護、重量物を取り扱う物流といった分野で役に立つと言われています。これを装着することで、生身の体では運ぶことのできないものも容易に持ち上げることができるようになる訳です。
また、生身の人間がロボットや仮想現実上のアバターを遠隔操作して、仕事や学習を行うといったことも人間の能力を強化する技術の1つです。
現在、テレワークやリモート授業、オンラインでの会議や飲み会といったように、インターネットを通じての社会参加の形が広がりつつありますよね。
その技術がさらに進化して、社会的にも当たり前になっているというのがムーンショット目標の中で掲げられている未来の姿でもあります。将来的にはVR空間上にある会社に出社する、学校に登校するといった社会になっているかもしれません。
これらの技術は、体が不自由といった障害者や高齢者の社会参加を手助けすることや、遠隔操作をすることで場所や時間の制約を無くすことにも役立つと言われています。
ロボットが身近な存在になる未来
さて、ムーンショット目標の「③2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」に関しては、どういった内容なのでしょうか。
人と共生するロボットというと、ドラえもんを思い浮かべる人も多いかもしれません。漫画やアニメには、高い知能を持ったロボットや、人の様に寄り添うロボットが登場することもよくありますよね。
ムーンショット目標として掲げられている未来の日本は、それに近いとも言える世界です。人の感性や倫理観を共有し、人と一緒に成長するパートナーAIロボット、実験や研究に関して新たな発見を行うAIロボット等と共存する未来が目指す姿として提示されています。
現在でも工業用ロボットが工場で活躍していたり、aiboのようなペット型ロボットが癒しを与えたりといったことはすでに実現していますよね。ソフトバンクが開発したPepperは実際に店員として働いたりすることもあれば、家庭での会話相手になったり、色々と活動分野を広げています。
ムーンショット目標で目指している未来の姿は、現在よりもさらにロボットが身近な存在になり、家庭や社会といった様々な場所で活躍している世界のようです。
目標では、2030年までに一定のルールの下で一緒に行動して90%以上の人が違和感を持たないAIロボットを開発する…といったことが掲げられています。2030年というと、決して遠い未来ではありませんよね。
身近にドラえもんのような存在がいるというのは、一昔前では想像もつかない夢のような話でした。しかし、徐々にロボットの普及が広がっていることを考えれば、2030年時点で現実になっていてもおかしくないように感じます。
また、ムーンショット目標では、ロボットに対して様々な期待が込められているようです。
その1つはロボットが労働力となることです。少子高齢化社会が進むことによって減少した労働力を補うのがロボットという訳ですね。
その他には、ロボットを活用して新製品の開発、宇宙開発や災害での救助等、ロボットによって暮らしを豊かにすることが期待されています。
ムーンショット目標の怪しい噂
ムーンショット目標の先にあるのはトランスヒューマニズムの世界?
ここまで、ムーンショット目標の内、ロボットやアバターといったテクノロジーに関する部分について見てきました。今からもっと先の未来では、様々な技術によって生活様式が変わるかも?と考えると面白いですよね。
しかし、このように明るい未来の印象を感じさせる一方で、ムーンショット目標に関して様々な都市伝説が噂されています。
このムーンショット目標は、トランスヒューマニズムの推進に繋がっているのではないかと言われているのです。
トランスヒューマニズム…近年、都市伝説や陰謀論でよく耳にするようになった言葉ですね。これは、科学技術によって人間の身体能力や知能を進化させようとする思想のことです。
歴史としては意外と長く、1980年代にアメリカのカルフォルニア大学で始まったと言われています。義肢による身体能力の増強や、決済機能や自宅のロック機能を持つマイクロチップの人体埋め込み、脳波でロボットや機械を操るといった技術がトランスヒューマニズムの技術です。
人体と機械が融合してパワーアップするイメージですね。
現在、日本においてはトランスヒューマニズムの思想はまだまだ広がっていません。ニュース等で取り上げられることも少なめです。
しかし、2018年には「日本トランスヒューマニスト協会」が設立され、思想の普及活動が着々と行われています。また、人数は少ないですが、日本人の中にもマイクロチップを体に埋め込んだという方もいるようです。
人間が生身の体を捨てる未来
科学技術が進歩することで、人間がさらに高度な能力を得られるようになるのは、トランスヒューマニズムの利点とも言えるでしょう。
トランスヒューマニズムとムーンショット目標。ここまで聞いただけでも、科学技術やロボットを活用した未来という点が共通しているように感じられますよね。
人間の能力が高くなり、今よりもさらに便利になる未来…何だか良い話のように聞こえますが、その一方で怪しい噂も唱えられています。
信じられないような話ですが、機械との融合の果てに、人間は生身の体を捨てるようになるという話があるのです。
脳本体やデータ化した脳と機械の体を繋げて暮らす、人間の脳をデータ化して仮想現実上でアバターを使って生活するといったことが実現するのではないかと噂されています。つまりは、機械の体の人間や、データ上でしか存在しない人間が登場するという訳です。
ムーンショット目標では、アバターやロボットを使った遠隔コミュニケーションについて掲げられていましたが、それをさらに超えた科学技術です。
生身の体を捨てた人間は、果たして人間と言えるのでしょうか?機械の体を手に入れた人間はロボットに近く、データ上でしか存在しない人間はAIに近いとも言えます。人間とロボットやAIといった機械との境目が、今よりもあいまいになってしまうのかもしれませんね。
Facebookが仮想現実の社会をつくり始めた?
人間がアバターや機械の体を使って生活をする…いまいちピンとこない方もいるだろうと思います。何となく、フィクションのような、現実味の無い話にも感じますよね。しかし、全くの夢物語であると言えなくなるようなニュースがあるのです。
全世界に向けてSNSを運営するFacebook。有名ですよね。2020年9月にFacebookが驚きの発表を行いました。それは、今後、仮想現実上の新たなSNS「ホライズン」のサービスを開始するというものでした。
アバターと呼ぶ自らの分身を通じての他の参加者との交流や、グループでゲームを楽しむことができると発表されています。また、参加者はあらかじめ用意されたゲームで遊ぶだけではなく、新たな空間を作り出すことも可能だとのことです。
Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは「将来重要になる社会インフラを構築するための新たなステップだ」と述べています。
ここで、注目されるのが社会インフラの構築というワード。最初は、交流やゲームといったことしかできないですが、機能の充実と共にできることが増えていくのではないかと言われています。
それは、役所で行うような手続きや、仮想空間オフィスでの労働なのかもしれません。ムーンショット目標で掲げられている、アバターを使っての社会参加が、いよいよ現実になりそうだなと感じてしまいますね。
「あつまれ どうぶつの森」は仮想現実社会の先駆け?
2020年3月に発売されたゲームである「あつまれ どうぶつの森」。架空の世界でアバターを使い、島と呼ばれる自分の空間で買い物やDIYといったのんびりした日常を体験でき、話題となっています。
自分の島に他のプレイヤーに遊びに来てもらったり、逆に他のプレイヤーの島に自分が遊びに行ったりと、交流も楽しめることで人気です。
また、実際にあるファッションブランドがアバター用の洋服デザインを行う等、ゲームと言えども本格的な要素がたっぷり含まれたつくりになっているそうです。
今のところ、ただのゲームと認識されていますが、実のところ、この「どうぶつの森」は仮想現実社会の先駆けではないかとも言われています。
確かに、自分の空間でアバターを介して現実のような日常を送るというのは、先駆けと考えてもおかしくはないかもしれません。
そもそも、このゲーム自体が今後の仮想現実社会を受け入れる準備として仕掛けられたものではないか…なんていう噂もあります。
ゲームとしてあらかじめ刷り込みの様に慣れてさせておけば、実際に仮想現実社会が到来した時にちょうど良いということでしょうか。
あくまでも噂話ですが、ゲームの登場とムーンショット目標の発表の時期も近く、もしかしたらそうかもしれない…と考えてしまいますね。
さいごに
ムーンショット目標では、ロボットやアバターを活用した遠隔コミュニケーションや、暮らしを支える存在や労働力としてロボットが活躍する未来が描かれています。
それらの科学技術により人間の生活がより便利になることでしょう。しかし、その一方で怪しい噂も唱えられており、トランスヒューマニズムの推進に繋がっているのではないかと言われています。
そして、人間と機械の融合の果てには、人間が生身の体を捨てて機械の体になったり、仮想現実上で暮らす存在になったりするのでは…と噂されているようです。
そんなことが起きるのかとにわかには信じがたい話です。
しかし、現実に仮想現実の世界を楽しむサービス提供は開始しており、全く否定することもできないと感じます。
また、近年ではウイルスの流行の関係もあり、テレワーク等も普及して生活様式が変化しています。
リモートでの仕事や交流が広まるなんて、数年前は想像ができなかったですよね。
そう考えると、現在ではありえないと感じる未来の姿も、近い内に現実になってしまうのではないかと思ってしまいます。
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