UMA(未確認生物)ファンにはもちろん、一般の皆さんにも知名度の高いネッシー。
今やスコットランドのマスコット的存在でもありますが、今回はあらためて、そんなネッシーの正体について考察していきたいと思います。
スコットランドの大御所UMA、ネッシーとは!?
グレート・ブリテン島の北部にあるスコットランド。極上ウイスキーを産出する寒冷な土地柄で、風光明媚な観光地が数多くあります。
特に古城の映えるネス湖には、「ネッシーに会えるかも!」と期待をはせて遠路はるばるやってくる人が多く、ネッシーのおかげで発展した、といっても過言ではないでしょう。
1933年ごろから目撃が相次ぐ
「ネス湖の怪物」は、1930年代に近辺の道路が舗装されてアクセスが容易になり、カメラを持った観光客が頻繁に訪れるようになったのと時期を同じくして、目撃例が増えていきます。
見たこともないような巨大な動物が湖を泳いでいるのを見た、湖面に長い首を出していた…といったごく短い目撃談がほとんどで、全体像を見たような人はほとんどいません。
新聞記事となって徐々に知名度を上げたネス湖の怪物は、やがて「ネッシー」の愛称をつけられ、世界的に有名になります。
約1500年前にも目撃談があった!
実はネッシーについての記述は、かなり古くまでさかのぼります。
スコットランドにキリスト教を伝道した守護聖人コルンバ(521-597)が、ネス湖周辺で人に害を及ぼしていた怪獣を退散させた、と7世紀の「聖コロンバ伝」に伝えられています。
この手の奇跡エピソードは聖人伝に多く、聖ジョージの竜退治や、アイルランドの聖パトリックが蛇を追い払った話に似ているなと突っ込みどころもありますが、一番古い記録としては貴重なものです。
これにより、ウィリアム・ウォレスがスコットランドの独立を願ってフリーダーム!と叫んでいたのよりもずっと前から、ネス湖周辺には不思議な生き物が棲息していた、ということがうかがえます。
ネッシーのプロフィール
ネッシー目撃談や写真をまとめていくと、しだいに以下の特徴が明らかになってきました。
・体長は10-20メートル。首が長く、頭部には2本のつのが出ている。
・体色は黒っぽく、背中部分にはコブがみえる。
・夏季に出没することが多い。常に単体行動。
ネッシーの存在については、英国政府が真剣に保護を考えていた時期もあったそうです。
数々の科学的学術調査が行われましたが、決定的な発見や結論はなかなか出ないまま。
2000年代に入っても目撃はぽつぽつとあり、動画や写真がネット上で提出されています。
初期の目撃写真が解析され、流木やボートの影の見間違いであった、フェイクであったというネタバレが進んでもいます。
あの有名な「外科医の写真」が実は捏造と分かったことは大きな打撃でしたが、逆に言えば最先端技術をもってしても説明のつかない写真が厳選されてきている、とも言えます。
大スターのネッシー。その正体は?
2018年、ニュージーランド・オタゴ大学のニール・ジェメル教授(遺伝子科学専門)とそのチームは、ネス湖の水サンプルを採取し、その中に含まれる有機物DNAの調査を行いました。
その結果、大量のウナギDNAが検出されたという解析データをもとに、翌2019年「ネッシーの正体は大型のウナギである可能性が高い」という結論を発表したのです。
ロマンあふれるネッシーの姿を想像し続けてきた人にとってはかなり脱力させられる説であり、また日本人的には「かば焼きorひつまぶし何人分?」と一気に食材対象になってしまうショッキングな結論でした。
ただしこれは有力な説というだけで、決して決定的ではありません。ネッシーの正体については各説があります。
【考察1】ずばり、恐竜の生き残り!
最もデフォルト的な定説です。当初はアパトサウルスなどの雷竜を想像する人が多かったのですが、次第に水棲中心の首長竜説となっていきました。
1975年の学術調査によるひれや全身写真を見ても、プレシオサウルスのフォルムに激似していることがわかります。
ただ、古代生物などが種として存続するためには、少なくとも数十~数百程度の個体が必要である、という条件がネッシー恐竜説を困難にしています。
それだけいればもっと目撃数があるだろうし、巨体を維持するための魚など食糧がネス湖の環境では不足するはず、などの反対意見もあります。
ネス湖は縦に長細い湖ですが、水深がとても深く見通しがきかないため、湖の深部にあるトンネルで棲息しているのでは…という説もあります。
【考察2】巨大な魚なのでは?
ネッシーを魚類と考える人もいます。数年前、iPhoneの地図アプリ上に映り込んだネッシーの画像が話題になりましたが、こちらを見ると確かに大型の魚のような形に見えますね。
前述したウナギの他、欧州には、オオチョウザメやヨーロッパオオナマズなど4-6m級の大物に成長する淡水魚がいますし、他地域の大型魚が釣り目的で放流され、そのまま野生化・巨大化した…といったシナリオも十分に考えられます。
ひとつの湖というごく限られた環境での棲息例として、日本の巨大魚UMA「タキタロウ」と比較しても興味深いでしょう。
【考察3】別の生き物が巨大化・肥大化した…?
首長竜・大魚という2大仮説の他にも、目撃されたネッシーの特徴や動画などをもとに、色々な仮説が立てられています。
サーカス団の動物が湖で水浴びをしていたところを見間違えたのではないか、と提唱している研究者がいますが、これを受けて実は大型の哺乳類かもしれないという説もあります。
軟体動物説は、前述の1975年の学術調査時にとられた頭部の写真に、「つの」が2本ついているように見えることから、ナメクジやアメフラシ、ウミウシなどを連想したものと思われます。
余談ですが、筆者はスコットランドの離島を訪れた際に、草地に20㎝はあろうかという驚愕サイズの真っ黒いナメクジの群れを見つけ、腰を抜かしそうになったことがあります。
こういった地元ではおなじみの生物が巨大化してモンスター視される、というのは何だかゴジラ的感覚とも言えますね。
ケルト伝説「水棲馬ケルピー」とネッシーをつないでみる
このようにいまだ得体のしれないネッシーですが、ちょっと見かたを変えまして、民間伝承についても触れておきましょう。
ネス湖のあるスコットランドはお隣のアイルランド同様、ケルト文化が根強く残る地域であり、特徴のある妖精伝説が豊富に残されています。
現代的ないわゆる「妖精」のかわいらしいイメージとは異なり、荒ぶる自然を体現したような恐ろしいかたちで伝わっているものが多いのですが、湖や海に棲息するといわれる「水棲馬」もそのひとつです。
凶悪・肉食系!!水棲馬とは?
水棲馬とはその名の通り、水の中に住む馬なのですが、普通の馬とは全く異なって肉食(!)、非常に獰猛な性格で人間や家畜動物を捕食する、という怪物です。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」や「アナと雪の女王2」には水の精霊としての水棲馬が登場しますが、ケルト民話においてはひたすら恐ろしい人間の敵として描かれています。
彼らの手口は巧妙で、水辺にひっそりとたたずんで人間の気をひき、近づいたとたんに水中に引き込んで食べてしまうそうです。
淡水にすむものはケルピー、海にいるものはアッハ・イーシュカという風に呼び名が変わりますが、怪物としての特徴はほとんど同じです。
実は身近で怖い存在
そんな妖精話は、子どもを水辺に寄せないためのお伽話なのではないか?と一笑に付される方もいるでしょうが、地元民にとって水棲馬は本気で対峙するべき恐ろしい存在でした。
ネッシーが有名になる前の20世紀初め、紀行文で有名な劇作家のJ.M.シングがアイルランド・グレンダロッホ近くのナハナガン湖にて、ごく最近起こった事件として殺された犬の話を採取していますが、この頃まで水棲馬の被害が日常的にあったという事が考えられます。
ネッシー=水棲馬ケルピーなのでは…?
水辺にいるところを急に襲う…というと、なんだかワニのようです。
姿態のよくわからない動物であったため、古代ケルト人が水に棲んでいる「馬」とあてはめたのでしょうか。
ものすごく雑な仮説ですが、筆者はこの一連の「水棲馬」というのはブリテン島・アイルランドに幅広く棲息している未知の水棲動物の一種であり、その最たるものがネッシーなのではないか!?と考えておりますが、いかがでしょうか。
まとめ
約1世紀にわたって人々のロマンを掻き立ててきた、「会えるかもしれないUMA」ネッシー。
現在も健在なようすなので、イギリス方面へ旅行に出かける予定の皆さんは、ぜひネス湖を行程に入れてみてはいかがでしょうか?
千載一遇のシャッターチャンスを緊張で台無しにしないためにも、使い慣れたスマホやデジカメをチェック万端にしてから訪れてみて下さいね!