【投稿者:よりのつさん】
私達一家は登山をすることが大好きで、週末になると山に行きます。
登山口までは車で行き、そこから山頂を目指して歩くのがいつものプラン。
「天気が良くてよかったね」
「ああ、そうだね。このぶんだと3時間ぐらいで頂上に到着するんじゃないか」
「そうね。さ、頑張りましょう」
家族で話しながら景色を楽しんで山頂を目指します。
「あ、山頂が見える!」私が山の上の方を指差したその瞬間、人が横を通ったような感じがしました。
こういった気配がする時は…幽霊が必ずいる!
そう思った私は辺りを見回すと…木の影に登山服を着た男が立っていました。
木の後ろに隠れるようにして、体を半分出した状態でこちらをジッと見ています。
「ああ、あああ」母が私と同じ方向を見て驚いているので「いるよね?」と聞いてみると「男の人がいるのよ」と言うではありませんか。
私は「登山服を着た40代くらいの男の人が立ってるよね?」と話すと「そう、でも、お母さんに見えるのは木からぶら下がっている姿が見えるのよ」と顔を引きつらせながら木の方をジッと見ています。
母にどのような特徴の男性が見えるか聞いてみればまったく私に見える男性と特徴が同じ。
ただ、母には自ら首を吊って亡くなった時の状況が見えていて、私にはまだ成仏できずにこの場所で浮遊する男の幽霊が見えているんです。
同情するような目で男性の方へと目を向けると…すでに消えていませんでした。
なるべく今見たことは忘れようとみんなで歌を歌いながら登山を再開しました。
「キャッ!」もうすぐ山頂に到着しそうになった時、母が転んでしまいました。
「大丈夫?そんなに転ぶような道でもないのに」と起こすと「誰かに足を引っ掛けられたのよ」と言うではありませんか。
でも、辺りを見回しても私達の他に登山している人はいません。
「気にするな」と父の一声で山頂を目指します。
12時を過ぎた頃、やっと山頂に到着した私達はお弁当を広げて、景色を眺めながら食べます。
「嫌!」母がいきなり立ち上がり、お弁当を落としそうに。
「ど、どうしたの?!」と聞くと「あそこに人!人が立ってるの!木からぶら下がっていた男だわ!」と私の後ろの方を指差すのです。
そう言った瞬間、フーッと冷たい空気が後ろから吹き付けられた感覚がありました。
「この感じはきっと」
恐る恐る後ろを振り向けば、そこにはさっき見た男性の幽霊がこちらをうらやましそうな顔で見て立っているのです!
「まずいな。憑いてきちゃったみたい」と感じた私は「ね、ここから早く出た方がいいよ」と家族に伝えました。
「そうね」急いで私達はリュックにお弁当箱やペットボトルを入れて帰る準備を始めす。
車に戻ると、みんなどこかホッとした様子。
「さ、早く山を下りないと、霧で前が見えなくなって大変だ」と父は車のエンジンをかけて、坂道を下っていきます。
山のカーブのきつい場所に来ると車のスピードがグングンと上がります。
「ね、お父さん。もう少し速度を落とせないの?このままじゃ下り坂だから危ないよ」と注意します。
「おかしいんだよ、ブレーキが利かないんだ!」と焦りだすので車内はパニック状態に。
「車検に出したばっかりでしょ?買ってから3年しか経ってないし、エンジンだってこまめにメンテナンスしてるのにエンジンが故障するの?」
ブレーキが利かない車はグングン速度を上げて下り坂を走っていきます。
坂の下は崖。
このまま落ちれば車ごと転げ落ちてしまい、大怪我ではすまないでしょう。
その時、母が「やだ!フロントガラスに顔が、男の人の顔が浮かび上がってる!」と叫びます。
フロントガラスを見れば、あの男の幽霊の顔が異様な大きさで浮かび上がっています。
私はとっさに「消えろ!!」と男の幽霊に向かって叫びました。
何度も大きな声で叫ぶと、顔はスーッと消えていきました。
しかし、父はその声に驚いてしまい、ハンドルを切ってしまいます。
「うわ!!崖に落ちる!!」
もう駄目だと思った瞬間、、、
道路左にある避難場所に入った車は斜めの状態で停止しました。
その後、修理会社にブレーキを点検してもらいましたが、まったくエンジンに異常はありませんでした。
でも、父は気持ちが悪いとその車を売却し、新しい車を購入して乗っています。
この出来事以来、登山に行く時はバスと電車を利用して行くようになりました。