【投稿者:MAMIKOさん】
この話は、私が大学に入学してしばらくしてからの体験談です。
実家からの通学が厳しかった私は、入学と同時に一人暮らしを始めました。
新居は、大学から5駅ほど離れた街を選びました。
家から歩いて数分の洋食屋さんでアルバイトも決まり、新たな生活が始まりました。
徐々に大学の同じ専攻内でも友人も出来始めた頃、大学の寮に住んでいた友人の家にみんなで集まる事になりました。
まだ、よく知らない人も沢山いました。
そんな中、私に声をかけてきてくれた女の子のゆきは、線が細く、色も白くて儚げな印象の女の子でした。
彼女は私といると強くなれる気がする、と言い出しました。
「会ったばかりなのに変な事を言う女の子だな」と思いましたが、同じ専攻という事もあり、それから少しずつ一緒にいる時間も増えていきました。
そんなある日、彼女が私の家に泊まりに来る事になりました。
私は他の友人も誘うつもりだったのですが、彼女は二人がいいと言ったので、「何か話でもあるのかな?」と思いつつ、結局二人で過ごす事になりました。
彼女は、私のマンションに来てエレベーターに乗った時から部屋に入るまで、不自然にキョロキョロと顔を動かしていました。
少し不思議に思いつつも、彼女を部屋まで案内し、泊りがけ用の荷物を部屋の端に置きます。
すると突然ゆきが
「この部屋は、大丈夫。誰もいないから。」
と言ったのです。
何の話か全く分からず、分かるように説明してほしいとお願いしました。
どうやら彼女は、霊が見えるらしく、私に霊のようなものを感じるけれど見えない、でもそれが何か分からない、というのです。
そして、その正体を知らないといけない気がするとも言いました。
私はすこしあっけにとられて、驚きつつも、
「でも、部屋にいないならどうしようもないよね、会った時でいいんじゃない?」
と、言うと、彼女は、「それが君の強みかもね。」と言いました。
その後は他愛もない話をしつつ、アルバイト先の洋食屋さんに2人で夕ご飯を食べに行く事になりました。
洋食屋へは、池の側を歩いていくのが最短ルートなのでその道を2人で会話しながら歩いていました。
すると突然、彼女がつまづいた拍子に転んでしまったのです。
「大丈夫?」と声をかけると、
一瞬ゆきが引きつったような表情をうかべながら「何が?」という返事が返ってきて、その後何もなかったように歩き始めたのです。
その後のゆきの表情や雰囲気が夜道でも分かるくらいにおかしな感じがしました。
何となく、この話をしたらダメなんだ、と思いながら、何気ない話題に変えつつようやく洋食屋に着いたのですが、彼女の様子が明らかにおかしい感じだったのです。
笑顔が一切なく、顔がひきつっている感じで、そして全身が震えていました。
直感的に、彼女には何かが見えていると思い、「やっぱりラーメンを食べたいから、この先のラーメン屋にしよう!」と彼女の腕をとり、私は強引に歩き始めました。
大通りまで出て、私たちは人がごった返しているラーメン屋でラーメンを食べ、帰りは池を通らないルートで随分と遠回りをして家に戻りました。
ラーメン屋ではゆきの表情は大分と和らいでいて、ラーメンもちゃんと食べていたので少し安心していました。
ようやく部屋に戻り、私は気になっていた事を彼女に質問します。
「洋食屋では何があったの? 大丈夫??」
すると、(信じられない話ですが)彼女が突然、聞いたことも無いような低い声で「邪魔をするな!」と言ってきたのです。
驚いて彼女の方を見ると、彼女の目つきや顔つきが明らかにいつもと違うのです。
「ゆき?? ゆき!しっかりしな!」
と彼女の肩を揺らしながら言ったのですがそれでも彼女は、「邪魔をするな!!」と叫ぶので私はゆきの名前を呼びながら彼女の頬を叩きました。
すると彼女は、ハッとして、「痛い!」と言ってきたので、「ゆき、しっかりして!」ともう一度叫びました。
正気に戻った彼女から聞いたところによると、彼女は池で霊?につまづいてしまい、直後にたくさんの霊に出会ってしまっていたようで、彼らのかけてくる声に自分が消えてしまいそうになっていた、と言うのです。
洋食屋では霊が見えた訳ではないけど、大きな得体の知れないものが渦巻いていた、と言いました。
私は、彼女に、「邪魔をするな」と言われた話をしましたが、それは覚えてないとのこと。
そして、今もこの部屋に霊はいないと言いました。
それ以上は怖くて確かめられず、結局、なぜ彼女が霊に会ってしまう事になったのかも分からないままです。
ただ、「あの池には近づかない方がいい、気をつけて」と真剣な表情で言うゆきを見ていると、(憑依?したゆきのことを思い出すと)さすがに私も怖くなり、今の場所に居続ける事が不気味に思えてしまい、数カ月後に隣街に引っ越すことになりました。
結局アルバイト先も変えることになりました。
この一連の出来事はほんとに起きた出来事なのですが、ゆきの形相は明らかにいつもと違う感じでした。
怪談系のTVドラマなどで、いわゆる『憑依』的な演出をよく見かけると思いますが、ゆきのそれは、本当にそんな感じでした。
私を睨みつけたゆきの顔はそれまで見た事がないような形相だったのでドキンとしましたが、ゆきはゆきなので、「何とかいつもの彼女に戻って欲しい」の一心で、あと時は私も必死だったように思います。
「邪魔をするな!」と言った声はとても低く、普段のゆきの声とは全く違いました。
私を騙そうとしていたとしても、低くてこもったあの声は出せないのではないか?と今でも思います。
それ以前に池の側を歩いていた時の、あの震え方や冷や汗を彼女がコントロールしていたとはとても思えません。
ゆきとは今でもたまに居酒屋で集まる事もありますが、用事ができたとすぐに帰ったりする時は、「何か見えているのかな?」と心配になります。
ゆきからは、「霊がいても気づかないようにしないといけない」、と言われた事があるので、そんな時も声をかけたりはしないようにしています。
皆さんも、万が一霊を見ても、気付かないようにしてください。
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