【投稿者:テライさん】
引越し先を探している時、不動産屋の方に
「家賃が安くて交通の便が良い、築浅のデザイナーズマンションって無いですか?」
なんて、半ば冗談で言ったんです。
すると、「心理的瑕疵ありの物件ですが…」と、あるマンションの一室を紹介されました。
どうやらその部屋で数ヶ月前に、女性が病気で亡くなられたのだそうです。
事故物件ということが気になったものの、内見してみたところ綺麗な部屋だし嫌な感じもしなかったので、結局その部屋を借りることにしました。
実際に住んでみると快適で、その部屋で暮らすようになって1週間が経つ頃には、ここで亡くなった人がいるという事実はすっかり忘れていました。
しかし、引越しをして1ヶ月経ったあたりから、部屋の中でおかしなことが起こるようになったのです。
例えば、洗った後に片付け忘れていた食器がいつの間にか棚に戻してあったり、机の上に置いたままにしていたゴミが、目を離した隙にゴミ箱へ捨てられているんですよね。
他にも、誰も使っていないはずなのにトイレの水が流れる音が聞こえたり、乾いているはずのお風呂の床やリビングのソファが濡れていたこともありました。
まるで私の他に、誰かが同じ部屋で暮らしているかのような出来事が次々と起こったのです。
最初は「ストーカーが部屋に忍び込んでいるのでは」と、思いました。
だから警察に相談へ行って調べてもらったのですが、「誰かが不法侵入した形跡はない」と、はっきり言われてしまったのです。
「証拠がないと警察はちゃんと動いてくれない。自分で証拠を掴もう」と思い、ペット用の自動追跡カメラを用意して、カメラ越しに部屋の様子をスマホで確認することにしました。
目をこらして部屋の様子を伺っていると、いつの間に現れたのか、背中あたりまで伸びた黒髪に白い服を着た、知らない女性が映っていたのです。
(この人が私の部屋に忍び込んでいたの…?)
ストーカーが女性だったことに驚きながら観察していると、女性は私がわざと開けたままにしていた窓を閉めたり、机に置いたままにしていたゴミを片付け始めました。
部屋が片付くと今度はシャワーを浴びているような水音が聞こえて、シャワーが終わると女性はびちゃびちゃに濡れた髪のまま、リビングのソファに座ったのです。
勝手に私の部屋でくつろいでいる姿を見ているうちにムカついてきて、
「今すぐ部屋に戻って捕まえて、警察に突き出してやる!」と思ったのですが、あることに気づきました。
女性の体が透けていて、向こう側の景色が薄っすらと見えるんですよね。
(コレは生きている人間じゃない、既に死んでしまった人間、幽霊だ)
それに気づいて、背筋がゾワッとしました。
生きている人間にストーカーされていると思ってたら、実は幽霊が一緒の部屋で暮らしていたのです。
怖い、恐ろしいと思いながらも、スマホに映る女性の霊から目を離せません。
すると、あちらも私に気づいたのか、パッと顔を上げた女性の霊と、カメラ越しに目が合ったのです。
女性は、まるで私が怖がっているのを喜んでいるかのような嫌な笑顔をした後、煙のように消えていきました。
その後、恐る恐る部屋に戻ったのですが、どこを探しても女性の霊は見つかりませんでした。
怪奇現象も、その日以降、何も起こらなくなったのです。
しかし、時々、部屋の影から誰かがじぃっと見つめているような気配がして、それに耐えられず私はすぐ引越しました。
部屋に居たのが生きている人間でも十分怖いですが、それが霊だった場合、比べものにならないくらい恐ろしいと感じた体験でした。