【投稿者:アルバイターFさん】
大学生のA子は初めてのアルバイト先としてレストランを選択しました。
アルバイト先には同じ年代の人が働いていて、店長も二十代なので働きやすく安心していたのです。
店長はすこしイケメンの男性で、誰にでも優しく声をかけてくれるので、バイトの人たちからも人気があり、A子も大好きでした。
A子が元気がないときにも「なにかあった?」と誰よりも先に異変に気がついて声をかけてくれるのでなんでも店長に相談をしていました。
しかし、A子は最近あることで悩んでいました。それは、帰宅するときなどにどうも誰かにつけられているような感覚があるのです。
アルバイトが終わるのはいつも深夜なので、不安になりA子は店長に相談しました。すると、店長は家まで送ってくれると言ってくれたのです。
さすがにそこまでしてもらう訳にはいかないと思ったものの、店長はその日からシフトを合わせてバイト終わりに家まで送ってくれることになりました。
家の前まで送り届けてすぐに帰る店長にA子は誠実さなども感じとり、密かな好意を寄せるようになったのです。
しかし、急なトラブルなどにより店長が送れない日が出てきます。
一人で帰るのは不安でしたが、以前のようにつけられているような感覚などもなくなり「もう大丈夫みたいです」とA子は店長に告げたのです。
しかし、それでも送ると言い張る店長。
「何かあったらどうするんだ?!」「俺が責任もって送り届ける!」などと頑な。
そんな店長の勢いにA子はなんとなく違和感を抱くようになりました。そして、ふと、店長がA子を初めて送り届ける際にA子の家を知っているかのようにあまりにも自然に一緒に帰ったような記憶がよみがえったのです。
異様に優しくしてくれるのも、些細な変化に気がつくのも下心からなのではないか。
そして店長が送ることが出来ない日に気配がないのは、これまで店長がA子のあとをつけていて、店長があとをつけられない状態だからなのではないかと。
A子は怖くなり、店長から逃げるようにバイト時間が終わるとそそくさと帰るようになりました。
店長を刺激したら危険だと思ったA子はこっそりと引っ越し先を探して仕事を辞める決意。
こっそりと引っ越しを終えてバイトを辞めることを告げようとした日、店長は他店に応援のため会えずその日は帰ることに。
しかしその日の夜、A子は友だちに電話をしながら帰っていると、何者かに後ろから襲われてしまったのです。
幸い、近くに住んでいる人が悲鳴を聞いて駆けつけてくれたため大事には至らず、犯人は逃げてしまったのですが、A子は絶対に店長だと確信していたのです。
しかし、数時間後に捕まったのは見知らぬ男。
男はA子を狙っていたと自白したのです。
ということは、店長は単に自分のことを心配してくれていただけだったのかとA子はハッとし、疑っていたことを申し訳なく思いました。
結局この事件をきっかけにバイトを辞めたA子だったのですが、優しくしてくれた店長への好意を再認識し辞めたあとも会いたいなと思っていました。
辞める日にはみんなが送別会をしてくれたのですが、店長は相変わらず優しくて「夜道一人になりそうならいつでも電話して!すぐに駆けつけるからね」と言ってくれました。
A子は店長が優しいだけではなく、自分に好意を抱いていることも気がついていました。
店長は続けて、「夜道を歩く時には電話をかけながら歩いちゃ危ないよ!電話をしてるから、後ろから近づいてこられたことに気がつかなかったんでしょ?」と優しいながらも厳しく怒ってくれたのです。
本当に私のことを思ってくれてるんだなと思った瞬間、A子はゾッとしました。
店長は続けて、「今日は車で来てるから送っていくね」といつもの優しい顔で笑ったのです。
だけどA子はその後、トイレに行くと言ってそのままタクシーで帰りました。
そして、引っ越した家ではなく友だちの家へと向かったのです。
絶対に店長にバレてはいけない。店長を信用してはいけない。
なぜなら、A子は襲われたあの日に電話をしながら帰宅していたことを誰にも話していなかったからです。
歩きスマホしてたと言い出せず、A子は警察にも伝えていませんでした。
誰にも言っていないことをなぜ店長が知ってるのか…。それは、きっとあの日も店長があとをつけていたからなのでしょう。
バイトを辞めてしばらく恐怖で外に出ることもできなかったA子だったのですが、数ヶ月後に店長が逮捕されたことをニュースで知りました。
バイトの女性に対して猥褻と殺人未遂、監禁の容疑と聞き、A子はゾッとしたものの、更に恐怖に陥れる事態に。
それは、後日警察から連絡があり、店長の家からA子の行動記録などをつけたノートや写真も出てきたからです。
店長の家には監禁するためのアイテムが用意されていたようで、あの時異変に気がついていなかったら店長に連れ去られていたのかもしれないと、異様な優しさの店長の裏の顔にゾッとさせられたのです。