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【ゾッとする話】夜中の訪問者

FM都市伝説

【投稿者:はらださん】

これは、東日本大震災の復興のために、仕事で被災地に足を運んだ経験がある方から聞いた話です。

初めて現地に着いたときには、悲惨な光景はもちろんのこと、なんとも言えない匂いが被災地には広がっており、その匂いも光景も、異様に静かだった夜の無音も震災から何年経ったとしても忘れることが出来ないと言います。

しかし、被災地に到着したときには、地獄絵図だと思った光景も、徐々に慣れてきてしまい、当たり前の光景のように感じ始めて、与えられたことをこなすだけで無心に一日を過ごしていたらしいのです。

寝泊まりするところも完備されていない状況。被災地に入ってからは、余震に悩まされてなかなか眠れずに、また大きな津波がくるかもしれないと、密かに怯えていたと言います。

彼が寝ていたのは、車のなかです。同じように被災地の復興に携わっていた同僚の男性と車で寝泊まりをしていました。身体は疲れているのに、脳が色々な情報を整理しようとしているからなのか、地震への恐怖があるからなのか、この日も夜中なのにも関わらず、眠ることが出来ずにいたのです。

ようやくウトウトした時、車の窓をドンドンと叩く音で目を覚ました。被災地では、突然車の窓をノックされるのは、日常的だったということ。行方不明の家族を探すために、さまざまな人に聞き込みをする人、車のなかに取り残されている人がいないかと探している人などがいるため、窓を叩かれて、探している人の特徴を告げられ、みなかったかと聞かれることもあったので、また誰か来たのかな?とこの時も思ったらしいのです。

しかし、ようやくウトウト出来た彼の身体は思うように動かず、またドンドンと窓が叩かれ、その音はドンドン、ドンドン、ドンドン!と大きくなっていき、明らかに一人が叩いているような感じではなくなっていきました。

尋常じゃない叩きかたに、もしかしたら助けを求めているかと思い、身体を起こそうとすると、隣で寝ていた同僚に「起きるな!」と強く止められたのです。

「開けてやってもどうすることも出来ない。開けたらだめだ!」と制され、どうすることも出来ずに、そのドンドンと叩く音が止むのを待つしかありませんでした。

数分後、その窓を叩く音はピタリと止みました。しかし、同僚は起き上がっていけないというように、首を横に降るだけ。声を発することも出来ず、見捨ててしまったような申し訳ない気持ちで眠れぬ夜を過ごしたのです。

翌朝、なぜ開けたら駄目だったのか、もしかしたら困ってる人だったかもしれないのにと同僚に訊ねると、「確かに困ってる人だったね」と返されたそうです。

「困ってる人だとわかってたらなぜ、開けてあげなかったんだ?」と言い返すと、同僚は「生きているときに助けてあげたかったな」とだけ言って、口をつぐみました。そこで、彼はようやくハッとしたのです。あれは亡くなった人が助けを求めていたのだと。

もしかしたら、早く見つけて欲しいと訴えていたのかもしれません。窓を叩く音はその後も夜中に聞こえることがあったようですが、「夜中の訪問者は気を付けろ」が鉄則となり、開けることはなかったようです。

そして数年後、その同僚にその時のことを話したら、「精神的に参ってて幻聴が聞こえてたんだよ」とごまかされたようですが、彼はそれが幻聴じゃないことはわかっていました。

なぜなら、その音が聞こえた次の日、彼らが寝ていた車の窓には、複数の手形がついていたことを、鮮明に覚えていたからです。

ゾッとしながらも、彼は自分の無力さを感じ、この出来事からまた、この光景や日々は異様なのだ、早く日常を取り戻さなくては、人間の気持ちを取り戻すことが出来て頑張れたと語っていました。