【投稿者:半田ふみさん】
Hちゃんは小学生の頃、私と一番仲が良かった女の子です。
私とHちゃんは偶然にも2つ、同じ習い事に通っていたため、自然とふたりで過ごす時間が多くなったのでした。
ただひとつ、私の中で少しモヤモヤしていたことがあります。私はHちゃんの家に遊びに行ったことがなかったのです。
私がHちゃんの家に遊びに行きたい、と言うと、Hちゃんは決まって「ママに、家に友達を呼んじゃダメって言われているから…」とはぐらかされました。
小学生にとって大人は絶対的な存在。私も最初は、「Hちゃんのママがそう言うなら」と納得していたのですが、何かの拍子に、他の友達がHちゃんの家に遊びに行ったという情報を聞いてしまいました。
「家に友達を呼んではいけない」というのは噓だったのか?
もしかして、私だけにそう言っているのではないだろうか?
その疑念に取りつかれた私は、1回だけでいいからHちゃんの家に行きたい、とHちゃんに言いました。Hちゃんは少し困った様子を見せたあと、「明日ならママがいないからいいよ」と言ってくれました。
当日、わくわくしながらHちゃんの家に行きましたが、私は家の内装に少したじろいでしまいました。ピカピカのフローリング、真っ白な壁、そしてリビングには大きなピアノ。田舎っぽい私の家とは大違いの美しく整った家でした。
それでもやはり子供ですから、たじろいだのは最初だけで、だんだんと普段通りにふるまえるようになってきました。私たちは、学校にいるときと全く同じように盛り上がり、楽しく遊びました。
そんな中、おそらく予定よりも早く、Hちゃんのママが帰ってきました。
Hちゃんのママは品があり、とてもきれいな人です。私は習い事の送り迎えでもよく顔を合わせていたので、特に緊張もせず挨拶をしました。しかし、Hちゃんのママは少しギョッとした顔をした…ような気がします。
その翌日です。Hちゃんの様子がおかしくなったのは。
学校の靴箱でHちゃんを見かけ、いつものように「おはよう!」と言っても、Hちゃんは無言のまま、早足に教室へ行ってしまったのです。
私はぽかんとしてしまいました。
その日、何度話しかけても、Hちゃんは俯いたまま私を避け続けました。
そしてさらに翌日から、Hちゃん主導の私に対するいじめが始まりました。
いじめといっても集団で無視をする程度でしたが…Hちゃんが突然、それまで関わりがなかったグループを率いて私を笑いものにし始めたとき、私は大いに戸惑いました。そして、突然態度が豹変したHちゃんが怖くてたまらなくなりました。
当時のHちゃんについて人づてに知ったのは、それから6年近くも経ってからです。
なんと、Hちゃんの私へのいじめに関して、裏で糸を引いていたのはHちゃんのママでした。
Hちゃんがママに「家に友達を呼んではいけない」と言われていた、というのは嘘でもなんでもなかったのです。
つまりこういうことです。
Hちゃんの家にお呼ばれされるのは、Hちゃんママのお眼鏡に叶った子だけ。
そしてお眼鏡に叶わないのに、その敷居をまたいでしまった私は…。
だからといって小学生相手にそこまでするか、とHちゃんのママを恐ろしく思ったと同時に、私はHちゃんも被害者だったんだ、と気づき、悲しいような気持になりました。