【投稿者:エリオットさん】
ある夜、夫はなかなか寝付けずにいました。
疲れているため体はダルいのですが、眠気はまったくやってきません。
何度も寝返りを打つうちに、夫は頭がクリアになっていくような気すらしてきます。
ヤバい、本格的に寝られん。
夫は焦りだしていました。リラックスしなければ、そう思うほど眠りは遠のきます。
その時です。夫は金縛りに襲われました。
学生時代からしばしば金縛りを体験していた夫は、これが解ける頃には寝れるだろうと思っていました。
しかし、何度かかっても金縛りは慣れないなぁ。
そんなことを思っていたときに、足元に違和感を感じました。
なにかがもぞもぞと動いています。
あまりに眠れない自分の、皮膚が敏感になって感じる違和感だろうかと思った夫でしたが、あきらかに足の甲やかかとあたりに、生きているもののような動きをするなにかがいます。
そしてそれは、左足のつま先から徐々に、足首へと移動しています。
金縛り中の夫は、何かわからないものが自分のふとんの中にいて、それは少しずつこちらへやってきていることは理解しました。
さらに脳内はハッキリとしてしまっています。
なにこれ。なになに。
鼓動は早鐘を打っています。それは、もうふくらはぎあたりにいます。
そして、それはだんだんと形がわかるようになってきました。
指でした。
これは指だ。それも女の。
夫は怖いながらも、神経を研ぎ澄ませて集中していました。
指はゆっくりと下腹部から、腹をなで、胸にたどり着いています。
夫の金縛りはまだ解けません。息苦しいほどの心臓の音が、耳の奥で鳴っています。
のど仏に触れた指は、その突起を楽しむように皮膚を押すように進みます。
とうとう、あごに到達しました。
触るか触らないかの指のなんとも言えないなめやかな動きに、夫の怖さは最高潮に達します。
と、その指がついに下唇に触れた瞬間、、、夫は我に返り、思い切りその女の指を噛んだのです。
「ぎいやあああああ」
足元の方から聞こえてきた女性らしき者の叫び声は、夫の金縛りを解くに十分でした。
翌朝、夫は私にこう教えてくれました。
「昨晩金縛りにあってさ、なんか幽霊が出たんだけど、俺の体をまさぐってくるから指を噛んじゃった笑。幽霊でもちゃんと噛んだ感触があるんだね」
あっけらかんとした表情で話す夫を見て、この夫が一番怖いなと思ったのでした。