手持無沙汰の待合室で、置いてあった地元の観光ガイドを何気なくめくっていたら、これまで知らなかった秘蔵スポットが自宅すぐ近くにあるのを発見してびっくり…!
この本はまさにそのような、地元の方のための心霊・怪談スポットのガイドブック的存在です。
著者の菊実仔(きくみこ)さんは、神奈川西部で生まれ育った占い師さんです。
もともと霊感が非常に強く、お母様も霊媒師をなさっているように、霊と交信する力の強い家系のご出身のようです。
小さい頃、初めてこの世ならざる存在と出会ってしまった際の思い出などもはっきりと記憶しており、その体験談をノスタルジックをこめて語りだす序盤から、「この本はちょっとスゴイぞ」と感じ始めるのです。
何が凄いのか?といえば、これらの経験はすべて菊実仔さんご本人が体験したことなので、怪談や心霊体験談にありがちな「友人の知人から聞いた話」という風にいくつもの間接媒体が入っていません。
菊実仔さんという第一次ソースから、読者の私たちは直接話を聞いている形になるので、リアル感が半端ないのです!
また文中に出てくる地名は、神奈川県民である私にとってはなじみの深いものばかり。
ぼかすように表現されていたとしても、ジモティーとしては「あっ…これはもしや、あそこの店のことなのでは!?」と見当がついてしまうのです。
この観点でも、かなりリアリティが高いのもポイントでしょう。
そこまで凄惨なお話は出てこないのですが、私が一番仰天してしまったのは、平塚市にあるお菊さんのお墓についての言及です。
そう、四谷怪談のお岩さんと並んで古典怪談ヒロインのツートップをなす、あの番町皿屋敷のお菊さんです!
菊実仔さんはお墓の前でお菊さんに出会ったようですが、これまで「皿屋敷」を創作と信じて疑わなかった私は大ショックでした。
しかも、そんなセレブ霊が地元に眠っていることを知らなかったとは…。
私は一体、何十年神奈川県民をやっているんでしょう?(大反省)
このシリーズ、他の県についてもそれぞれの作者による「〇〇の怖い話」が刊行されていますので、ご自分の出身地や在住地にちなんだものを選んで読んでみても面白いと思います。
ふるさと再発見になるかもしれませんし、逆に時間帯によってはうかつに近寄るのを避けるべきなど、危険なスポットを知ることができます。
ちなみに私がこの本を読了した後、急に家族が「箱根に行こう」と言い出し、ギクッとしてしまいました。(もちろん、作中にある怖いスポットには行かなかったので安堵しましたが…)
特に遠方から神奈川に帰省するような皆さん、ぜひ事前にこの本をひもといて『備えて』みてはいかがでしょうか?
・タイトル:神奈川の怖い話
・著者:菊実仔
・出版社: TOブックス (2015/8/30)
・ジャンル:心霊体験談