歴史的な時系列に照らし合わせてみると、その時代には「存在するはずがない、してはならない」場違いな出土品や遺物。
そんなオブジェのことをオーパーツ、と呼びます。
これは古代文明やオカルト好きの皆さんの間では人気の高いジャンルですが、誰もが知っている有名なオーパーツを豪華モチーフにしてしまうという、ありそうでなかったミステリー小説が本書です。
ごく普通の学生である主人公は、ある日自分そっくりの青年「古城深夜」と出会い、そのトンデモない世界に引っ張り込まれていきます。
古城は世界中に存在する場違いな遺物・オーパーツの真贋を鑑定するスペシャリスト、自称オーパーツ鑑定士として各地を飛び回っているのですが、その鑑定現場で不可解な殺人事件が勃発。
上から目線の(笑)鑑定眼で、探偵役として華麗に事件を解決していきます。
全部で4つの事件簿となっており、ミステリーそのものには少々精彩を欠くものの、エンターテイメントとしての面白さは抜群で、さくさく読める展開です。
クリスタル・スカル、黄金スペースシャトル、恐竜土偶に巨石ストーンサークル…と、誰でも知っている有名な遺物がその都度テーマになっています。
オーパーツに造詣の深い方はもちろん、歴史のふしぎにちょっと興味がある…という若年の方でも、ばっちり楽しめる内容になっています。
欲を言えば、もうちょっとマイナーなオーパーツも取り入れて欲しかったかな?という思いはあります。
せっかく日本を舞台にしていますので、外国の有名どころだけではなく、土地のゆかりのオブジェもあればさらにオーパーツファンとしても唸れたでしょう。
それにしても有名な考古学出土品、歴史的遺物というのは実際にも不吉な現象が付きまとうものです。
「死を招く至宝」というのは、言いえて妙なサブタイトルだなと思いました。
鼻もちならない美形の古城深夜はじめ、登場人物も濃い人が多い、というのが特徴的です。
クリスタル・スカルを収集しているダンディ初老や、自宅にストーンヘンジ石庭を作ってしまう富豪だなんて、古代文明オカルトファンならリアルにうらやましい人たちばかりです。
個人的には、恐竜が大好きでたまらない空手刑事のまひるお姉さんと友達になれるでしょう(ヒロインとしてもっと活躍があるかと思っていたので、ちょっと残念…。)。
そもそもオーパーツ鑑定士という古城の肩書そのものが、ロマンあふれる職業ですね。小学生の頃に読んでいたら、将来の職業に選んでいたかもしれません!
そんな歴史ミステリー好きな方にはぜひ読んでもらいたい、おすすめの一冊です。
・タイトル:オーパーツ 死を招く至宝
・著者:蒼井碧
・出版社: 宝島社 (2019/1/10)
・ジャンル:オーパーツをモチーフにしたミステリー連作集。