【投稿者:都内の介護士さん】
これは、以前介護施設で働いていた時に体験した話です。
私が働いていたのは、3階建ての施設で一階は事務所やホールなどになっていて2階と3階が入居者の居住スペースとなっています。
夜は夜勤が4人、緊急時などに対応するために宿直として1人の計5人が待機をしているのですが、その施設では度々不思議なことが起こっていました。
夜は職員の人数も少ないので、エレベーターの機能を止めるのですが、その鍵は宿直者が持っており、停止している時には停止中という表示がされていました。
そのため、停止し忘れている時は夜勤の人が指摘し停止忘れ防止をするほどエレベーターの管理はしっかりしていました。
これは、入居者が一階に降り、外に出ていくことを防止する目的があったからです。
しかし、このエレベーターでは不思議なことが度々起こるんです。
それは、止めていたはずのエレベーターが夜中に突然動き出すということ。
表示は停止中なのに、みんなが寝静まった時、突如としてエレベーターが作動して、一階から3階に行き、また一階に戻ってドアが開いて停止するんです。
エレベーターの誤作動や停止忘れなのかと思ったものの、業者に訪ねても停止中に勝手に動くことはないと言われました。
勝手に動いた時の様子をカメラで確認しても、停止を解除した様子も誰かが近づいた様子すらないのです。
そのため、エレベーターにはさまざまなあることないこと噂があり、夜勤や宿直に入ることを嫌がるような人も出てくるようになりました。
私はエレベーターが動くだけで害はないんだから気にしなくてもいいのではないかと思っていたのですが、そうも言っていられないことが起こったのです。
それは、私が宿直で施設にいたときのこと。いつものようにエレベーターを時間になって止めて鍵を規定の場所に戻して待機をしていました。
一階は入居者がいないので静かなのですが、夜中に2時をまわった時、ゴトンという音と共にエレベーターが動き出したのです。
確認すると、もちろん停止中となっていて、エレベーターが三階に止まると三階で夜勤に入っていた人からエレベーターが動き出したと怯えた電話がかかり、私はなだめながらエレベーターが止まるのを待ちました。
でも、いつもなら一往復したくらいで止まるのに、その日はなぜか止まりません。
「ねぇ、なんかいつもと違うよね」と、3階の夜勤者が怯えているなか、私も今日はおかしいと身構えてしまいました。
エレベータの昇降は何度も繰り返され、とうとう2階の夜勤者は非常階段を使って降りてきて「どうなってるの?!」と取り乱し始めたのです。
私たちはカメラの映像でエレベーターのなかを確認したところ、そこには白いもやのような塊があったのです。
これはただごとじゃないと思った瞬間、そのもやはカメラに覆いかぶさるように全体が真っ白になり何も見えなくなりました。そしてエレベーターは一階で止まり、ドアがすっと開いたのです。
もやのせいでエレベーターの映像を確認することもできないため、私はエレベーターを直接見ようと駆け寄ると、エレベーターのなかに見知らぬ中年男性の姿があったのです。
その男性がこの世のものではないことはすぐにわかりました。
私のことをじっと見ているのに、私がいることを認識していないような男性の表情に私はゾッとしました。
しかしその男性はすっと歩みだし、ふっと消えていったのです。
しかしホッとはできません。男性が消えたあとにエレベーターを見るとまたも男性の姿があったのです。
そして、また生気のない目で私を見てゆっくりと歩み消えていく……。何度と繰り返した瞬間、またしても3階の夜勤者から電話があっったんです。
それは、入居者が急変したという知らせ。
その電話を受けると、生気のない男性は私を見てにやっと笑ったかと思うと消えていきました。
その後、急変した入居者は亡くなったのですが、ずっとエレベーターの映像を見ていた夜勤者は、モヤがずっとかかっていたと語っていました。
そのモヤが入居者を連れていったのではないかと持ちきりになりました。私は男性の姿を見たことは言えませんでした。
でも、あの時確かに男性はにやっと笑ったのです。その後、私は働き続けることができずに辞めてしまいました。
私がやめた一年後に施設も閉鎖され、その後更地になったようなのですが、あの男性が誰でなんの目的で現れたのかと考えてもわかりません。
でも、あのたくらんだ笑みは一生忘れることができません。