【投稿者:月詠さん】
私の故郷は北海道の南にある人口がものすごく少ない村でした。
小学校までしかなく、中学生になるのにその村から隣町まで出なければなりませんでした。
昔は人がかなり住んでいて盛んな町でしたが今は町と言うまでには程遠い村になっています。
小学校六年生の時、私はアウトドアクラブというクラブ活動をしていました。
その名前の通り、釣りや山登りをメインに活動するクラブで、私を含め五名の生徒が所属していました。
担当している先生はこの村に転勤して来てる先生でしたので,この村のことに関しては右も左もわからないと言う状況でしたが、先生の提案から小学校の裏にある山を登ることにしました。
山登りというほどの高さはなく、1時間もせずに頂上までいけるとのことを調べたらしく、頂上にある小さな公園から景色を眺めようと言う計画になりました。
当日の朝、先生を含め六人で山登りを始めました。
天気も良く、遠足のような気分で登り続けます。
20分くらい上ったところで休憩をしようとちょっとした広場のようなところで休憩することにし、水分補給やお菓子などを食べてゆっくりしていた時、先生が林の奥に何かがあるのを見つけました。
それは列車のレールが途中からですがあったのです。
レールは林の奥が見えなくなるまで続いており、その横には雑草に隠れてはいましたが道がありました。
何も知らない私たちは興味本位にそのレールを辿ることにしました。
しばらく歩くとレールが途切れ、その先にそこまで長くはないトンネルがありました。
トンネルの奥は出口が見えていましたが、その先は草に覆われて先には進めない状況に見えたので引き返そうとした時、それまで黙って歩いていた一人の生徒が突然つぶやいたんです。
「置いて行かないよ」
先生と周りにいた生徒は突然のことに驚きました。
先生はその子にこう問いかけました。
「置いてかないって何?? 誰と話してるんだ?」
誰と話しているのか、誰に声をかけられたのか、全くわからなかったのと周りには誰もいなかったので先生も含め私たちは混乱していました。
すると、その生徒が何かを指差しました。
「あのお地蔵様が足を置いて行けって…」
指の先には草に隠れお地蔵様があったのです。
誰も周りの整理をしていなさそうなのが見てわかるくらい草に覆われていました。
その生徒が言うにはお地蔵様が足を置いて行けといっていると言います。
その生徒の言葉で、おそらくその場全員の頭の中が真っ白になったんじゃないかと思います。
時間が経つにつれて明らかに感じてはいけない張り詰めたような冷たい空気が流れてきました。
直感でこのままではよくないと言うのが幼いながら私たちも感じてしまい、その時の恐怖がすごかったのをとても良く覚えています。
「お前たち逃げるぞ!すぐに山を降りろ!」
先生もお地蔵様の声が聞こえたのか、それともこの張り詰めた空気を察したのか、生徒たちに大きな声を出しました。
しかし、先生も含め誰も動くことができません。
「先生…体が動かないよ…」
何故かはわかりませんが体が全く動かなくなってしまっていて、冷や汗のような冷たい汗が体中から出て来ているのがわかりました。
「怖い…怖いよ…」
「足が掴まれてるみたいで痛い…」
6人とも焦り、痛み、恐怖…全てを感じていてどうしていいかわからない状況でした。
とその時、
パンパンパンッ!!
一人の生徒が熊よけのために持って来ていた爆竹がたまたまポケットから落下し、それを踏んで鳴らしたのです。
パンパンと弾ける音に体が反応して動くことができましまた。
「今だ走れ!」
再度、先生が大声で叫びました。
周りに目もくれず6人は必死に山を降り学校へと急ぎました。
疲れてることも、呼吸が苦しいことも忘れてしまうほど怖かったのを覚えています。
「お前たち何かあったのか??」
私たちが急いで帰って来たのを見ていた用具員のおじさんが何があったんだと言う声をあげ、駆けつけてくれたので、先生は今までの出来事を話しました。
おじさんは昔からこの村で育ったので、昔何があったのかなど大体のことを知っていました。
「これはもう40年近く前の話になるんだが…」
話を聞き終えたおじさんが過去に何があったのかを話し始めました。
昔は、駅があり、この村にも列車が通っていたといいます。
人が過疎っていくのにつれ、利用する客が減り閉駅し、そのまま誰も手をつけることなく整理をすることもなくと言った状況になっているといいます。
しかし、人が少なくなったと言う理由の裏に実はもう一つ理由があったといいます。
それは、運転中の列車に飛び込む自殺者が多かったこと、そしてトンネルを通る時、列車に乗る人が足を掴まれた感覚があると言う人が多数いたこと。
それにより、自殺者が多く怪奇現象が起きるトンネルというイメージから、乗る人が少なくなったとも言われているとのことでした。
そのあとに関しても誰も供養などしていないため、恐怖のあまり近づく人がいなくなり、私たちが恐怖体験した時まで至ると言うことです。
なぜ足なのか、それに関してはハッキリした理由はわかりません。
おじさんは最後に、絶対何があっても自殺はするなよと私たち生徒に言いました。
今ではしっかり供養され、トンネルの穴も深さがれております。
私が生まれ育った村の『怪奇現象ファイルその1』でした。