【投稿者:miyuさん】
廃墟巡りが好きな友人が体験した話です。
その友人は、残留物を見てどんな人が住んでいたのだろうと想像するのが好きだったので、ホテルや学校などの廃墟ではなく、民家をターゲットにして巡っていました。
ある日、小さな集落で民家を見つけて中に入ると、廃墟特有のカビの匂いがプーンと漂ってきて、室内は家具も家電も何もかもそのままの状態だったそう。
カレンダーから、廃墟になって8年くらい経過してるものの、建物の古さから見ると昭和の雰囲気。
家を見ていると、テーブルに無造作におかれた紙に気がつきました。その紙には殴り書きで「ごめんなさいごめんなさい」と紙一面に書かれ、なかには何を書いているのか分からないほどの文字の歪み加減。その追い詰められた筆者の思いが伝わり、ここはヤバイ廃墟なのかもと直感したのです。
でも、好奇心に打ち勝てずに廃墟を隅々まで見てまわっていると、なぜか脱衣場に古い携帯電話が放置されていたのです。しかも、充電器まで置いてあり、それは洗面台のコンセントに繋がれていました。
携帯の中を見たら、この家がなぜ廃墟になってしまったのかわかるかもしれない。そう思い、持ち帰り早速起動するのか試してみることに。
充電器に繋げると、なんと電源が入ったのです。
しかし、電話帳もメールも削除されていて、手がかりはなし。だけど、ひとつだけ残されていたのが、動画だったのです。
さすがに一人で見るのは怖く、翌日職場の人と見ることに。
動画の映像は荒いものだったものの、それは川の様子が映されていたと言います。とても穏やかな動画が5分ほど続くんです。
でも、職場の誰かが「音声はないの?」と言い出したのです。そこで、ミュート状態を解除し、音声を最大にしてもう一度再生。
川を歩いているのか、水の音がバシャバシャと聞こえ、小さな声でボソボソと何か話してるのが聞こえてきました。
誰かと話ながら撮影してるのかな。そう思ってると、そのボソボソはちょっとずつ大きくなっていき、「……めん……い、ご……な……」となにかを繰り返し言ってるのです。
固唾をのんで聞き入ると、突然「ごめんなさい!!」と男性の声が聞こえ、そこからはずっと断末魔のような大声で「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさぁぁぁぁ!」と川のなかを歩きながら叫んでるんです。
聞いてはいけないものを聞いてしまった。みんながそう思ったそうです。
この携帯電話を返さないと。そう思い、次の休みには返しに行こうと、家に持ち帰るのは怖くなり職場に置いていたのです。
一人で返しに行くのが怖いからと、廃墟仲間についてきてもらったのですが、怖くて奥まで入れない。玄関に置いて帰ることにし、そっと扉を開けると、なかでザワザワと話し声が聞こえたんです。
手にしていた携帯電話と充電器を置いて出ようとすると、ザワザワというハッキリしない声は次第に「ごめんなさい、ごめんなさぁぁぁい!」という、あの断末魔のような叫びに変わり、「ごめんなさい、ごめんなさぁぁぁぁい!」と響き渡ったのです。
逃げたいけど身体は動きません。命の危機さえも感じていました。ザワザワとした声のなかでごめんなさぁぁぁぁい!と地鳴りのような声がしたかと思う、さっと声が止まり、次に気がついたときには家の外。
2人とも、どのようにして家を飛び出したのか全く覚えていないのです。
これを機に、友人は廃墟巡りはやめました。
そして、その友人は最後に気になることを言いました。最近、撮影した覚えのない動画がスマホに入ってるのだと。
動画を撮影しない友人は気持ち悪くなって、動画の中身を確認せずに削除するのですが、その動画はいくら削除してもまた一覧に出てくるらしいのです。
怖くて確認することができないその動画の日付はあの廃墟に入った日のもの。削除しても、削除しても甦る動画にはどんな映像が映っているのでしょうか。
携帯電話を返しただけで、全て解決したのでしょうか。考えたくもありません。