殿堂入り都市伝説はこちら!

【心霊体験】ついてくる足跡(怖い話/ゾッとする話)

【投稿者:闇ペーパーさん】

ある年の冬のこと、親戚の家へ泊まりで遊びに行きました。
親戚が住んでいるのは、毎年冬になるとそこそこの量の雪が降る地域で、朝に親戚宅へ着いた時には既に3〜4cm程の雪が降り積もっていました。
私は普段、雪が滅多に降らない場所に住んでいるので雪景色を堪能しようと思い、雪の勢いが穏やかになった夕方頃、親戚宅付近を散策することにしたのです。
親戚宅の周りにあるのは田畑くらいで、閑散としていて人気が全くありませんが、過去に何度も遊びに来ていて歩き慣れているのもあり、恐怖心はありませんでした。

親戚に貸してもらった長靴を履き、しんしんと静かに降る雪の中を傘を差して歩いていると、前方に石像があるのに気づきました。
この辺りの道端で石像なんて、今まで見た記憶がありません。
(最近、設置されたばかりのお地蔵さんかな?)
そう思いながら近寄って石像をよく見てみると、石像の目はつり上がり口元には鋭い牙も見えていて、お地蔵さんと言うには言い淀むくらい邪悪な顔をしていました。
(これはお地蔵さんではなく、そう、まるで鬼のようだ…)
そんなことを思いながらじっと見ていると、石像と目が合った気がしたのです。
思わず目を逸らし、怖くなった私は、先程よりも少し歩くスピードを上げて不気味な石像から離れていきました。

(一体あれは何だったんだろう、どういう目的であそこに置かれているんだろう)
そんなことを考えながら歩いていると、ふと、後ろに気配を感じました。
それと同時に、サク…サク…という雪を踏みしめて歩く、自分以外の足音が聞こえてきたのです。
この辺りに住む人かと思って何気なく後ろを振り返りましたが、そこには誰もいません。
下を見ると、私より少し小さいサイズの足跡が、私の後を追うかのように雪の上についていました。

姿の見えない謎の足跡に恐怖心が芽生え、早歩きでその場を立ち去りましたが、足跡の主は私の歩く速さに合わせるかのようにサクサクと足音を立てながらついてきます。
道を変えても必死に走っても、どこまでもどこまでもついてくる足跡に、半ばパニックになった私はどうしたらいいのか分からなくなっていました。
親戚宅へ戻りたいけれど、闇雲に走り回ったせいで見知らぬ場所に迷い込んでしまい泣きそうになっていたところ、「どうしたの」と、誰かが声をかけてきました。
声のした方を見ると、僧侶の恰好をした年配の男性が、怪訝な顔をしてこちらを見ています。
何と説明すればいいのか迷って口ごもっていると、私の後ろにある足跡を見て、「ああ、そういうことか」と1つ頷き、「ここに入りなさい」と指さしました。

住職と名乗る男性が指さす方向には大きな門があり、言われるがまま中に入ると、そこはどうやらお寺のようです。
それから住職は、住まいらしき場所に私を案内した後、「もう大丈夫だから先に中へ入ってなさい」と言い残し、門の外へ行ってしまいました。
恐る恐る地面を見ると、門に入ってからは、あの足跡はついてきていないようです。
ホッとして、横開きの玄関扉を開け、「すみません」と声をかけると、すぐに奥から住職の奥さんらしき年配の女性が出てきました。
「はいはい、どうされました?」と、愛想良く声をかけてくる女性に「こちらの住職から、中に入ってるように言われて…」と伝えました。
すると女性は慣れた様子で「どうぞ、上がってください」と、そのまま部屋の中へと案内してくれました。

暖かいお茶を頂き、ひと息ついたところに住職が戻ってきて、「今日はうちに泊まりなさい。誰かと暮らしてるなら心配するだろうから後で電話しておくといい」と言いました。
女性も「この暗い中を歩くのは大変だろうから、泊まっていって。お風呂とかお食事の準備してきますね」と言い、私の返事を待たずに別の部屋へ行ってしまったのです。
戸惑っていると、まだそこにいた住職は、「今日はもう外に出てはいかん。それから、朝になるまで決して外を見ないように」とだけ言い、近くにあった椅子に座りました。
一体何なんだろうと思いながらも、外を出歩いてまたあの足跡につけまわされるのは嫌なので大人しく従うことにして、親戚に「今日は別のところに泊まる」と電話しました。
親戚は何があったのか心配していましたが、私もどう説明したらいいのか分からず、曖昧なまま電話を切ってしまいました。

流されるままに食事を頂き、お風呂にも入らせてもらい、用意された布団に入って今日のことを思い返していると、気疲れしたのかいつの間にか眠っていました。
そのまま朝まで眠れるかと思っていましたが、深夜、外から微かに聞こえる物音で目を覚ましてしまいました。
住職の家は平屋建てで、与えられた和室には障子があり、それを開けると更に硝子窓があって、外を見ることが出来ます。
しかし、住職から「朝になるまで絶対に外を見てはいけない」と言い含められていたこともあり、気になりながらも障子を開けるのは我慢しました。

もう一度寝ようと思い、布団をかぶり直すと、今度は先程よりも大きな物音が聞こえました。
日中あんなに怖い思いをしたのに好奇心を抑えられず、障子に耳をあてて物音をよく聞き取ろうとしました。
すると、遠くからサク…サク…という、あの足音が聞こえてきたのです。
足音は、近づいては離れてを繰り返しており、どうやらお寺の周りをぐるぐる回っているようです。

怖くなった私は布団に戻り、掛布団を頭からかぶりました。
そうすると足音が聞こえなくなり、安心していたのですが、しばらくして、今度は先程よりもっと大きな足音が聞こえてきたのです。
音はどんどんどんどん大きくなり、とうとう、ドォォン…ドォォン…という地響きのような足音に変わりました。
足音が鳴ると同時に家が揺れ、家具も倒れてきそうなくらいグラグラと不安定に揺れています。
立っていられない程の地響きに恐怖し、ひたすら布団の中で震えながら時が過ぎるのを待ちました。
そして朝になり、部屋の中に太陽の光が差し込んできたのと同時に、あの恐ろしい足音は止んだのです。

すぐに布団を出て、昨日案内された部屋へ行くと、そこには既に住職と女性がいました。
住職に「昨日のあれは何だったんでしょう…?」と訊ねると、「足跡はもうついてこないだろう」と言った後、あの足跡について詳しい話しを聞かせてくれました。
どうやらこの辺りでは昔から、見える人には見えてしまい、見えればどこまでもついてくる鬼の石像があるのだそうです。
ただついてくるだけでは飽き足らず、気に入れば捕まえてどこかへ連れ去ってしまうこともあるのだと言われました。

どうしてあの足音は、お寺の周りを回っていたのかという問いに、住職は「昔からこの寺に伝わるお札があって、それを寺の門や外壁に貼っていた」と、教えてくれました。
お札の効力により、お寺の中へ入れないことから、ぐるぐるとお寺の周囲を歩き回って入る機会を伺っていたのでしょう。
親戚宅までの道を教えてもらい、1人でお寺を出ましたが、昨日のように足跡がついてくることはもうありませんでした。
すぐに親戚宅へ戻り、事情を説明して、私が帰る前にもう一度あのお寺へ親戚とともに行きました。
住職と女性にお礼を言って、私は自分の家に帰りましたが、あの恐ろしい体験をしたこともあって、あれ以来、親戚宅には近づいていません。
あの時、足跡の主に掴まっていたら…、一体どんな恐ろしい場所へ連れて行かれたでしょうか…。