ただでさえ新型コロナで大変な2020年、追い打ちをかけるようにアフリカでバッタが大繁殖し、世界的な食糧危機を招くのではないかと恐れられています。
今回は、このバッタの大量発生の脅威、そして日本への影響について調べてみました。
バッタの大繁殖!大量発生して周辺に拡大している
2020年現在大変な騒ぎとなっているバッタの大群ですが、始まりはアラビア半島、2018年のことです。
問題となっているのはサバクトビバッタ。見た目は日本のトノサマバッタに似ていますが、アラビア半島や北アフリカの砂漠など、乾燥した環境でしぶとく生きています。
サバクトビバッタは北アフリカからアラビア半島、北インドまでの広い範囲に、大昔から生息しているバッタです。
通常は一匹一匹別々に暮らしていますが、時々群を作ることもあり、そのタイミングで気候に恵まれると大繁殖につながることもあります。
大繁殖すると、エサを求めて1日100キロ以上も移動すると言われています。
ちなみにばらばらで暮らしている状態を「孤独相」、群の状態を「群生相」と言い、体色も孤独相では緑色、群生層では黄色や黒と変化します。
サバクトビバッタの被害は大昔から繰り返されていて、古くはキリスト教の聖書に出てくるほどです。20世紀以後でも、1926年〜1934年、1940年〜1948年、1949年〜1963年、1967年〜1969年、1987年〜1989年、2003年〜2005年と度々大繁殖しています。
砂漠のような過酷な環境で生き残れるくらいですから、これが水に恵まれると急に元気になって大繁殖することがあります。
サバクトビバッタが産卵するには湿った土壌が必要ですし、雨が増えれば当然植物も繁茂し、サバクトビバッタのエサが増えるからです。
そして2018年には、いつもは降水量の少ないアラビア半島南部に、2度もサイクロンがやってきました。
それで水を得た魚…ではありませんが、サバクトビバッタはアラビア半島南部で大繁殖します。
タイミングの悪いことに、アラビア半島南部のイエメンでは内戦をやっていて「バッタどころではない」状態、その上コロナウイルスの影響で人の往来が制限されていますので、援助もままならず・・・
対策できなかったせいで、バッタは2018年から2019年までの9ヶ月でなんと8000倍に増えたそうです。
バッタの大群はアラビア半島からアフリカ大陸東部へ
バッタの大群は作物を食い荒らし、アラビア半島でエサが足りなくなると、2019年にはアフリカ大陸東部にもエサを求めて広がっていきます。
ここでもまた人間にとって運の悪いことに、例年なら降らないような大雨が降り、さらにサイクロンにも襲われ、バッタたちは水を得てさらに勢いづきます。
そして2020年2月には、バッタの大群はアラビア半島南部のオマーンとイエメン、アフリカ大陸東部のソマリア、エリトリア、エチオピア、ケニアなどに広がりました。
さらに一部は南スーダンやウガンダ、タンザニアにも侵入しています。
バッタの大群が通り去ったあとには、食物が全て食べ尽くされるという恐怖
バッタの大群はあっという間に人間の食糧を食べ尽くしていきます。
バッタの成虫は1日に自分の体重と同じだけのエサを食べます。人間では考えられないことですけど。
そんな大食らいのバッタが…ケニアにはなんと、1000億から2000億匹も襲来したそうです。縦60キロ横40キロの群で、1日で人間100万人分の食糧を食べ尽くしてしまいます。
しかも彼らは1日で100キロ以上移動できます。
それでケニアでは過去70年で最悪のバッタ被害となりました。
FAO(国連食糧農業機関)によると、2020年時点ですでに、東アフリカの1300万人が「極めて深刻な食糧危機」に陥り、2000万人が「その一歩手前」という状態だそうです。
【2020年】バッタの現在地報告。大群は現在はどのあたりまで来てるのか?
2020年6月の時点で、バッタの大群はインドまで押し寄せています。バッタがあまりに多すぎて、食料の被害だけでなく、航空機の運行にも支障が出るのではないかと警戒されています。
バッタの群がフロントガラスを覆ってしまえばパイロットは前が見えなくなりますし、バッタが大量に吸気口から吸い込まれれば航空機の機器を壊してしまう恐れもある、ということです。
「インドまで来たんだから日本にも来るんじゃないの?」
と思うかも知れませんが、さすがのサバクトビバッタも、砂漠は越えられても寒いヒマラヤ山脈は越えられないそうで、とりあえず日本にやってくる危険はなさそうです。
ちなみに「バッタの群が中国までやってきたのでアヒルで迎え撃った」なんて噂もありましたが、これは単なる噂だったようです。
バッタの被害はこのままいけば一体どうなってしまうのか
FAOによると、2020年4月までに第1波の制圧はとりあえず成功したと言ってよいそうです。ただこれは、第1波世代が寿命で死んだだけとも考えられます。対策と言っても殺虫剤をまくくらいしかありませんので。
この後、バッタの被害にあっている地域では、タイミングの悪いことに雨季が始まり、作物の苗が育ち始めている時期となります。
これはまさに、バッタにとって絶好の環境。そして第1波の大群はすでに、多数の卵を産み付けています。
サバクトビバッタは1世代で20倍に増えますので、多数の卵が順調に孵化してしまったら…第1波よりも更に恐ろしい第2波が襲ってくるわけです。そしてそれはすでに始まっているようで、5月末にはバッタの大群はインドまで達しています。
しかも、新型コロナの影響で、バッタ対策を指導するための専門家の行き来もままならない状態です。
この第2波の被害が深刻なものになれば、世界的な食糧危機となる恐れもありますし、そうなると、多くの食料を輸入に頼っている日本も「バッタは来ないから大丈夫」などと言っていられなくなりそうです。
ただでさえ新型コロナで苦しんでいるというのにこの追い打ち…自然はどれだけ人間に試練を与えたいのでしょうか。
まとめ
新型コロナの問題に隠れがちなのですが、このバッタの大群による被害も現に広がっていて、新型コロナに負けず劣らず大きな脅威となっています。
食糧の問題を考えれば、日本人にとっても「対岸の火事」とは言えない問題です。
また、食料の問題だけでなく、大量の殺虫剤を使う必要がありますので、この殺虫剤の人体への影響も心配されています。
バッタ被害がこれからどうなっていくかも注意深く見ていく必要がありそうです。
コメントを残す