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【ゾッとする話】長い髪の毛

【投稿者:サンタールさん】

一人暮らしをするためにアパートへと引っ越してきた男性、A男は引っ越し当初から不思議な出来事を体験していました。

それは、床に長い髪の毛が落ちていることが多いということ。彼女もいないし、引っ越してきてからは誰も家に入れていないA男は初め、外出した際に洋服などに誰かの髪の毛がくっついてきたのだと思い気にしませんでした。

しかし、その髪の毛は日に日に増えていき、家を出る前に掃除機をかけて出掛けていても、帰宅するとなぜか床に落ちているのです。

帰宅しても掃除機をかけているのに、家でゆっくりとしているとふと床に手をつくと長い髪の毛が指に絡まってくるのです。

「誰の髪の毛なんだ?」と思いながらもA男はなぜか怖さなどもなく、掃除が面倒くさいなというような気持ちしか抱いていなかったのです。

そんな日々が1ヶ月ほど続いた時、髪の毛を洗っていると、手に違和感を覚えて見てみると、手にごっそりと長い髪の毛が絡み付いてきたのです。

さすがにその髪の毛を見たA男は「ヒィィ!」と声をあげ、その髪の毛を急いで排水溝に流しました。

更に、お風呂から出た A男は足に違和感を憶えて床に視線を落とすと、そこには髪の毛の塊が落ちていてそれを踏んでしまったことを知ったA男は「ヒィィ!」っとまたしても悲鳴をあげ、その場で腰を抜かしてしまったのです。

「な、なんなんだよこの髪の毛……」とA男はようやく髪の毛に対しての恐怖を感じ始めたものの、腰を抜かしたA男は自分が何かを掴んでいることに気がつきました。

それは、やはり長い髪の毛の束……。しかし、その髪の毛は足元に落ちているだけ、手に握りしめているだけではなく、髪の毛はまるでA男を飲み込むように、手足に絡み付いてきたのです。

「え?な、なんなよこれ!!」パニックになったA男は絡みついて締め付けてくる髪の毛を必死に取ろうとしたのですがなかなか取れず、ますます絡みついてくるばかり。

しかも、その髪の毛は徐々に増えていき、足首からふくらはぎ掌から肘までどんどんと髪の毛がA男を飲み込んでいくのです。

「や、や、やめてくれぇぇ!」A男はこのままでは髪の毛に体が乗っ取られてしまうという危機感を抱き、「うわぁぁ!」と叫びながら髪の毛を剥ぎ取ろとしたものの、髪の毛は段々と顔の方まで接近し、とうとう髪の毛がA男を包み込み、締め上げて息が出来なくなってしまったのです。

(殺される!髪の毛に殺される!)

A男の体はまるでミイラのように髪の毛でぐるぐる撒きにされてしまい、息も荒くなり呼吸が出来なくなってしまい意識が朦朧としていき、A男は(あぁ、俺は死ぬんだなぁ……)と覚悟を決めてその場に倒込んでしまいました。

しかし、A男は目を覚ますことが出来たのです。頭がガンガンと痛むなかで目が覚めたA男の体には髪の毛はついていません。

それどころか、毎朝落ちていた髪の毛さえもなかったのです。その日は髪の毛は落ちていなかったものの、アパートで過ごすことが出来ずにホテルに泊まり、不動産屋に事情を話して事故物件ではないかなどを聞いたものの知らないと言われてしまい、髪の毛の正体がわからぬまま引っ越すことに。

引っ越し先が決まるまで二週間、アパートに荷物などを取りに行ったりしていたものの、あの長い髪の毛はあの日以来落ちていませんでした。

引っ越しをしてから長い髪の毛のことを忘れることが出来ないまま数ヶ月後。A男がテレビを見ていると、殺人遺棄のニュースが流れてきました。

テレビに映されたのは、犯人が殺害を行ったとされる現場。そこは、A男が住んでいたあのアパートだったのです。

被害者は行方不明だった髪の長い女性。犯人は女性の髪の毛を剃って自宅に保管していたと供述していると聞き、ゾッとしました。

A男は自身の身体に巻き付いてきたあの髪の毛がこの被害者のものだと悟ったのです。

女性は殺害されたことをA男に気がついて欲しくてアパートに髪の毛を置いていたのかもしれません。なかなか気がついてくれないA男に怒りを憶えて髪の毛を絡めてきたのかと思うと、申し訳なさと恐怖を覚えるA男だったのです。