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【怖い話】メルちゃん

FM都市伝説

【投稿者:しんさん】

皆さんは、メルちゃんという人形を知っていますか?

小さな子どもが、服を着せ替えたり、抱っこしてお世話をして遊ぶことができる約30cm程度の女の子の人形です。このお話はそのメルちゃんにまつわるものです。

私には娘が二人います。面倒見が良くて、整理整頓が自分でできるしっかり者の6歳の長女と、ガサツでとにかく片付けができない3歳の次女の二人です。

私と妻は次女が片付けをしないとき、片付いていないおもちゃをゴミ袋に入れて捨てたフリをするパフォーマンスで片付けをするように躾をしています。面倒見の良い長女は、いつも次女が散らかしたおもちゃ達を一緒になって片付けてくれていました。

そんな次女が3歳のクリスマスに、私の母からメルちゃんの人形をプレゼントとしてもらいました。少し嫌な予感がしていましたが、予想通りプレゼントをもらった年末から年始にかけて次女はメルちゃんを使って遊んだ後、片付けないまま床にそのまま放置することが度々ありました。

1月の初め、いつも通りメルちゃんは服を脱がされた状態で床に放置してありました。子供達が寝る時間になっても、次女はメルちゃんを放置したままベッドへ向かおうとしました。私が怒ろうとしたのを察した長女がメルちゃんをおもちゃ箱に片付けようとしました。その時、長女がこれまであまり聞いたことがないような大きな声で叫びました。

「痛い!」

私と妻はビックリして長女の元に駆け寄り、どうしたのか尋ねました。

「メルちゃんに噛まれた」

嘘だろうと思い、長女の腕を見てみると、長女の指差す部分が小さくではありますが、真っ赤に腫れていました。私と妻は一瞬動揺しました。

しかし、すぐに察しました。長女は、いつも次女の分まで片付けさせられるので、噛まれたフリをして次女に片付けさせようとしたのではないか、と。

(ただ、これだと噛まれた部分の真っ赤な腫れがの説明がつきません)

そんなことを考えていると、長女はメルちゃんを床に戻して次女に片付けるように促しました。

それでも言うことを聞かない次女は、ベッドへ向かおうとします。

そこでいつも通り、私はゴミ袋を持ってきて他に散らかっているおもちゃと一緒にメルちゃんをゴミ袋に入れました。次女は泣き叫びながら返すように言ってきましたが、今から捨ててくると言い残し、私は家を出ました。実際は、ゴミ袋は物置部屋に置き、私は近くのコンビニまで散歩に行くことにしただけなのです。

ただ、今考えると私のこの行動が良くなかったのかもしれません。

私が外に出たのは、年始の21時頃でした。人気がなく静まり返っていました。

家を出てすぐ隣のマンションの前を通った時、突然ビニール袋が激しく擦れる音が街の静けさを突き破るように鳴り響きました。どこかの家庭が夜に出したゴミ袋が風で擦れて音を出しているのだろうと思っていると、再びゴミ袋が激しく擦れる音がしました。

2回目で気付きました。風が吹いていない。

私は慌てて音がする場所を探しました。鳴り続ける音の方へ歩いていくと、隣のマンションのゴミ捨て場に辿り着きました。

ゴミ捨て場はコンクリートで3面が覆われており、風が当たりにくい場所でした。しかし、音は確かにこちらから聞こえました。私は息を呑み、ゴミ袋を眺め続けました。

暫くして、再び、ゴミ袋が動き始めました。

風が原因ではありません。

風は吹いていません。

そして、何よりも、動き方が異常です。

ゴミ袋は生き物のように内側から力を受けて上下に変形しながら揺れ続けています。

ゴミ袋の中に何かいる。

私は誰かが通りかかるのを待ちました。もしかしたらゴミ袋の中に犬などが捨てられているかもしれない。

開けるべきなのか葛藤していました。しかしおそらく小動物ではないという察しもついていました。一切鳴き声がしないのです。

目の前の光景に唖然とし、身動きが取れないまま立ち尽くしていると、先ほどの家での次女とのやりとりが頭をよぎりました。

私は悩んだ挙句、恐怖心に負けて、その場から逃げ出しました。コンビニから帰ってきた時もゴミ捨て場の付近を避けながら家に向かいましたが、その音は暗闇の中で鳴り続けていました。

家に戻り、すぐにおもちゃを捨てたゴミ袋を確認するとメルちゃんはゴミ袋の中に横たわっていました。私はそっとおもちゃ箱に戻しておきました。

朝になり、ゴミ捨て場を見に行くと、昨晩よりも多くのゴミが置いてありました。ゴミ捨て場から音は聞こえませんでした。

ゴミ袋の中でうごめいていたものは何だったのか、そして娘のあざは、一体何だったのでしょうか。

今となっては、全てが闇の中です。