【投稿者:mui-yamtさん】
香川県丸亀市にある丸亀城。
比較的小さいながらも日本100名城にも選ばれた由緒あるお城です。
近年の城郭ブームで多くの観光客も訪れるようになり、城好きの間ではその名をよく知られています。
扇の勾配(こうばい)と呼ばれる美しい曲線を描く石垣が特徴のこの城には、ある石工にまつわる悲しい伝説が語り継がれています。
時は17世紀半ば、廃城となっていた丸亀城が再築されることに
17世紀半ばの丸亀城は廃城同然の状態でした。
その丸亀城を再築したのが山崎氏です。
そして、再築の際に活躍したのが羽坂重三郎という有能な石工でした。
羽坂の築く石垣は絶妙な角度で反り返り、上部はほぼ垂直となるなど、見た目も美しく防衛も兼ね備えた素晴らしい出来栄えでした。
当時の城は居住のためではなく、どちらかというと要塞的な役割を持っていました。
「この石垣であればいかなる敵が攻めてきても登ることはできないだろう」
気を良くした城主は家来たちに試しに登らせてみますが案の定、誰も登ることはできません。
城主はさらに、誰か石垣登りに挑戦する者は居ないかと問います。
そんな中、名乗りをあげたのが石垣を作った本人である羽坂でした。
「短い鉄の棒さえあれば私が登ってみせましょう。」
石垣を知り尽くした羽坂は鉄の棒を使い、誰も登れなかった石垣をいとも簡単に登ってしまうのでした。
羽坂の能力に驚いた城主の脳裏には、ある懸念が……
「万が一この石工が敵方に寝返りでもすれば、我が城は簡単に落とされてしまうのではないか。」
羽坂が敵方に渡ることを恐れた城主は、羽坂に二の丸井戸の修理を口実に井戸の中に降りるよう命じます。(一説には井戸なら登れまいと羽坂をたきつけたともいわれています)
そして羽坂が井戸の底に着いたのを見計らい、何も知らない彼を上から石を落として殺してしまったのでした。
以来、この井戸には殺された石工の霊が出るとか、火の玉を見たとかいう噂が後を絶たなくなったそうです。
以上が丸亀城の石工にまつわる伝説です。
この井戸が現在も残っており、自由に見学することが出来ます。
実際にのぞき込んでみるとかなり深く、その深さは日本一ともいわれています。
また、一説には堀の外に通じる脱出用のトンネルがあるという言い伝えもある不思議な井戸です。
昼間は観光客や市民の憩いの場として親しまれる丸亀城も、夜は一転して怪しい雰囲気を纏います。
城主が居なくなり平成の世となった今でも、自分の有能さを示したばかりに命を落とすことになった一人の石工の無念は晴らされていないのかもしれません。
うん、これは面白い。
今回の丸亀城に限ることじゃないけど、側面の様々なエピソードを知っているかいないかで、その対象物に対する見方が180度変わってきますからね。
例えばサッカーを何も知らずに見るのと、好きな選手がいるチームを応援するのとでは、見方がまるっきり変わるって事。
重要なのはこの投稿を読むことで「丸亀城についてより多くの知識欲求が生まれたかどうか。そして実際に訪れてみたくなったかどうか」。
僕はなったよ。
(日本史の教科書がこういったエピソードで埋め尽くされてたら絶対に日本史マニアになってたなあ笑
編集長満足度:星4★★★★