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『紅の豚』の都市伝説まとめ|ポルコが豚になった真相やジーナの結婚相手などの裏設定を徹底紹介!

『紅の豚』は豚になった主人公ポルコが活躍する戦いと恋の物語です。1992年の公開時、当時の長編アニメ映画の興行収入記録を更新しました。

老若男女に愛される紅の豚ですが、企画当時のターゲットは「疲れた中年」でした。企画は紆余曲折し、大人の哀愁を漂わせながらも、派手なアクションシーンが目立つエンターテイメント性の高い作品になりました。

そんな『紅の豚』の作り込まれたストーリーを鑑賞していると「あれ?」と思うシーンや「結局どうなったの?」という伏線が数多く存在します。

この記事では『紅の豚』のストーリーに触れながら、都市伝説を徹底解説します。あわせて当時のスタジオジブリの内情や製作秘話も紹介しますので、作品の新たな魅力に触れてみてください。

ポルコが豚になった理由を徹底解説

(出展:スタジオジブリ公式HP

宮崎駿監督は、ポルコの顔が豚になった理由について聞かれると「そうやってすぐに答えを求めたがる!」と声を荒らげたそうです。

監督は「主人公が豚になった理由を考えるのは野暮」と考えていたようです。しかし主人公が何の前触れもなく豚の姿で出てくるのはやはり不自然…。そこでスタジオジブリは「魔法にかけられて豚になった」という設定を付け足したんだそうです。(納得出来るような出来ないような……。

そんな消化不良な前提をふまえつつ、ここではポルコが豚になった理由について4つの説を考察したいと思います。

【説1】戦争で生き残った自分への罪

(出展:スタジオジブリ公式HP

ポルコはかつて空軍に所属し、たくさんの仲間を亡くしました。ポルコは過去を回想し「戦争で死んだやつは良いやつさ」と口にしています。ポルコが戦争で生き残ったことを悔いているのは明白です。

懺悔の気持ちは「ポルコ」の名前にも込められています。紅の豚の主人公は「ポルコ・ロッソ」ですが、本名でありません。「ポルコ・ロッソ」はネガティブな意味がこめられたあだ名です。直訳すると「ポルコ=赤」「ロッソ=(豚)」ですが、スラングで「豚野郎!」「臆病者!」と罵倒する言葉になります。

友人への懺悔の気持ちから、戦争で生き残った自分を「臆病者」と蔑み、自身を呪って豚になったというのがこの説です。

【説2】欲にまみれた人間になりたくない

人間のまま飛行艇に乗り続けた場合「戦争に駆り出される=政治や金儲けに利用される」おそれがありました。醜い欲のために飛ぶならば人間をやめたほうがマシと考え、豚になったというのがこの説です。

物語の舞台は1920~1930年代のイタリア。世界恐慌のあおりを受け「札束が紙クズ並の値打ちしかない」時代です。イタリアではファシスト党による独裁政権が進んでいました。

作中でポルコはかつての戦友フェラーリンから「空軍に戻れ。冒険飛行家の時代は終わった、国家とか民族とかくだらないスポンサーを背負って飛ぶしかない」と言われています。ポルコは「ファシストになるより豚の方がマシ。俺は俺の稼ぎでしか飛ばない」と答えました。

国に囲われて窮屈に生きるよりも、自由を選びたかったポルコは「人間」という枠から外れ、豚になることを選んだのかもしれません。

【説3】人間と恋をしないため

ヒロインのひとり「ジーナ」(出展:スタジオジブリ公式HP

紅の豚のヒロインのひとり「ジーナ」。ジーナはかつて3回結婚しましたが、3人の夫はすべて亡くなりました。「もう涙も枯れちゃったわ」と語るジーナの言葉の裏には深い悲しみがにじんでいます。

作中で、ジーナはポルコに惹かれている様子が描かれています。しかしポルコの賞金稼ぎという生き方はいつ何があるかわかりません。ジーナを二度と悲しませないために、ジーナと恋をしないよう豚になったというのがこの説です。

しかしポルコの目論見は失敗に終わります。ジーナはポルコが豚でも人間の頃と同じように接していました。もうひとりのヒロイン「フィオ」もポルコに惹かれていますし、ポルコが女性たちから黄色い声援を受けるシーンもあります。

「見た目は豚だけれど最高にかっこいい!」のが紅の豚の魅力です。

【説4】宮崎駿のこだわり

宮崎監督の制作現場(出展:https://mantan-web.jp/article/20161113dog00m200023000c.html)

短編マンガ集『宮崎駿の雑想ノート』(大日本絵画)で宮崎駿が描いた軍人の顔はすべて豚でした。宮崎駿にとって「軍人=豚の顔」というイメージがあったのかもしれません。

宮崎駿は子供の頃から飛行機が好きでした。実家が航空産業にかかわっていて、飛行機乗りになりたいと夢みていたそうです。『スタジオジブリ作品関連資料集4』(徳間書店)の中で宮崎駿は紅の豚について「ひとことで言って自分の趣味の映画なんです」と語っています。

自身のこだわりを詰めた監督作品で「元軍人の顔が豚になっている」のは宮崎駿本人にとって自然な現象だったのかもしれません。

ポルコはどうすれば人間に戻れるのか

(出展:スタジオジブリ公式HP

人間に戻る条件はハッキリとわかりませんが、以下のシーンでポルコは人間に戻ります。

・ 寝ているフィオの隣で銃の手入れをしているポルコ
・ フィオに別れのキスをされるラストシーンのポルコ

これらのシーンに共通するのはフィオです。

本作もうひとりのヒロインであるフィオ(出展:スタジオジブリ公式HP

フィオは飛行艇を直す作業場で働いていました。しかし、テスト飛行をせずに飛び立ったポルコの飛行艇を整備するため、ポルコについてきてしまいます。

フィオは自分の信念に真っすぐな性格の持ち主です。フィオの素直な心がポルコのわだかまりを解いたようです。

ラストのキスシーンのあと、ポルコが人間に戻ったのか、豚のままなのかは明示されていません。『紅の豚ロマンアルバム』(徳間書店)内のインタビューで宮崎駿は「豚が人間になりました、よかったよかったとやってしまったら嘘になる。そういうカタルシスを求めるのは間違っている」と語りました。

ポルコの「豚になった魔法」は根深く、一筋縄ではいかないのかもしれません。

豚のままだったのか、人間に戻ったのか、ちょっと煮え切らない感じですが、想像をめぐらせるのも本作の楽しみ方のひとつなのかもしれませんね。

原作にはいない「ジーナ」が登場した理由

(出展:スタジオジブリ公式HP

紅の豚の原作は宮崎駿が担当していますが、原作の時点でヒロイン「ジーナ」は登場していません。

ジーナは「ホテル・アドリアーノ」のオーナーで、ポルコの昔なじみ。そして飛行艇乗りたちのマドンナです。

原作にいないジーナが登場したのは、もうひとりのヒロインであるフィオが登場するまでの序盤に「ヒロイン不在だと面白くないから」という理由です。メインキャラクターのひとりが後から足されたなんて驚きですよね。

ジーナが所有する船にはアルゼンチン国旗風の旗が掲げられています。ジーナはアルゼンチン国籍で「空賊たちのせいで店が流行らなくなったため国に帰ろうとしていた」という設定がありました。

設定は変更され「夜しか来ないあの人(ポルコ)が昼に訪れたら、今度こそ愛そうって決めたの」と、ひたむきにポルコを待つ、ミステリアスな女性として描かれました。

後から足されたキャラクターにもかかわらず、宮崎駿監督のジーナに対する思い入れは強かったようです。

ジーナ役の声優・加藤登紀子は2016年にTwitterで「バカッ!のセリフを36回やりなおしたのよ。笑」と明かしました。宮崎駿監督は、キャラクターの細やかな人間性にまでこだわりを持っていることがわかります。

魅力的なヒロインたち ポルコはどちらを選んだの?

ジーナと(出展:スタジオジブリ公式HP
フィオ。(出展:スタジオジブリ公式HP

紅の豚にはジーナとフィオという2人のヒロインが登場します。

ジーナはホテルの経営者でポルコの昔なじみ、マドンナ的存在のミステリアスな女性。フィオは飛行機の設計技師で男勝りな性格、素直で可愛らしい一面と空賊を怒鳴りつける勇ましい一面を持つ17歳の少女です。

どちらのヒロインもポルコに惹かれている描写がありますが、ポルコはジーナを選んだという説が有力です。理由として以下の2つの説があります。

・ エンディングでジーナが「賭け」に勝ったことがわかるから
・ 回想シーンの飛行艇でジーナが結婚した相手がわかるから

【理由1】エンディングでジーナが「賭け」に勝ったことがわかる

ジーナの「賭け」とは「夜に客としてしか店を訪れないポルコが昼間に(ジーナに会うため)来たら愛する」というものです。

エンディングでジーナのプライベート庭園が映った際、昼間にもかかわらずポルコの飛行艇が停泊していました。

ジーナの店にポルコの飛行艇が停泊しているシーンが描かれたカット(出展:https://flying-fantasy-garden.blogspot.com/2014/03/blog-post_6753.html)

つまりポルコは昼間にジーナのもとを訪れ、ジーナは賭けに勝ったのではないかといわれています。

しかし!このシーンのすぐあとにジーナと空賊マンマユート団の団員たちが映るカットが挿入されるのですが、、↓

(出展:スタジオジブリ公式HP

ん〜ポルコの飛行艇が映るシーンと上記のみんなが集うシーンは別の時系列なのかも、、しれませんね。あるいは「駆けは関係なく、みんなでジーナのもとを訪れた」と想像することもできますが、、真相やいかに。

【理由2】回想シーンの飛行艇でジーナが結婚した相手がわかる

ポルコの人間時代の回想シーンで、飛行艇が映ります。機体には数字が書かれており、ポルコは「4」でした。この数字はジーナの結婚の順番を示している、というのがこの説です。

ポルコが載っている機体には「4」と書かれているが…(出展:https://flying-fantasy-garden.blogspot.com/2014/03/blog-post_6753.html)

ジーナの最初の夫はポルコの友人でもあるベルリーニです。ベルリーニの機体には「1」と書かれていました。最初の夫の機体が「1」、ポルコの機体が「4」です。つまりポルコは4番目の夫だと暗示されています。ベルリーニは戦死、2人目、3人目の夫も戦地で亡くなりました。

この説はかなり説得力があるように思いますよね。

ただ、ポルコもジーナも3人の夫たちも昔なじみだったため、単に機体に5人が連番の数字を書いていただけ、という説もあります。

5人はまだ戦争が起こっていない若い頃、一緒に様々な場所へ旅行していました。仲が良い男たちの飛行艇に書かれた数字が連続していてもおかしくはありませんが、、。

ポルコのライバル「カーチス」のモデル

ポルコとカーチス(出展:スタジオジブリ公式HP

ポルコのライバル役「カーチス」のモデルは第40代アメリカ大統領「ロナルド・レーガン」です。

カーチスは空賊の用心棒で、ポルコにも引けを取らない高い操縦技術を持ちます。キザな人柄でジーナやフィオを次々に口説くシーンが印象的でした。

作中でカーチスは「空賊の用心棒から映画俳優へ、その知名度を生かしてアメリカ大統領になる」という人生設計を語っています。言葉通り、祖国アメリカへ戻ったあと、俳優として成功したことがエピローグで語られました。

第40代アメリカ大統領ロナルド・レーガンもアメリカ軍予備役将校から映画俳優になり、大統領に就いた経歴を持ちます。「ドナルド」と「ロナルド」のファーストネームも酷似していますよね。

他のジブリ作品との関係

ジブリ作品には他のジブリ作品のキャラクターが参加していることがあります。紅の豚はとくに他作品との関係が深いのが特徴です。

紅の豚のキャラクターが他のジブリ作品へ参加している

他のジブリ作品への参加は以下の4シーンです。

・ 『海がきこえる』の文化祭シーンで食事するポルコが映り込んでいる

『海がきこえる』のワンカット。画面右下にポルコが!(出展:スタジオジブリ公式HP

・ 『海がきこえる』エンディングで紅の豚の看板が掲げられている

・ 『平成たぬき合戦ぽんぽこ』の狸による妖怪パレードのなかに飛行艇に乗ったポルコがいる

画面右にポルコの飛行機が見えます(出展:スタジオジブリ公式HP

・ 『耳をすませば』の古道具店・地球屋の店内に「Porco Rosso(ポルコ・ロッソ)」と刻まれた時計がある

他のジブリ作品のキャラクターが紅の豚に参加している

他のジブリ作品からの参加は以下の2つです。

・ ピッコロおやじの作業場で飛行機制作を手助けするおばあさんは『魔女の宅急便』に出てくる家政婦のおばあさんにそっくり

↑こっちが飛行機制作を手助けするおばあさんで…(出展:スタジオジブリ公式HP
↑こっちが魔女の宅急便に出てくるおばあさん。ん〜確かに言われると似てるかも?(出展:https://playnews.xsrv.jp/post-14201/)

・ ピッコロおやじの帽子は『天空の城ラピュタ』のパズーの帽子がデザインのもとになっている

↑ピッコロおやじ(出展:スタジオジブリ公式HP
↑ご存知パズー。これは確かに似てますね!(出展:スタジオジブリ公式HP

他のジブリ作品の隠れ要素を探しながら鑑賞するのも面白いですよね。

『紅の豚』には続編がある?

(出展:スタジオジブリ公式HP

紅の豚には、続編が企画されていました。宮崎駿は2010年の『借りぐらしのアリエッティ』製作時のインタビューで「紅の豚の続編をやりたい」と語っています。タイトルも決まっていて『ポルコ・ロッソ 最後の出撃』だと明かしていました。

内容は不明ですが「続編」という言葉と『最後の出撃』というタイトルから、第2次世界大戦で空軍に復帰する話ではないだろうかと噂されています。

しかし、それから10年以上の時を経ても続報はありません。ポルコ役の声優・森山周一郎氏が2021年に亡くなったこともあり、実現は難しいかもしれませんが、、是非見てみたい!!

飛行艇に詰まったマニアックな裏話

(出展:スタジオジブリ公式HP

宮崎駿は飛行機乗りに憧れていたため、紅の豚に出てくる飛行艇にもマニアックな設定をつけています。

ポルコの愛機や、ライバルであるカーチスの愛機、飛行艇のエンジン音にいたるまで宮崎駿がこだわった点を以下に紹介します。

ポルコの愛機「サボイアS-21」

『宮崎駿全書』(著:叶精二/フィルムアート社)によれば「サボイアS-21」は実在していた機体です。

サボイアS-21の画像(出展:wikipedia

第一次大戦から第二次大戦までの短い期間、ヨーロッパのごく一部の軍で使用されたものの、長く使われることはなかった「幻の戦闘機械」といわれています。

ただし使われたのは「サボイアS-21」の名称のみで、作中の飛行艇のモデルになったのは「マッキM-33」です。宮崎は幼い頃、マッキM-33の写真に興奮した記憶を頼りに、ポルコの飛行艇をデザインしました。

マッキM-33の画像(出展:wikipedia)

作中のサボイアS-21の設定は、試作戦闘飛行艇です。操縦の困難さや設定の複雑さなどから軍に採用されず、倉庫でほこりをかぶっていたところをポルコが購入しました。実在していた「幻の戦闘機械」サボイアS-21と、作中の「忘れ去られた試作戦闘飛行艇」サボイアS-21は、どこか面影が重なります。

カーチスの愛機「カーチスR3C-0」

『宮崎駿全書』(著:叶精二/フィルムアート社)によると「カーチスR3C-0」も実在していました。カーチス社の創始者であるグレン・カーチスは、ライト兄弟のライバルと評されています。

カーチスR3C-0の画像(出展:wikipedia

作中のカーチスR3C-0は、見た目やカラーリングも実物のカーチスR3C-0を参考にしています。実物よりも翼幅を延長し、速さより運動性能を向上させた印象です。

作中のカーチスR3C-0の設定は、シュナイダーカップで優勝した機体をドナルド・カーチスが買い取って改造しました。飛行艇の名前とキャラクター名の「カーチス」が共通している理由は、ドナルド・カーチスがカーチス社と血縁関係にあるのではないかといわれています。

飛行艇のエンジン音

作中で出てきた飛行艇のエンジン音は、フランスの飛行機収集家のもとで録音したものです。

ポルコたちが乗る飛行艇はレース用なので、戦争に使われる戦闘機よりもエンジン音が軽いそうです。こまかい部分にも監督のこだわりが詰まっています。

『紅の豚』は飛行機の中で放映されるはずだった

(出展:スタジオジブリ公式HP

紅の豚はJALの機内で放映される15分の短編映画のはずでした。スタジオジブリの金策のため、JALとの提携が発案されたのです。

紅の豚製作当時、スタジオジブリは企業化したばかりでした。企業として運営していくためには作品を継続的に世の中へ出す必要があります。

しかし、立て続けに長編映画を製作していたメインスタッフには疲れが出ていたそうです。そこで短編映画の製作を企画し、鈴木敏夫プロデューサーはJALとの提携の話を持ってきました。

15分の短編映画が90分の長編映画になった理由は「ポルコの顔が豚だったから」です。

15分の短編映画は、豚のポルコが「空賊にさらわれた子どもたちを助けるシーン」で終わります。つまり世に出た映画の冒頭部分のみです。鈴木プロデューサーは突然の豚の登場に困惑し「ポルコが豚になった理由をストーリーに入れてください」を依頼します。

そうしてジーナが登場し、過去の回想シーンが追加され、最終的には93分の長編映画として仕上がりました。鈴木プロデューサーの一言でこの名作が生まれたわけですね!さすが。

宮崎駿が苦悩の末に書いたメモ「俺一人で〇〇」

(出展:スタジオジブリ公式HP

宮崎駿監督は『紅の豚』製作当時、鈴木敏夫プロデューサーの机の上に意味深なメモを置きました。メモには大きな文字で「俺一人でやれというのか?」と書かれていたそうです。

当時、スタジオジブリは企業化したばかりで、多忙を極めていました。『紅の豚』の製作は前作である『おもひでぽろぽろ』と同時進行です。2つの作品はスタッフを分けることができません。『おもひでぽろぽろ』に人手を取られ、新作『紅の豚』に取りかかっているのは宮崎駿監督だけ。疲弊した監督は鈴木プロデューサーの机の上にメッセージを残しました。

アニメ映画製作現場の鬼気迫る状況が垣間見えるエピソードです。

『紅の豚』は劇中と同じように女性が作った飛行機物語

(出展:スタジオジブリ公式HP

紅の豚は女性たちが活躍します。

ポルコが懇意にしている「ピッコロのおやじ」の作業場で飛行艇を修理するのはみな女性でした。働き盛りの男性は出稼ぎで不在のため、残った女性たちが力を合わせて作業しているのです。

スタジオジブリの製作現場でも同じ現象が起きていました。紅の豚以前までメインで活動していたスタッフたちは、相次ぐ長編アニメ製作で疲労困憊。そこで宮崎駿監督が提案したのは「女性スタッフをメインに起用する」ことです。

当時のアニメ製作現場は男性中心でしたから、画期的な取り組みでした。

紅の豚はもともと「中年男性向け」の作品でした。しかし「女性が作る飛行機物語」になったことで、男女問わず楽しめる要素が盛り込まれます。たとえば色彩です。女性の細やかな感性を活かし、色彩400色以上という鮮やかな作品になりました。

コバルトブルーの海と空をカラフルに彩る飛行艇、紅の豚に出てくる美しい風景は際立っています。女性ならではの感性を採用したからこそ、印象に残る鮮やかな風景が作られたのかもしれません。

紅の豚と戦争の関係 監督激怒で公開中止寸前に

宮崎駿と鈴木敏夫(出展:https://hizen.nagoya/news/2639)

紅の豚のストーリーには戦争が深く関わっています。

ポルコは第一次世界大戦中、空軍に所属していました。「エースパイロットとして活躍した」「戦争の英雄だった」ことがストーリーの中で語られています。戦闘機は軍の主力です。国力を誇示するために戦闘機パイロットは無慈悲な行為を強いられました。

退役したポルコは軍や秘密警察に追われています。ポルコの戦友で空軍少佐のフェラーリンは「(ポルコには)反国家非協力罪・密出入国・退廃思想・怠惰な豚でいる罪」がかけられていると言いました。ポルコが「戦争で活躍したにもかかわらず軍を抜けて人間をやめ、賞金稼ぎになった」ことを考えると、フェラーリンの言葉が理解しやすくなります。

凄腕のパイロットであったポルコは戦争で無慈悲な行為を強いられた上、友人たちを喪いました。その結果、兵士を辞め、人間を辞め、豚として自由に生きる道を選びます。しかし、国はポルコの生き方を許しません。軍や秘密警察はポルコの思想を国家反逆罪とみなしました。

紅の豚と戦争の関係は物語の中だけにとどまりません。物語の舞台は「ドブロヴニク」です。クロアチア最南端の都市で「アドリア海の真珠」といわれるほど美しい街並みを誇ります。しかし1991年のユーゴスラビア崩壊によって紛争が起こり、多くの痛ましい人的被害と市街地の損害を出した土地です。

紅の豚が公開された1992年は内戦のまっただなか。にもかかわらず、完成された紅の豚の予告編には戦闘シーンが多く含まれていました。予告編を見た宮崎駿監督は「これは僕の映画じゃない!」と激怒したそうです。ドブロヴニクで紛争が起こっていたことを憂いていたにもかかわらず、予告の描写に配慮がなかったことに腹を立てたのです。

宮崎監督の制作現場(出展:https://mantan-web.jp/article/20161113dog00m200023000c.html)

監督が予告編を見たのは記者会見会場が初めてでした。監督は、記者の前で鈴木プロデューサーを罵倒します。最後は鈴木プロデューサーが平謝りして事なきを得ましたが、宮崎駿監督の徹底したこだわりと映画への愛情が垣間見えるエピソードです。

紅の豚と経済の関係 戦争がもたらしたものは何?

(出展:スタジオジブリ公式HP

ポルコのいるイタリアは第一次世界大戦の勝利国ですが、不況から脱することはできませんでした。イタリア国民は第一次世界大戦の勝利を「栄光なき勝利」と呼んでいます。勝利国でありながら暗い空気がただようイタリアと、戦争で活躍しながらも人間をやめたポルコは似通った雰囲気があります。

作中の経済も低迷していました。以下のセリフから暗雲漂う経済状況が見て取れます。

・ 銀行の担当者に「愛国債権でもお求めになって民族に貢献されたら?」と言われる
・ ピッコロのおやじが「近頃は札束が紙クズ並みの値打ちしかないんだよ」とぼやく
・ ポルコとフィオがアジトへ向かう途中にクロアチア側で給油したシーン、フィオが「ガソリンがイタリアの3倍もする」と嘆く
・ ポルコが飛行艇からアジトの周りを見下ろし「海も丘も見かけはいいが、スッカラカンなのさ」とフィオに伝える

第一次世界の痛手から回復できなかったイタリアやヨーロッパ諸国は1929年からはじまる世界恐慌の渦に飲み込まれました。暗い時代だからこそ、ポルコが飛行艇で自由に飛びまわる姿が鮮やかに映りますよね。

紅の豚と政治の関係 青シャツ男の意外な正体

(出展:https://twitter.com/kinro_ntv)

紅の豚では青いシャツを来た兵士らしき男が所々に映ります。彼らはファシズムに傾倒している王党派の人びとです。

物語の設定と同じ時代のイタリアでは、ファシスト党の動きが活発でした。統領であるムッソリーニは「黒シャツ隊」と呼ばれる民兵隊を組織します。黒シャツ隊は「愛国心」を大義名分にして各地で騒乱を起こしますが、のちに正式な国家機関としてファシスト党の政権獲得に貢献しました。

ファシスト党の民兵隊である「黒シャツ隊」をモデルにしたのが、紅の豚に出てくる「青いシャツの兵士」です。

戦後不況の中、革命を求める声が国民のあいだで大きくなり、ファシズムに傾倒する人びとが増えたのでしょう。作中でも、青いシャツを着た兵が戦車と一緒に行進しているシーンがあります。市中の人びとは行進を歓迎するように旗を掲げていました。

宮崎駿は、ポルコの政治観や愛国心について「ポルコはイタリアは好きな男なんです、多分。だけどイタリアの王家が好きとか、あるいは国家は好きじゃないんです」(映画パンフレット)と述べています。ポルコは国や政治にとらわれず、空を飛び回りたかったのかもしれません。

紅の豚は、当時のイタリアの政治や人びとの暮らしをリアルに描いています。こうした背景が物語に厚みを生んでいるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では紅の豚にまつわる都市伝説を解説・検証しました。

紅の豚は30年前の作品にもかかわらず、今なおテレビのロードショーで放映され、老若男女に愛される作品です。子供の頃に紅の豚を鑑賞した方も、大人になって観ると、違う視点で考察できると思いますよ。

深みのある物語の時代背景に思いをめぐらせたり、謎が残る物語の行く末を自分で想像してみたりするのも楽しいですよね。

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