【投稿者:ゆきだるま】
私が一人暮らししていたアパートは2階建ての全4部屋です。
私の部屋のすぐ下の階には、無口で挨拶以外喋らない60代ぐらいの初老の女性が住んでいま
した。おそらく一人暮らしですが、ご家族についても何一つ知りません。
私が入居後2年でその人は引っ越ししました。
退去時も簡単な挨拶だけで、引っ越し先も聞かされていません。
ただ、その人が引っ越して数日後ぐらいのこと。夜20時~翌朝4時ぐらいの不規則な時間に毎日、ドタドタという足音が聞こえるようになりました。時々「うおー」「わー」というような、不明瞭な男性の声も聞こえます。1日に最低でも2時間。長い時で寝る時間から朝までずっと。
最初は清掃業者かとも思いましたが、来るような時間帯ではありません。
女性が住んでいた時の方が断然静かだったのと、その人の退去後からの音が気になって寝不足が続きました。
ある日の朝、大家さんを見かけて
「今、下の階に誰かいますか?夜中うるさくて困っているんです。」
と声をかけました。
大家さんは少し疲れたような、青ざめたような顔で
「もうしばらく我慢してもらえますか?必ず何とかしますから。」
とだけ言って逃げるように立ち去りました。
それから1ヶ月後、私は大家さんと不動産会社の人から別のアパートへの転居を言い渡され、現在のアパートを取り壊す旨を告げられました。新しい住居はここから近所で完全新築、家賃は今と同じ。
断る理由はなく、引っ越しを快諾しました。
引っ越しの片付けで、久しぶりに顔を合わせた同じアパートの隣人の話では、女性が住む前に自殺者がおり、その部屋は事故物件だったそうです。亡くなったのは20代の男子大学生で、部屋の真ん中で首を吊っていたそうです。
なぜか女性が住んでいた時には何も起こらなかった霊現象が女性の退去後に出現。部屋もふすまが破れたり、床が謎の液体で汚れたりと修復が難しい状態になっていたそうです。私以外の他の部屋からの苦情もあり、取り壊しに至ったそうです。
引っ越し時に見た下の階は、窓からでも分かるぐらいに雰囲気が暗く、壁紙などがぼろぼろになっていました。
つい先日まで人が住んでいたとは思えないぐらい荒れた部屋に悲しさと驚きの入り混ざった感情を抱きつつ、私は住んでいたアパートから去りました。
現在は空き地になり、売地の看板がありますが、買い手がつきません。
長年放置されており、雑草が生い茂っています。