【投稿者:片目の子猫さん】
島根県松江市で怖い体験をしたことをお話しします。
実際に幽霊を見た、とかいうのではないので、「何、それ?」と思われるかもしれません。
でも、私にとっては、とても怖い体験だったのです。
小泉八雲の『怪談』の中に出てくる”むじな”
先ず、小泉八雲(こいずみ やくも)の『怪談』の中の”むじな”という話を紹介しておきます。
夜、ある男が坂を歩いていると、前方に女が立っていました。
袖で顔を隠して泣いているのです。
男は、親切心から「どうしたの?」と声をかけました。
女が袖を下すと、顔はノッペラボウでした。
男は、びっくりして逃げ出しました。
先方に屋台の蕎麦屋がありました。
男は、蕎麦屋に飛び込んで、
「た、大変だ……」
「どうしたんですか?」
「あそこに女がいたんだ」
「それが何か?」
「その女が……、その女の顔が……」
「こんな顔だったんですか?」
蕎麦屋の主人の顔もノッペラボウでした。
さて、4年前のことです。
私は、1人で松江市へ行きました。
出雲大社へお参りするのが目的でした。
実は、その当時、ある女性と付き合っていて、プロボーズしようと思っていました。
それで、出雲大社(縁結びの神様です)でプロポーズの決心をしたかったのです。
お参りした後、松江市を観光しました。
松江城とか塩見縄手を見た後、小泉八雲の家や記念館を見学しました。
もちろん小泉八雲の名前は知っていましたが、実際に読んだことはありませんでした。
記念館で『怪談』を買いました。
私は体育会系で、文学にはあまり興味がありません。
でも、その人の現地でその人の作品を読むのもいいだろう——、と柄にもなくロマンチックなことを考えたのです。
ホテルに到着するも部屋が異様に寒い
外で食事をして、コンビニでビールやおつまみを買って部屋へ戻りました。
なんとなく部屋が寒いのです。
念のため、フロントに電話をして、毛布をもう一枚借りたい、と言いました。
10分後くらいに、ドアのチャイムが鳴りました。
ドアの覗き穴から従業員であることを確かめました。
あの覗き穴は魚眼レンズになっていますよね。
だから顔が極端に大きく見えるのです。
それはともかく、毛布を受け取りました。
さて、風呂に入り、ビールを飲みながら『怪談』を読むことにしました。
でも、なんだか怖いのです。
『怪談』の中には、ものすごく怖い話が書いてあるような気がするのです。
そんな話を読んだら眠れなくなる……。
そこで、パラパラと本をめくり、いちばん短くて怖くなさそうな話を捜しました。
それが”むじな”でした。
でも、読み終わったら、本当に怖くて怖くて仕方ありませんでした。
ホテルのシングルルームに独りだけ……。
もう、これ以上読みたくない。
怖くなり眠りにつこうとするも……
私は、ベッドに入りました。
毛布を2枚かけても寒いのです。
寒くて怖いのです。
眠れません。
でも、ウトウトしていたのでしょうね。
チャイムの音で、ハッと目が覚めました。
時計を見ると午前3時です。
またチャイムの音がします。
夜中に、誰がチャイムを鳴らすんだ?
ホテルの従業員かもしれません。
でも、客に用事があるなら、先ず、電話で知らせますよね。
そのくらいの判断は出来ました。
従業員ではない。
では、誰なんだ?
もちろん、ロックしたままドアの覗き穴から確かめればいいのです。
でも、覗き穴から見たら、そこにはノッペラボウがいた、となったらどうしよう——。
ベッドから出られませんでした。
チャイムは、合計7回鳴りました。
そして、去って行く足音がしました。
私は、朝まで一睡も出来ませんでした。
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