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【ゾッとする話】佇む女

【投稿者:からんさん】

これは私の主人が体験した話です。

当時、主人は職場と自動車学校に自転車で通っており、忙しい毎日を送っていました。
そんなある日のことです。
主人が血相を変えて帰宅してきました。
バタバタと慌ただしく、文字通り転がり込むようにリビングに駆け込んできて
「なんでもいいから俺に塩を振ってくれ」
と言うのです。
その顔は青白く、まるで見てはいけないものを見たかのような表情で、私もただ事ではないと思い
言う通りに彼の頭から肩にかけて塩を振りかけました。

そのままお風呂へ向かい、落ち着いたところで話を聞けば
「ヤバい女がいた」と一言零しました。

彼の通勤路には大きな公園があります。
当時住んでいた市ではとても有名な公園で、大規模な夏祭りなどが開催されるような。
テレビでもよく取り上げられるほどの有名な公園で、今回のような話は聞いた事もありません。

その日も、主人はいつものようにその公園の道沿いを自転車で走っていたそうです。
音楽が好きな主人は周囲の音が分かる程度にイヤホンを付けて、鼻歌交じりに帰宅していました。
ふと、視界に街灯の下に佇む白いワンピースの女性の姿が映りこんだのです。
髪が長くて顔までは見えなかったそうですが、学生なんかも多い地域でしたから
「ああ、迎えでも待っているんだな」と思いその前を通り過ぎたのだそうです。

そのまま自転車を走らせていた主人は大きなカーブに差し掛かりました。
公園に沿った道で、緩やかですが先の見えない大きなカーブを想像してもらえると分かりやすいかと思います。
そのカーブの先。もうすぐ曲がりきるところにある街灯の下。

白いワンピースを着た女性が立っていたのです。

ゾッとしたそうです。思わずヒュッと喉が鳴ったとも言っていました。
それもそうです。先程見かけた女性と同じ人だったのですから。
視界に映ったその姿を認識した瞬間、強烈な寒気に襲われたのだそうです。
その日はちょうど夏の終わり頃でしたが、残暑が厳しい日で、動かずとも汗が噴き出すほどの1日でした。
それが、全身に鳥肌が立つ程の寒さに襲われたと言うのです。

そもそも、公園の中を通って移動したとしても、主人は自転車です。
徒歩で追い越すなど、よほど足の速い人間でないと難しいでしょう。
さらに夜道では目立つ白いワンピース。足元はよく見えなかったそうですが、スニーカーなどではなかったはずだと。
ましてや、公園内は紅葉が始まっていて歩けばガサガサと落ち葉を踏む音がするはずなのです。
先程も書きましたが、主人は周囲の音が聞こえる程度の音量で音楽を聴いていました。
それでも、足音一つしなかったというのです。

直感的に「目を合わせてはいけない」と思った主人は、見えていないという態度を取りながら通り過ぎました。
視界から外れた直後、肩にヒヤリとしたものが触れて半ばパニックになりながらの帰宅だったそうです。
振り返ったら終わりだ、ヤバイ、死ぬかもしれない。
そう思いながらもどうにか振り返ることなく、自宅にたどり着いたとのことでした。
自転車を停め、鍵を掛ける頃には肩の感触はなくなっていたそうです。

何故、その日に限って彼女がいたのか、どうして主人の前に現れたのかはわかりません。
ですが、その後何度同じ時間にその道を通っても彼女は現れなかったそうです。
ただ、主人が言うには、「なんとなくだけど、2回目に見かけた時に何か反応してたら、俺は帰ってこれなかったと思う」と一言零していました。
その言葉に私の方がゾッとしてしまいました。
無事に帰ってきてくれて本当に良かったと思います。”