【投稿者:K.Tさん】
私が介護施設に勤務していた時の話です。
私が勤務する認知症高齢者の病棟は2階建ての建物の2階にあります。
1階には広いフロアがありますが、現在は使われていません。
日中の勤務の際、使われていない1階のトイレから時折コールが鳴ることがありました。
それも食事前や入浴介助中の忙しい時間帯にばかりです。
先輩から「誰かが勝手に降りて使っている可能性があるから見てきて。」と指示を受け、「こっちは忙しいのに。」と半ばイラついた気持ちで見に行っては暗いトイレを確認してコールを消していました。
私は1年5か月程で部署異動が決まり、訪問介護事業で働くようになりました。
この話をふと思い出し、家族に話したことがあります。
「怖くなかったの?」
と聞かれ、改めて思い返した時、おかしな点がいくつかありました。
まず、トイレにはセンサー式の電気があるため、誰かが入ると自動的に電気がつくはずです。私が行った時には毎回、トイレ前の壁にあるコールの赤いランプだけが点滅しており、トイレ内は暗いまま。
そして私が入ってようやく電気がつき、そこには誰かがいるわけでもない。
高齢者が流し忘れた汚物があるなど、さっきまで人がいたという形跡もなかった。
そんな状況ならまず「怖い」と思うはずですが、当時は忙しさとイライラ感に揉み消され、恐怖すら感じなかったなと思いました。
異動後も、前の部署で知り合った人とプライベートで会う機会や、休憩所で顔を合わす機会がありました。
仲の良かった先輩職員と休憩所で会った際にその話を遠回しに聞いてみました。
「ここって、1階で誰かが亡くなったとかありますか?」と。
2階なら高齢者の部屋が並んでいるわけで、最期を看取ることはありますが、広いフロアとトイレしかない1階で不慮の事故で亡くなった人はいないだろうと思っていました。
しかし、先輩はサラッと。
「ああ、徘徊した人がなぜか1階の厨房で倒れて亡くなっていたことがあったよ。それと、急性心不全で倒れた人と、車椅子から落ちて頭を打った人。私が知っているだけで3人かな。もっと前からならまだいるはずだけど。」
その時初めて全身に鳥肌が立ち、恐ろしいと感じました。
要は、誰もいないトイレで勝手に鳴るコールの主である霊が1人ではないということ。
そんなに多くの人があのフロアで亡くなったということはこの時聞いたのが初めてで、大変ショックだったのと、これまでは本当に知らぬが仏だったんだと思いました。
今でも時々鳴ることがあるそうですが、その原因は分かっていません。