【投稿者:夏樹さん】
小学生の頃、私の通っている学校全体で『トイレの花子さん遊び』が流行りました。
トイレの花子さん遊びとは、校舎2階にある女子トイレの一番奥の個室扉を3回ノックしてから、「はーなこさん、遊びましょ」と言う遊びです。
すると「何して遊ぶ?」と花子さんが聞いてくるので、例えば「鬼ごっこ」と答えると花子さんに息絶えるまで追いかけられ、「縄跳び」と答えると縄で首を絞められるといった噂がありました。
私のクラスでも大流行して、本当に花子さんが出るのか、友人達と試してみることになりました。
その時は誰も、「花子さんなんているわけない」と、花子さんの存在を信じていませんでした。
しかし、友人のA子ちゃんが手順通りに花子さんへ問いかけると、「何して遊ぶ?」と、女の子の声が返ってきたのです。
「ねえ!どうしよう、本当に花子さんが出た!」
「A子ちゃん、花子さんに何か答えなよ」
「やめてよ、怖いよ……」
私達がパニックになっていると、トイレの扉が開いて「あはは!びっくりした?」と笑いながら、クラスメイトのB子ちゃんが出てきました。
本物の花子さんだと思ったら、実はB子ちゃんが花子さんのフリをしていただけだったのです。
「なんだB子ちゃんか、びっくりしたけど花子さんじゃなくて良かった」と言い合いながら、その日はそれで終わりました。
翌日も、昨日したトイレの花子さん遊びの話しになって、「花子さんってやっぱり噂だったんだ」「幽霊なんているわけないよね」と言い合っていました。
しかし、昼休みにトイレへ行ったB子ちゃんが泣きながら教室に戻ってきて、そこから事態は思わぬ方向へと進んだのです。
「B子ちゃん、どうしたの?なんで泣いてるの?」
「昨日と同じトイレに入ったら、外から扉が3回ノックされて、誰かが『B子ちゃん遊びましょ』って言ってくるの……」
「他のクラスメイトがこっそりいたずらしていたんじゃないの?」
「ううん、すぐ扉を開けたけど、外に誰もいなかったよ」
B子ちゃんの話しを聞いた私達は、B子ちゃんが言っているようなことが起こるのか確かめようと、放課後に昨日のトイレへ行きました。
B子ちゃんは怖がってトイレに近づきたがないので教室で待っていてもらい、私とA子ちゃんとC子ちゃんで、1人ずつ順番に問題のトイレへ入ることになりました。
近くに人がいると花子さんが出ないかもしれないので、1人がトイレに入っている間、他の子はトイレの出入り口で待つことにしたのです。
まずA子ちゃんが入りましたが、何も起きませんでした。
次にC子ちゃんが入りましたが、何も聞こえなかったそうです。
とうとう私の番になり、一番奥のトイレへ入り、ノック音がするのをじっと待ちました。
数分待っても何も起こらないので、「B子ちゃんの嘘だったのかな」と思ってトイレから出ようとしたその時です。
3回ノック音がした後、「私ちゃん、遊びましょ」という女の子の声が聞こえました。
何も答えずにいると、女の子はもう一度、「私ちゃん、遊びましょ」と問いかけてきます。
自分でもどうしてか分かりませんが、気づくと私は「いいよ、何して遊ぶ?」と答えていました。
しまった、と思って慌てて両手で口を押えたのですが、出た言葉は取り戻せません。
女の子は先程より楽しそうな声で、「遊びましょ、遊びましょ、遊びましょ」と繰り返してきます。
怖くなってトイレの外に出ようとすると、手首をぐっと引っ張られる感触があり、そこで恐怖が最骨頂に達した私は大きな叫び声を上げながらトイレから出ました。
「私ちゃん、大丈夫!?」
「もしかして、花子さんの声が聞こえたの?」
「う、うん……」
「あ、私ちゃん、手が……」
怯えるように私の手元を指さすA子ちゃんの視線を辿っていくと、誰かに思い切り掴まれたような形の青アザが手首に付いていたのです。
花子さんが出たんだ、呪われたらどうしようなんて騒いでいると先生がトイレに入ってきて、私の手首のアザを見て更に騒ぎが大きくなってしまいました。
その後、他にも「あのトイレで花子さんの声が聞こえた」「手や足を掴まれた」といった生徒が増えた為か、問題のトイレは使用中止になりました。
どうやら先生の中にも、花子さんの声を聞いたり体を掴まれた人がいたようです。
「遊びだから」と軽い気持ちでやったら、本当に心霊体験をすることがあるので、この遊びを試そうと思っている人がいれば、十分気を付けてください。