【投稿者:よりのつさん】
うちの母親は霊感を持っているのですが、よく風呂場に人がいると言って怖がります。
そんな母親が風呂場の前にある洗面所で洗濯物をしていると、風呂場の方から人の気配がするのでドアの方を見てみると、ふっと黒い人影が横切ったというのです。
右にはバスタブがあり、左は洗い場になっているのですが、横切った後は壁に消えたということになります。
まだその中に幽霊がいると考えると、私と母親はお風呂に入ることができませんでした。
でも、次の日。母親は勇気を出してお風呂に入りました。
そして、髪の毛を洗っていると人の手で背中を触られて、シャンプーを付けたままお風呂場から素っ裸の状態で飛び出してきました。
その異様な姿に父親は驚き、「なにをしてるんだ?!早く服を着なさい!」と母親はひどく叱られていました。
そんなお父さんはお母さんと一緒にベッドで寝ているのですが、ある日のこと、「やめて、やめて!」と隣に寝ているお母さんが叫んでいて目が覚めたそうです。
そして、お母さんを見てみると、髪の毛を引っ張る”白い手”が浮かんでいるのを見たと言うのです。
その真っ白な手は女性のもので、お母さんを壁の中に引きずりこもうとしているようだったとも言います。
次の日も、次の日もその手は出てきて髪の毛を引っ張り続けました。お父さんはその手を追い払おうと手で叩こうとするのですが、ちっとも消えないので、心身ともに困り果てた状態に。
まさか、幽霊が壁に引きずりこもうとしても、そんなことはできないだろうと思う私。
でも、お母さんの前髪部分が日々禿げていくのです。
「このままでは本当に引っ張って、お母さんを持って行ってしまうのではないか」
そんな恐怖心も芽生えてきます。
そう思っていたある日。
お母さんが次のようなことを言いました。
「昔ね、病弱な友達がいたのよ。その友達は癌で、もう治る見込みはなかったの。毎日のようにお見舞いに行ってあげてたんだけどね、最後の日、お母さんはお父さんとのデートに行ってしまった。それをいまだに恨んでいるのか、私の髪の毛を引っ張って、連れて行こうとしてるんだわ」
そうか、一番大切な友達だからこそ、最後は看取ってほしかったのかもしれない。
その話を聞いた私は、「成仏してって祈った方がいいよ」とお母さんにアドバイスをしました。
「そうね」お母さんはベッドの横に花をお供えして、「成仏してください」と毎日祈ると、祈りが通じたのか、その手は出なくなったと言います。