【投稿者:よりのつさん】
親戚の家に泊まりに行った時の恐怖体験です。
毎年、決まって正月は東北にある親戚の家に遊びに行き、宿泊します。
荷物を車に積み込み、高速道路を利用して、片道6時間以上もかけて行く旅はちょっとした国内旅行のようです。
「おばさん、元気かな?」
「今年は親戚みんなが集まるから、盛大なお正月になりそうね」
と車内は盛り上がっていました。とその時、
「ね、あそこ、火事だよ!」
ずっと窓の外を見ていた私の目に飛び込んできたのは炎に包まれる家の光景でした。
家の窓からは真っ赤な炎がゴーゴーと出ている状態。
火事の家に車が近づくにつれて窓を閉め切った車の中にもパチパチっと家が燃える音と、物凄い煙が車の中にまで入ってきます。
「うわ、酷いな」
「これだけの火事じゃ住んでいる人は亡くなってるかもね」
とお父さんとお母さんは話していました。
私は口には出しませんでしたが、内心、
(火事のせいで渋滞しちゃったなあ。ほんと迷惑な火事……)
と思っていました。
高速道路に入る手前の道路は火事のせいで大変な渋滞になっており、親戚の家に到着したのは22時を回った頃。
「遅かったわね」
と親戚のおばさんも待ちくたびれた様子で出迎えます。
「お風呂が沸いてるから先に入ったら?」
と言うので、私は
「じゃ、先に入るね」
と持って来たパジャマを手にお風呂場へと行きました。
「お風呂の湯加減はどうかな?」と思った私はお風呂場のドアを開けようと目を向けると中から人影が見えます。
「ん?先に誰か入ってたのかな?おじさんかな?」と思うほど、大柄なシルエットが曇りガラスのドアから見えました。
「おじさん?入ってるの?」
と私は声を掛けました。
すると
「ああ、入ってる」
との返事が聞こえてきます。
なら、食事をしてから入ろうと思い、親戚が集まるリビングに戻ろうとすると
「あら、お風呂に入らないの?」
と親戚のおばさんがちょうど出てきて私に話しかけてきます。
「うん、おじさんが入ってるんだよね。だから少し経ってから入る」
と言うと
「おかしいわね、おじさんならリビングにいるわよ」
と言うのです。
リビングにいる…なら、誰?あの人。
お父さん?でも、リビングに入るとお父さんは出された料理を美味しそうに食べていました。
嫌な予感がする私はあまり考えないようにして先にご飯を食べることにしました。
ご飯を食べているとカーテンの開いている窓の外にスッと人が横切ります。
横切った男性は30代後半から40代前半かなと思う中年男性で、ゆっくり前を向いて歩いていました。
そして、こちらにゆっくりと顔を向けるのですが…その顔は真っ赤。
酷い火傷で……服が焼けたところから肌が見えるのですが、焼けただれていて直視できません。
「おばさん!人が歩いてる!」
窓の外を指差して叫ぶ私に、みんながいっせいに窓の外を見ます。
「誰もいないぞ」
「こんな夜中に人が歩いてるわけないだろ」
そうみんなが言うのですが、確かに男性を見た私は全身に鳥肌が立ってしまいました。
「まさか、火事で死んだ幽霊が憑いてきちゃったのかも…」と思って。
燃える家の前を通る時に「迷惑だな」なんて呟いてしまったことで亡くなった人を怒らせてしまったのかもと思うと、不謹慎だなと今になって反省。
「おばさん。明日の朝お風呂に入るから、今日は早く寝るね」
と座敷に行き、敷いてある布団の中へ潜り込みます。
でも、先ほど見た男性の幽霊の姿を思い出してしまい、なかなか眠れません。
「ああ、早く寝たい」と思いつつ目を瞑っていると
ガタガタガタガタガタッ!
と窓の方から音がしてきます。
「!? まさか、あの男の幽霊が窓から入ろうとしている?!」
そう思うと怖くて全身が硬直してしまいます。
ですが、怖いもの見たさに襲われる私は布団からゆっくりと顔を出し、そちらの方へ目を向けてしまいました。
「っ!!」
窓の外には顔も腕も焼けただれた男性がこちらをジッと見ながら立っています。
こっちおいで、と言わんばかりに手を振りながら。
「う、うううわっ!消えてっ!!!!」
私が大きな声で叫ぶと男性はスーッと消えていきました。
その男性の幽霊は二度と私の前には現れていませんが、親戚のおばさんの家にとりつかなければいいなと願うばかりです。
火事の現場を通る時は、心の中であっても下手なことを呟かない方がいいなと深く反省した私です。