【投稿者:hirakoさん】
一人暮らしをしていた時、バイトの帰り道に後をつけられたり、私の隠し撮り写真をマンションのポストに入れられたりといった、ストーカー被害に悩んでいました。
警察にマンション付近の見回りをしてもらっても一向に収まらないストーカー被害を友達に相談すると、「私の家に住む?」と、同居を誘われたのです。
友達が言うには「同棲していた彼氏と別れて部屋が1つ余ってる」とのことで、すぐに今まで住んでいた部屋の解約や引越し手続きを行い、友達と一緒に住むことにしました。
友達と同居してしばらくは、以前まで感じていた嫌な視線やつきまといなどの被害が起こらず、心穏やかに過ごせていました。
しかし、1ヶ月もすると、またストーカー被害が再開してしまったのです。
それと同時期に、隣の部屋にA山さんという男性が引越してきました。
A山さんは、私のバイト先の飲食店によく来てくれる常連客の方で、その時は「知ってる人がこんな近くに引越してくるなんて、偶然ってあるんだなぁ」と思っていました。
A山さんが引越してきて数週間経った頃、夜遅くにバイトから帰ってくると、部屋がある階の廊下に、同じタイミングで帰宅したらしいA山さんがいました。
お互い「こんばんは」と挨拶して、軽く世間話をしながら何気なくA山さんの後ろに目をやると、そこに1人の髪が長い女性が立っているのが見えました。
女性は、A山さんに寄り添うように後ろからぴったりくっついていて、そのまま一緒に部屋へ入っていったので、その時は「A山さんって一人暮らしじゃなくて彼女と同棲していたんだ」と思ったのです。
その後も、A山さんの後ろをくっついて歩く女性の姿を、マンション内で何度も見かけました。
また、A山さんは私のバイト先の常連だったこともあり、同じマンションに引越してきてからも変わらずお店を利用してくれていたのですが、初めて女性を見かけてからは必ずその女性も一緒に来店していました。
そんな2人を見て、私は「どこに行くにも一緒なんて、すごく仲が良いんだ」なんて、呑気に思っていたのです。
それからしばらく経ったある夜、友達と部屋のリビングで晩御飯を食べていると、突然「ぎゃああああっ!」という男性の叫び声が聞こえました。
叫び声がした後に、ガラガラガラッ!と勢いよく窓を開ける音がして、その数秒後にドスン!という地面に重たい物が落ちたような鈍い音がしたのです。
友達と慌ててベランダに出て下に目をやると、真ん中にある何かを人々が取り囲んで騒いでいました。
目を凝らして真ん中にあるものを見ると、それは頭から血を流して地面に倒れているA山さんでした。
すぐに救急車が来てA山さんを乗せて走っていき、ひと息ついたかと思うと今度は警察が来てA山さんの件で聞き込みを始めました。
私と友達も事情を聞かれて、その時に私が「A山さんは女性と一緒に暮らしていたようなので、その人が何か知ってるかもしれない」と言ったのですが、警察には「管理会社や他住民の方によるとA山さんは一人暮らしのはずですが…」と困惑した様子で返されました。
「あの女性は一体誰なんだろう」とモヤモヤしながら数日過ごしていると、A山さんのご両親が私を訊ねてきました。
ご両親からは開口一番「息子が申し訳ありませんでした!」と頭を下げられ、何事かと思って話しを聞くと、どうやら私をストーカーしていたのはA山さんだったようなのです。
入院中のA山さんの着替えを取る為、ご両親は部屋に入って荷物を詰めていたのですが、その時に私の隠し撮り写真や私の名前・住所が記載された紙ゴミ(捨てたはずの郵便物など)を大量に見つけて事情を察したようでした。
衝撃の事実に呆然としていると、A山さん母が恐る恐る「それで…あなたの件とは関係ないと思うんですが…。髪が長い女性を知りませんか?」と、聞いてきました。
A山さんは、ベランダから落ちて怪我をして病院に運ばれた後からずっと、「髪が長い女に捕まったら殺される、逃げないといけない」と、怯えているのだそうです。
私も友達も髪は肩くらいまでの短さですし、知り合いにも心当たりがありません。
「誰かいたかな?」と友達と記憶を掘り返していると、そういえば1人だけいたことを思い出しました。
「A山さん、髪が長い女性と同棲していたと思いますが…。一緒にいるところを何度も見かけましたから」と言うと、A山さんの両親は怪訝な顔をした後、「本人にもう一度確認してみます」と言って帰っていきました。
部屋に戻り、「まさかA山さんが私のストーカーしてたなんてね」と友達に話しかけたのですが、友達が青ざめた顔で、ぽつりと呟いたのです。
「髪が長い女性って多分、幽霊だと思う。だって私そんな人、一度もこのマンションで見たことないもの。A山さんを見かけたことはあるけど、女の人は見なかったよ」
後日、友達が他の住人に聞いて分かったのですが、過去に隣の部屋で若い女性が自殺していたことが発覚しました。
A山さんの彼女だと思っていたあの髪が長い女性は、A山さんに取り憑いた幽霊だったのでしょう。
A山さんに取り憑いた理由までは分かりませんが、A山さんがマンションのベランダから落ちたのは、あの髪が長い女性の霊が関係しているのだと思います。
今更になって、A山さんと女性がバイト先に来店した時にお冷とおしぼりを2人分出したらA山さんに怪訝な顔をされたことや、A山さんが1人分の食事しかオーダーしたことがなかったことを思い出しました。
私以外の誰も、あの女性の姿が見えていなかったのです。
友達が隣の部屋が事故物件ということを気味悪がって、引越したいと言うので、私も引越すことにしました。
A山さんのストーカーの件は詳しくは言えませんが、それなりの対処をした後にバイト先も変えたので、あれ以来A山さんには会っていません。
何食わぬ顔で頻繁にお店に来ていたお客さんがストーカーだったことには驚きましたが、その人の彼女だと思っていた女性が、実は幽霊だったことにもびっくりした出来事でした。
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