【投稿者:廃墟嫌いさん】
これは、廃墟巡りが好きな友人から聞いた話です。
ある日廃墟探索をしていると、昭和に建てられたと思われる古い家屋をみつけました。
今でも誰かが住んでいるかのように、家具も家電もそのままで残されており、昭和の博物館にあるような昔の家電や1990年代で止まっているカレンダーに昔の雑誌などが散乱しており、友人曰く、「見ごたえがある廃墟」だったそうです。
その友人は写真を撮りながら廃墟を巡っていると、懐かしのブラウン管テレビが置いてある寝室に入りました。
他にも布団などが生々しく敷いてあるままで、人の気配さえも感じれるほどの生活感にぞっとしながらも、廃棄好きにはたまらない廃れ具合。
木製の勉強机も置いてあり、昔の漫画やノートなどに目を通しつつもその辺を手当り次第に物色していました。すると、突然ブブブブっという音がしたかと思うと、ブラウン管のテレビがパッとついたのです。
このテレビまだ見れるんだなどと呑気にテレビに視線を移すと、荒々しい映像が流れてきたのです。食卓を囲む家族のホームビデオのようなものが流れてきました。
小さな男の子二人とその両親らしい男女、そしてそのまた両親らしい高齢男女と6人がごちそうを囲んで話をしているだけの映像ですが、声は内容が聞き取れません。
なんのテレビだろうとしばらくぼーっと見ているとハッとしました。どうしてテレビが映るのかと。
ここは廃墟、電気なんて通っていません。もしかして本当に人が住んでいるのか?と思った瞬間、映像がプツンと消えたのです。
テレビが本当に生きているのか試したかったのですが付け方がわからずにいると、見たくないものを目にしました。
それは、テレビのコンセントはネズミにかじられているようなボロボロの状態。
それではなぜ映像が……と考えているとまたしてもテレビに映像が流れはじめたのです。
それは、さっきのほのぼのとした映像ではなく今度は布団に横になり、呼吸を荒くしているおじいさんの映像。
とても苦しそうで、真っ青なその表情はどんどんと悪化していくのです。
そこで、またしてもハッとしました。今にも息を引き取りそうなほど苦しそうなおじいさんの寝ている部屋は今、自分がいるこの部屋だと。
このおじいさんはこの布団で息を引き取ったのだと悟り、この映像を見続けてはいけないと、腰が抜けそうになりながらもなんとかその廃墟を抜け出したのです。
ここは踏み込んではいけない場所だったんだと悟り、家に帰り撮影した写真を削除しようと確認すると廃墟を撮影したはずなのに、写っているのは草が生えた空き地だけ。
確かに家の写真を撮影したはずなのに……。
後日、行ってはいけないと思いつつ、再びあの廃墟を訪れることにしたものの、いくら探してもあの家は見つからなかったそうです。
あの家で見た映像はなんだったのかわけが分からず、ただ、あの苦しそうな表情は頭から離れない。
それがトラウマとなり、友人は今でもテレビを見るのが恐いそうです。
あのおじいさんの最期を見てしまうのではないかと。
その友人はこうも言っていました。
「遊び感覚で廃墟に踏み込まないほうが良い。なにかが起こってからでは、もう遅いから」