時代は令和に変わり、グリコ・森永事件を知っている人は、さらに少なくなったでしょう。
少なくともリアルタイムで事件の成り行きを報道などで見守ったのは35歳以上に限られます。
公訴時効を迎え、もう忘れ去られようとしている事件であるとも言えます。
さらにこの事件はその犯行内容が複雑で何度も犯行を繰り返したことから、なかなか全体像を理解されなていない側面もあります。
今回はそんなグリコ・森永事件を風化させないために事件の紹介と、その真相に迫ります。
グリコ森永事件とは
グリコ・森永事件には関係する様々な犯行があるのですが、中心となるのは1984年・1985年に起きた企業相手の脅迫事件です。
犯人が自らのことを「かい人21面相」と名乗ったので、かい人21面相事件という名前で記憶している人も多いと思われます。
この事件は警察庁広域重要指定114号事件と命名され、警察も精力的に捜査を行いましたが(捜査に携わった警官は延べ130万人とも言われています)、2000年にすべての事件が公訴時効を迎えたため、未解決事件となってしまいました。
まずは事件を時系列に整理してみます。
(1)江崎グリコ社長誘拐事件
事件概要
グリコ・森永事件の始まりは、1984年3月18日、兵庫県西宮市の江崎グリコ社長の実母宅に犯人たちが侵入し、入浴中だった江崎グリコ社長である江崎勝久を誘拐したことから始まります。
社長夫人が110番通報したため、警察はこの時点で事件の発生を把握します。
翌3月19日に大阪府高槻市にある江崎グリコ取締役である藤江取締役の自宅に、犯人から電話がかかってきます。
内容は指定の場所に来いという指示でした。
取締役が指定された場所に行くと、身代金として10億円と金塊100kgを要求するという内容の脅迫状を発見しました。
誘拐されたのは兵庫県で脅迫は大阪府と、2つの都道府県をまたがる事件であったことから、兵庫県警と大阪府警による合同捜査が始まります。
その後、犯人から再び電話があり、別の場所に身代金を持ってくるように要求してきましたが、結局犯人が現れることはありませんでした。
【考察A面】犯人の真の目的とは
この時点で警察は犯人の目的を身代金ではなく、別の目的があるのではないかと推測していました。
なぜなら、現金10億円と金塊100㎏というのは非常に巨大で重たいため、たとえ受け取ったとしてもそれを運搬しながら、逃亡するのは非常に困難であるからです。
さらに犯人に対し、社長の母や社長夫人がお金を出すと言った際に、「金はいらん」と答えたこと、さらに社長本人を誘拐するよりも、人質として扱いやすい幼い社長の子供たちを誘拐したほうが様々なリスクが少ないにもかかわらず、社長本人を誘拐したことから怨恨説が浮上しました。
その後、3月21日に社長が自力で犯人の元から脱出し、警察によって保護されました。
【考察B面】そこに裏取引はあったのか
グリコ森永事件は、この江崎グリコ社長誘拐事件から全てが始まります。
そして、グリコ森永事件の真相を暴くヒントは、この江崎グリコ社長誘拐事件にかなり多くのものが詰まっていると言えるでしょう。
最大の焦点は、
誘拐された江崎グリコ社長「江崎勝久氏」は、誘拐された際に犯行グループとどのような裏取引をしたのか
という一点に尽きます。
この後の事件をお読みいただくとわかりますが、これだけの規模の事件を起こす犯行グループが「人質に自力で逃げられてしまう」というあまりにもお粗末な失敗をおこすことは考えづらいです。
この場合、何かしらの裏取引をして解放された、と考える方が自然ではないでしょうか。
また、江崎勝久氏は解放時にしきりに娘の安否を心配されていました。
おそらく犯行グループとの裏取引の際に、娘を材料に脅される一幕があったことも想像できます。
グリコ森永事件は、結果的に犯行グループは1円も手にすることなく終わりを迎えることになるのですが、結局最後まで分からずしまいなのが「犯人の動機」です。
今回の事件、そして以降の全ての事件を、「裏取引」というキーワードを軸に見ていただくことで、この壮大な事件の輪郭が見えてくるかもしれません。
(2)江崎グリコ脅迫事件・江崎グリコ本社放火事件・兵庫青酸菓子ばら撒き事件・寝屋川アベック襲撃事件
事件概要
江崎グリコ脅迫事件
誘拐事件から14日後の1984年4月2日に誘拐から脱出した江崎社長宅に脅迫状が届きます。
さらにその6日後の4月8日に現金6000万を持ってくるように指示され、指定場所に行きましたが犯人は現れませんでした。
そして、のちにグリコ・森永事件の特徴として語られる出来事が起きます。
4月8日にメディア向けに挑戦状が届いたのです。
このことから本事件は、日本史上初の劇場型犯罪と呼ばれることがあります。
ちなみに世界初の劇場型犯罪と呼ばれるのは切り裂きジャック事件です。
江崎グリコ本社放火事件
さらに脅迫状から2日後の4月10日に江崎グリコ本社が放火されます。
かなりの範囲に燃え広がりましたが、けが人は出ませんでした。
出火の直後には不審な男がバッグを抱えているのが目撃されています。
さらに、グリコ監査役である藤沢監査役の元に1億2千万をグリコが支払うよう要求する脅迫状が届き、受け渡し先を順々に指示されますが、ここでも犯人は現れませんでした。
さらにメディア向けの挑戦状も送られ、ここで始めて「かい人21面相」を自称しています。
兵庫青酸菓子ばら撒き事件
つぎに犯人から、放火の1か月後である5月10日にメディアに対し
「グリコの せい品に せいさんソーダ いれた」
と書かれた手紙が届き、これによってグリコの商品は全国の大手スーパーで撤去されることになります。
当時の小学生はインタビューに「グリコのお菓子はやくたべたい」と語っていることから、かなり大規模に撤去されたことがわかります。
寝屋川アベック襲撃事件
前回の脅迫状から21日後の5月31日、脅迫されているグリコに対し、さらに3億円を要求する脅迫状が届きます。
3億円の要求から3日後の6月2日にレストランの駐車場に3億円を積んだ車を駐車しろと指示されます。
これに対し、警察はトランクに捜査員を忍ばせ、エンジンを遠隔捜査でストップできる装置を装着します。
当日、不審な男が3億円を積んだ車に乗り込み、エンジンをかけ発車させました。
それを受けて、警察は3億円を積んだ車のトランクに乗り込んでいる捜査員に連絡しようとしますが、通信機器が故障して連絡が取れなかったため予定の箇所より早くエンジンをストップさせるという不手際を犯しています。
警察は車を止めこの男を取り押さえますが、実はこの男は別の事件の被害者でした。
それが寝屋川アベック襲撃事件です。
6月2日に金の受け渡し場所に指定されたレストランに近い寝屋川市で、彼女と車でデートしていた会社員が、停車中に3人組に襲われます。
女性は連れ去られ、残り2人にレストランの駐車場にある車を運転し、指定の場所に行くよう脅迫されます。
これが取り押さえられた男性であり、犯人グループとは無関係だと判明しました。
毎日新聞はこの男性を犯人と勘違いし、犯人1人逮捕という誤報を流してしまいました。
【考察A面】グリコ怨恨説強まる
このころのマスコミはグリコに怨恨を持つものの内部犯行説であると主張していました。
その理由は江崎家やグリコの事情に犯人グループがかなり詳しかったことがあります。
江崎社長を誘拐する際に、江崎社長の長女の名前を知っていたり、脅迫状に社長運転手の名前が入っていたり、ほとんど知られていない関連会社にたいしての詳しい情報を把握していたためです。
江崎社長本人の名前は大企業の社長ですから知っていても不思議はないですが、インターネットも普及していない時代に、長女や運転手の名前を調べるのはかなり困難なはずです。
また本社への放火事件の際に、ほとんど知られていないグリコの関係会社でも放火事件が起きました。
さらに江崎社長は誘拐されて水防倉庫に監禁されていたのですが、その時に社長に着せたコートが江崎グリコ青年学校のものと類似しています。
そして、もう1つの大きな理由が通称53年テープの存在です。
誘拐事件発生の6年前である昭和53年にグリコを脅迫するテープがグリコ常務に送り付けられました。
繰り返しますが、グリコ森永事件が発生する6年前の出来事です。
そのテープの内容は1時間弱で部落解放同盟幹部を名乗る初老の男と推測される男性の声で録音されています。
テープの内容は主に次の3つです。
- 過激派の学生が脅迫事件を目論んでおり、江崎社長の誘拐・グリコへの放火・青酸入り菓子のばら撒きを計画している。
- 上記を交渉材料として3億円を要求するつもりでいる。
- この犯行を中止はできないが、1億7500万円に減額するように説得できるので、応じるなら新聞広告で連絡を取れ
実際に(グリコ森永事件で)起きた犯行と全く同じ内容を計画していたことから、このテープの信ぴょう性は高いと考えられていました。
さらにこのテープが届く2年前から、江崎グリコ常務宅に黄巾族を名乗る人物が手紙を送ったり電話をしたりして脅迫を続けていたのです。
これらのことから警察はこのテープの送り主は犯人グループの一味であると考え、声紋鑑定を行ったりしました。
また犯人グループは過激派ではないかという説の論拠にもなっています。
【考察B面】重要なのは「犯人グループにとってどこまでが思惑通りなのか」
ここでも、犯人グループと江崎グリコ社長「江崎勝久氏」との間で交わされたであろう裏取引を軸に事件を考察していきます。
まず、犯人グループによるグリコへの執拗な犯行が続くことになります。
裏取引が交わされたにもかかわらず、これはどういうことか。
考えられる可能性は以下の2つです。
- 江崎グリコ社長「江崎勝久氏」は一度は応じた犯人グループとの裏取引を言われた通り実行しなかった。そのため、犯人グループの怒りをかってしまった。
- この一連の(グリコへの)犯行は双方にとって予定調和の出来事だった。すなわち、これらの犯行を行うことも裏取引の内容に組み込まれていた。
(2)は一見矛盾しているように見えますが、グリコ森永事件を一歩引いて見ることで筋は通ります。
この時点ではどのメディアも報じていませんが、のちに浮上する「グリコ森永事件=株価操作説」へと繋がる伏線だったということです。
グリコ森永事件を劇場型犯罪にした本当の目的は、株価を操作することで株で莫大な利益をあげるという裏の目的があったことはほぼ間違いありません。
そう考えることで、犯行グループによる度重なる利益を伴わないリスクある行動にも合点がいきます。
そしてもうひとつ、今回の一連の事件で気になる出来事が発生しています。
3億円受け渡しの際に起きた無線機のトラブルです。
本来なら3億円を乗せた車を泳がせて犯行グループを一網打尽にするという作戦だったはずですが、このお粗末すぎるトラブルによって、運転手を取り押さえるのみとなっています。(しかも、取り押さえた運転手は事件とは無関係の人間でした)
犯人グループたちのリスクのありすぎる大胆な行動。にもかかわらず犯人グループに一向にたどり着けない警察。
このあたりから、警察上層部の何かしらの思惑が見え隠れし始めます。
(3)丸大食品脅迫事件
事件概要
寝屋川で犯人をとりのがしてから20日後の6月22日、今度は大阪府高槻市の丸大食品に脅迫状が届きました。
「グリコと同じ目にあいたくなかったたら、5千万用意しろ」
と書かれていました。
この取引を丸大食品が応じる場合には従業員募集の新聞広告を出すように指示されていました。
丸大食品が現金を用意し、待機していると、丸大食品への最初の脅迫状から6日後となる6月28日に女性の声を録音した電話で指定された場所にくるように指示されます。
大阪府警の刑事7人が丸大食品の社員に変装して、指定された国鉄高槻駅から発車する京都駅行きの電車に乗ります。
左側の窓に白い旗が見えたら、お金をいれたボストンバッグを投げ落とすように犯人から指示されていましたが、刑事はボストンバッグを投げ落とさずにそのまま電車に乗り続けました。
ここで刑事の1人が不審人物を発見します。
これが後の捜査で最も怪しい容疑者とされた「キツネ目の不審男」です。
このキツネ目の不審男は現金運び役の刑事を別の車両から見張っており、そこから歩いて、同じ車両にも乗り込んできました。
しかし捜査本部は現金の受け渡し時に犯人グループをまとめて逮捕したかったため、キツネ目の不審男には接触しないように現場の刑事たちに指示しました。
キツネ目の不審男は電車を降りると、改札から駅を出てしまい、現場の刑事も追いかけますが、人込みにまぎれたため見失ってしまいました。
この後、7月にも丸大食品取締役宅に脅迫状が届き、2回目の脅迫状から8日後となる7月6日には子供の声で現金を持って指定場所にくるよう電話があり、指示通り4回も現金を持っていきましたが、犯人は現れませんでした。
この事件はマスコミには知らされていませんでしたが、11月に犯人がマスコミへ高槻市の食品会社を脅迫したとする手紙を送り付け、その中に
「わるでもええ かい人21面相のようになってくれたら」
と当時の丸大食品のキャッチコピーをもじった文章をいれたことから丸大食品への脅迫が広く知られるようになったのです。
【考察】もっとも怪しい男「キツネ目の男」
今回の事件で登場したのがキツネ目の不審男です。
この怪しい男は後の事件でも事件現場で目撃されることから、捜査上の最重要人物となります。
(4)森永製菓脅迫事件
事件概要
丸大食品への脅迫から約2か月後の9月12日に大阪府大阪市の森永製菓関西販売本部に脅迫状が届きます。
その内容は1億円を出さなければ、製品に青酸ソーダを入れるというもので、さらに脅迫状から6日後の9月18日には関西支社に電話があり、子供の声で、現金の受け渡し場所を指定されました。
森永製菓は現金を指定場所に置きますが、ここでも犯人は現れませんでした。
【考察】犯人グループは家族?
電話が子供の声だったことから、犯人グループは血縁関係があるような近しい関係ではないかという予測が警察によってされました。
(5)2府2県青酸入り菓子ばら撒き事件
事件概要
森永が脅迫されてから約1か月後の10月7日から10月13日にかけて、愛知・京都・兵庫・大阪のスーパーやコンビニから青酸ソーダが混入された森永製菓のお菓子が相次いで見つかりました。
また10月8日には阪急百貨店などに森永製菓の製品を置かないように指示する手紙が届いた他、10月15日にNHK大阪放送局に青酸ソーダの錠剤が送り付けられています。
【考察】株価操作説
複数の企業が標的となったことからグリコ怨恨説は弱くなりました。
このころ犯人の目的とされたのが株価操作説です。実際に毒物入りの製品をばらまかれた企業は株価が暴落しています。
(6)ハウス食品脅迫事件
事件概要
2府2県青酸入り菓子ばら撒き事件から約1か月後の11月7日から起きたこの事件が、犯人グループを検挙する最大のチャンスであったと言われています。
まず11月7日にハウス食品工業総務部長宅に1億円を要求する脅迫状が届きます。
受け渡しは1週間後の11月14日のレストランで、青酸ソーダ混入入りのハウスシチューが同梱されていました。
11月14日に1億円を積んだ車を指定されたレストランの駐車場に駐車させます。
運転したのはハウス食品社員に変装した刑事で、周辺にも多くの刑事が配置されました。
ハウス食品総務部長宅に電話がかかってきて、女の子の声で別の受け渡し場所を指示します。
これが4回繰り返され、この間にキツネ目の不審男が、名神高速道路京都南インターチェンジ付近で何度か刑事に目撃されています。
そして犯人に指示された大津サービスエリアに車を向かわせました。
捜査強力を要請されていた滋賀県警の捜査員が大津サービスエリアでキツネ目の不審男を発見します。
この男は尾行点検(尾行されていないか確認すること)をしたり、ベンチに何か貼り付けるなど不審な行動をしていましたが、職務質問などの接触を禁止されていたので声はかけませんでした。
その後に大阪府警の刑事がキツネ目の男を確認すると、人相が丸大食品の時のキツネ目の不審男と一致しましたが、この刑事も接触する権限がなかったため、キツネ目の不審男はそのまま逃げ去りました。
車は大津サービスエリアから、さらに犯人の指示通り草津パーキングエリアに行き、そこで、名古屋方面に向かい、白い布が見えたら、指示書をいれた缶があるから見ろと、さらに指示されます。
白い布自体が発見しますが、缶も指示書も無く、犯人はまたしても現れませんでした。
この時、白い布があった場所の下を通る県道付近をパトロールしているパトカーが、不審な白いライトバンを発見し、職務質問のために近寄って懐中電灯で中を照らすと、男が乗っていました。
しかし、車は急発進して逃げようとします。
パトカーも追いかけ、カーチェイスをしますが、結局、男が乗った車に逃げられます。
すぐに車は発見されますが、男はおらず車も盗難車であることが判明しました。
この男こそ犯人グループの1人であると考えられており、このタイミングが犯人逮捕の最大のチャンスであったといえます。
このチャンスを逃した責任を取って、パトカーに乗っていた警察官は辞職しました。
犯人を取り逃がしてから5日後の11月19日にさらに脅迫状がハウス食品に届きますが、今は森永が相手であるとかかられており、ハウス食品に対する脅迫は休止が宣言されていました。
【考察】再び現れるキツネ目の不審男
以前の事件でも事件現場で目撃されたキツネ目の不審男が再び目撃されます。
警察ではこの男を捜査上の最重要人物としていましたが、またしても逃げられてしまいました。
(7)不二家脅迫事件
事件概要
ハウス食品に脅迫状が届いた1か月後の12月7日に不二家の労務部長宅に脅迫状とテープ・青酸ソーダが届きます。
さらに12月15日と12月26日に百貨店屋上から2000万をばらまくよう指示されますが、不二家はいずれも拒否しました。
脅迫状が届いた3日前の12月4日にアマチュア無線で、「21面相」と「玉三郎」と名乗る人物が不二家脅迫について話し合っているのをアマチュア無線家が傍受し、マスコミに公開されました。
【考察】無線の2人「21面相」と「玉三郎」
アマチュア無線で会話していた2人はその後に起きた事件について、詳しく話していたそうで、まず犯人で間違いないだろうという判断がされました。
(8)東京・愛知青酸入り菓子ばら撒き事件
事件概要
年がかわって1985年の2月13日に東京・愛知で
「どくいり きけん」
とかかれた青酸入りチョコレートがばらまかれ、メディアにも挑戦状が届きます。
今回は明治製菓とロッテの製品も含まれていました。
【考察】株価操作説強まる
今回の毒入り菓子ばら撒きは脅迫されていない企業まで含まれていたことから株価操作説がより強まりました。
(9)駿河屋脅迫事件
事件概要
東京・愛知青酸入り菓子ばら撒き事件から11日後の2月24日に森永製菓への脅迫はやめるという手紙がメディアに届きます。
その後、翌月の3月6日に駿河屋に対し5000万を要求する脅迫状が届き、さらに2日後の3月8日には金の受け渡しを延期する連絡が入りますが、それ以後に犯人から連絡はありませんでした。
【考察】さらに株価操作説強まる
この事件がグリコ・森永事件では最後の事件となるのですが、結局最後まで、犯人は脅迫によって1円も得ることができていません。
このことから株価操作説がさらに強まりました。
(10)犯行の終わり
駿河屋脅迫事件から約5カ月後の、8月7日に、ハウス食品脅迫事件で男が乗った不審車両を逃がした滋賀県警の本部長が焼身自殺をします。
この自殺をうけて、本部長の自殺から5日後の8月12日に犯人グループから
「くいもんの 会社 いびるの もお やめや」
という文書が送り付けられます。
やめる理由は自殺した本部長への香典替わりだそうで、実際にこの後、犯人グループの動きはぴったりとなくなりました。
以上がグリコ・森永事件と呼ばれる一連の犯行の全容です。
グリコ森永事件の事件の真相に迫る5つの陰謀説
数々の犯行を繰り返した犯人グループですが、結局、逮捕にはいたりませんでした。
しかし警察の捜査の中で、犯人グループに対し様々な推測がなされました。
それらの説を紹介するとともに、どこに事件の真相があったか考察します。
株価操作説
この事件の大きな特徴は、(表向きは)結局犯人グループは1円も手にしていないという部分です。
身代金を持って行っても犯人が現れませんでした。
ではなぜこんな犯行を行ったかというと、株価を操作して儲けるためだといわれています。
実際に青酸ソーダを入れるといわれた企業は、商品を撤去せざるをえず、その株価は下がり、犯行が終われば株価は回復しました。
宮崎学説
事件当時、ノンフィクション作家として有名な宮崎学がキツネ目の男ではないかと、マスコミに大きく取り上げられました。
キツネ目の不審男に似ていたこと、そして犯人グループと同じようにマスコミを扇動し、警察と対立した過去を持つこと・多額の借金を抱えていたことから犯行への関与を疑われましたが、アリバイがあり物証がなかったためすぐに捜査線上からはずれました。
北朝鮮工作員グループ説
グリコに対し昭和53年に送り付けられた脅迫テープである53年テープの声が、兵庫県の貿易会社社長の声と似ており、この人物は北朝鮮による非合法活動の黒幕でした。
さらにこの貿易会社社長が関わる北朝鮮工作員グループ内にはキツネ目の男に似た人物や、グリコを恨んでいる北朝鮮工作員などが含まれていたとのことです。
しかし、貿易会社社長を声紋鑑定した結果、別人であるとわかりました。
元暴力団組長グループ説
1979年にグリコから5億円を脅し取ろうとして拒否された元組長がおり、この人物には「かいじん21面相」がグリコへの休戦を宣言したあとに3億円の入金があり、さらにグリコに怨みを持つ人物がこの元組長の周辺にいたのです。
警察も総力を挙げて調査しましたが、主要メンバーにアリバイがあり、物証もなかったことから捜査は終了しました。
被差別部落説
部落差別・被差別部落とは
部落差別とは,日本社会の歴史的発展の過程で形づくられた身分階層構造に基づく差別により,日本国民の一部の人々が長い間,経済的,社会的,文化的に低位の状態を強いられ,日常生活の上で様々な差別を受けるなど,我が国固有の重大な人権問題です。
法務省から引用
被差別部落とは、部落差別の対象となっている特定の地域のことを指す言葉です。
この被差別部落説が浮上した理由は、(被差別部落に住んでいる住民は皮革加工業を生業としているケースが多いのですが)森永に対する脅迫テープの中に皮革製品に使用される独特のミシンの音が含まれていたこと、犯人グループの遺留品の多くが、被差別部落周辺のスーパーで購入されていたこと、そしてこの犯行には複数の子供が関わっていると考えられていたからです。
(グリコ事件や森永事件の際にかかってきた脅迫電話が、子供の声だった)
しかも声紋鑑定の結果、子供は1人ではなく、複数人であると判明しました。
そのように子供を関与させられるのは閉じられた血縁関係にあるグループなのではないかということです。
ただし犯行の理由は身代金ではなく、やはり株価操作目的だったのではないかと思われます。
【犯人と黒幕】グリコ森永事件の真相へと導く一つの仮説
グリコ森永事件の時効が成立した直後、某大型掲示板に『グリコ森永事件の犯人の関係者』を名乗る人物からの「事件の詳細を暴露した書き込み」がなされました。
もちろんその信憑性についてはさまざまな意見があります。
ただ、自称犯人の関係者からの書き込まれた内容があまりにも的を得ている点、矛盾点が少ないこと、そして、他の掲示板閲覧者からの質問への迅速かつ整合性取れた回答から、「本物なのでは?」という意見が飛び交いました。
この出来事は大きな話題となり、一時ネット上が騒然となりました。
この一連の暴露内容は、一部の週刊誌などにも取り上げらることになります。
個人的な意見を述べさせていただくと、全てが真実ではないにしろ、かなりの程度真実を含んでいる可能性は十分にあると思われます。
本項では、『自称犯人の関係者』により暴露された情報をもとに、グリコ森永事件の真相を考察していきます。
以下、暴露した人物を、掲示板での呼称に従って「1さん」と呼びます。
まず、1さんによる暴露に従ってグリコ森永事件の経緯を記しておきましょう。
暴露に基づくグリコ森永事件の「真相」
まず犯人グループの人数です。
1さんの話によると、犯人グループは日本人2名 、日系3世(韓国)1名。3人は特に強い絆があるわけではなく、パチンコを通じて知り合った仲だそうです。
3人にとって事件の発端(この一連の事件を思いついたきっかけ)はグリコではなく明治製菓だったようです。
一連の事件を考えたきっかけ。そしてなぜグリコが標的になったのか。
犯人グループは、とあるきっかけがあり明治製菓に商品に対するクレームを入れる機会がありました。
そのクレームはかなり理不尽な内容だったようですが、明治製菓から、いとも簡単に『丁寧な謝罪文と新しいお菓子』が送られてきました。
また、そのクレームの中に「マスコミに知り合いがいる。欠陥商品をばらまくぞ」 という言葉を織り交ぜたところ、明治製菓が想像以上に過剰反応したため、それを見た「キツネ目の男」が、本格的に企業恐喝を考えたようです。
なぜグリコを標的にしたのかという点ですが、犯人グループの3人のうちの1人が、江崎社長の自宅や間取り、子供の名前などをたまたま知っていたからでした。
これは前の職業の関係で偶然知る機会があったようです。ちなみに、その職業が何だったのかは不明です。
ちなみに1さん曰く、最初から社長誘拐を計画していたわけではなかったようです。
あくまでも、クレームから発展させた企業恐喝を行うつもりだったようです。
江崎社長と裏取引
そして1984年3月。
当初の予定通り、グリコに対して、明治製菓のときと同様のクレームを入れましたが、思ったような反応が得られなかったようです。
それに逆上した犯人グループは、急遽社長を直接恐喝することに変更。社長宅があまりに無防備だったのを見て、江崎社長を連れ出して脅すことにしました。
ただし、のちに行う身代金が狙いではなく、何らかの情報を元に社長を恐喝してお金を出させることが真の目的だったようです。
このあたりは、実際にマスコミなどが騒いでいたように『裏取引』が行われていたという筋書きとリンクしています。
さて、犯人グループは誘拐の後、江崎社長と話を進めるうち大きな金額の話となります。
そこで犯人が取った行動は、江崎社長を「自力脱出したヒーロー」に仕立て上げることでした。
江崎社長をメディアの前に放り出し、一躍時の人に仕立て上げたということです。
(このあたりは、犯人の思惑通り、という感じでしょうか。)
そして、この時点で犯人グループと江崎氏の間に何らかの取引がまとまったということです。
1さんいわく
”
キツネ目の男は『(江崎社長は)俺らより汚いやっちゃで』みたいな事をたしか言ってたと思います。
監禁中に犯人グループが(裏取引が成功すると)確信を持てたのは、江崎グループの結束の固さとプライドの高さ、そしてある食品会社のスキャンダル。
”
だったと証言しています。
キツネ目の男は江崎氏のことを「俺らより汚い」と言っているわけですが、会社が数百億の損失を出してしまうとしても犯人らと取引して隠さなければならない何かが、江崎氏にはあったことが推測できます。
ちなみに『ある食品会社のスキャンダル』についての詳細は、1さんは詳細を把握していないという立場をとっていました。
本当に知らなかったのか、はたまた名言を避けたのかは判断が難しいところです。
初期から食品6社が関わる
また1さんは
”
江崎社長の生還からが茶番といえる。
”
と語っています。
「茶番」というのは、ここからは犯人側と「被害者」の企業側、申し合わせの上で「事件」を演出していくということです。
つまりグリコ森永事件の真相は、1さんによると
”
江崎社長その他、食品会社6社の揉み消し工作が犯行を成功させた。
”
ということになります。
6社というのはグリコ・森永・ハウス食品・丸大食品・明治製菓・ロッテの6社であったと1さんは明言しています。
”
「この6社は何かアクションをおこす際に都度集まっていた、もしくは情報が詳細に伝達されていました」
”
と語っています。
これら6社は、事件以前から、なにかしらの協力関係にあったとうことです。
ただし、これ自体は、そこまで陰謀めいたことではないのかもしれません。
一つの業界を牛耳るトップ企業数社同士が、ある程度の横のつながり(コンセンサス)を取っていても何ら不思議はありませんからね。
例えば携帯電話の大手3社(D社、A社、S社)のように。。
ですが、ここでの最大のポイントは、世紀の茶番劇を上記の6社があえて受け入れいた、という事実です。
業界を揺るがす程の、相当大きな弱み、があったことが伺い知れますよね。
もしくは、茶番劇をすることで、相当大きな旨味があったという可能性も考えられます。
マスコミ、警察、政治家も引き込む
1さんいわく、
最初は上記の大手6社が主導となり、最終的にはマスコミや警察機関をも巻き込んで、当初の想像を遥かに越えた規模の茶番劇が進行していくことになったと言います。
もちろん、各業界の末端の人間にまで、茶番が浸透してた訳ではありません。
情報操作を行っていたのは、各業界上層部の、ほんの一握りの人間だったと言います。
さらに、1さんいわく、このあたりから、株の利益が目当ての政治家も関わってきたと言います。
そして、それらの(悪魔に魂を売った利益のみを追求する)政治家の要望を聞き入れることで、犯人グループは安全を確保できたと言います。
事件はここまで大掛かりになるわけですが、それは当初の3人の計画にはまったくなかったことだそうです。
当初の計画では江崎社長を脅迫するだけだったはずが、3人の予想を超えていろいろな人、企業を巻き込んでいったということですね。
この後、6月末からの丸大食品脅迫、9月からの森永製菓脅迫と毒入り菓子のばら撒きと続きますが、これらの狙いはもちろん株価の操作です。
毒入り菓子ばら撒きは、政治家の要望通りまさに『世間を騒がせる』ことに成功しています。
寝屋川のアベック襲撃もシナリオ通り
6月はじめに、犯人グループが寝屋川でアベックを襲い、男性に指示してグリコが用意した現金を取りに行かせます。
この男性は警察に包囲され、犯人グループの目論見は失敗に終わったように見えますが、1さんによるとこれもシナリオ通りだとのこと。
またアベックは「警察庁関係の様」だそうですが、それ以上の詳細は不明です。
脅迫テープには劇団ひまわりが関与?
10月には「脅迫テープ」が公開されますが、1さんによれば、これは多くの女性と子供を集め、オーディションやリハーサル、遊戯練習などの名目でいろいろな台本を読んでもらって録音、必要な部分をつなぎ合わせて脅迫文としたものとのことです。
ですから、読まされた人たちはまさか脅迫文であるとは夢にも思っていません。
1さんの暴露によると、その女性・子供は「劇団ひまわり」のメンバーから選んだと証言しています。
そして、「劇団ひまわり」のごく一部の上層部はこのことを(脅迫テームに利用することを)知った上で(個人的な利益を得ることを条件に)「偽の証言」作りに協力したとのこと。
オーディションで選ばれた女性・子供にはドキュメンタリータッチのドラマを作るという名目で大量のセリフを読んでもらうことで、「偽の証言」の作成関与に気づかれることはなかったと断言しています。
滋賀県警本部長の焼身自殺
その後、事件も捜査も進展せず、1985年8月に山本昌二・滋賀県警本部長が自らの退職の日に公舎で焼身自殺します。
1さんによると、キツネ目の男の指示は「一人うるさいのがいてる。面倒くさいからどっかとばせ」だけだったそうです。
山本氏は巡査からの叩き上げで県警本部長にまでなった人物で、警察上層部の裏取引など知らず、真面目に捜査をしていたのでしょう。
だからキツネ目の男は上記のような要請をしたわけですが・・・
その結果が山本氏の焼身自殺。
これを知ってかねがね「人を殺す気はない」と言っていたキツネ目の男はかなり怒ったそうです。
そして協力者から「話が違う方向に行く可能性が高くなった」という助言も受け、犯人グループは犯行終結宣言を出します。
この協力者というのは1さんいわく
”
群集心理がどうとか、そっち方面の教授?か何かです。
”
とのことですが、警察、企業、政治家、マスコミのどのグループの人物であるかは不明です。
考察
ここからは1さんの暴露情報の中で、曖昧なところや疑問に思ったところについて考察していきます。
江崎社長と犯人との間に何があったのか
監禁されていた水防倉庫の現場検証から、捜査当局も「自力脱出は困難、何かの取引があった」とみなしていました。
これは1さんの情報とも共通するところで、取引があったことはほぼ間違いないでしょう。でも、だとしたらどんな取引なのか?
江崎社長の行動を強力に拘束する情報を犯人側が持っていなければ「解放」ということにはならないでしょう。
「グリコ製品に毒を入れてばら撒く」
くらいの脅しでは、江崎社長の行動を縛れるとは、犯人も確信できないはずです。だからその程度では解放できないはず。
それ以上の情報を持っていなければならないでしょう。
そして後々、会社に数百億の損失を出すほどの協力をさせるわけですから、会社の利益に関わる情報ではなく、江崎社長個人の立場を危うくするような情報でなければなりません。
ジャーナリストの一橋文哉(いちはしふみや)氏はその著書『闇に消えた怪人』において、事件の背景にある情報として、
・江崎社長の父親が若くして謎の死を遂げていること
・江崎社長兄弟の不仲説
・労働組合や取引先、下請け業者に対するグリコの酷い扱い
などを挙げていますが、ひょっとしたらこれに関連して、何か重大な情報を犯人側が持っていたのかも知れません。
江崎社長が、解放後も犯人との約束を守らざるを得なくなるような重大な情報を。
1さんはそれについて語っていませんが、それを漏らすと身に危険が及ぶからなのか、それとも単純に知らないだけなのかは不明です。
食品6社が協力した謎
1さんによると、事件の早い段階から食品6社が犯人に協力していることになっています。
しかし、ここが最も疑問に思えるところです。
たとえ事件前から横のつながりがあったとしても、犯罪に関わるようなことで、他の5社がグリコに協力するでしょうか?
1さんによると、江崎社長とのやり取りの中で「ある食品会社のスキャンダル」を知ったそうなので、その会社が協力するのは理解できます。
だとしてもグリコとその会社、2社です。あと4社は?
考えられるのは、
(1)犯人グループは、残りの4社についても弱みを握っていた
(2)『ある食品会社のスキャンダル』は、食品業界全体に被害をもたらす内容だった
(3)江崎社長が残りの4社について重大な情報を握っていた
(4)困った時は常に6社が協力するという約束があった
このあたりになりそうです。
(1)は最も可能性が低そうに思えますが、(1)が正しいのかもと思わせるような、別の事件があります。
B作戦
B作戦とは、犯行終結宣言から7年近くもたった1992年3月から警察によって実際に行われた捜査の通称名で、B元暴力団組長をターゲットとしたものです。
犯人グループによる「グリコ(単体)への休戦宣言」の2ヶ月後に、被害企業の関係者名義でB元組長の口座に3億円振り込まれていたということで疑われたのでした。
また、
・B元組長のまわりにはグリコを恨む人物が存在した
・犯人グループの遺留品に関係する人物も存在した
ということもあり、警察としては「B元組長が事件に関係しているに違いない」と判断して精力的に捜査を進めていました。
しかし・・・
ジャーナリストの一橋文哉氏の調査によると、警察が捜査を進めたところ、政界・財界・官界・学界などあらゆる分野で影響力を持つ「ある組織」が圧力をかけてくるようになり、捜査が進展しなくなったそうです。
警察当局はこの組織を「タブー視」「危険視」しているとのこと。
もしこのような組織があるのなら、彼らが犯人グループの背後にあり、企業6者にとって致命的な「重大な情報」を犯人グループ側に提供していたという可能性も出てきます。
そして1さんが掲示板内において、時に質問に対して黙秘権を行使するのは、この組織に触れないためもあると考えられます。
またこういう組織が存在することを前提とすれば
「いくら上層部がつながっているとは言え、特ダネを目の前にしてマスコミの現場が協力するのか?」
「いくらマスコミに不祥事情報を握られ、株取引での利益を約束されているとは言え、警察が犯人を目の前にして見逃したりするのか?」
という疑問も氷解することになります。
その組織はマスコミにも警察にも影響力を持っているでしょうし、それどころかマスコミや警察の内部で重要な地位についている組織メンバーもいるのかもしれません。
ちなみに、マスコミが情報操作をすることは日常茶飯事のことで、グリコ森永事件に関与していたとしてもなんら違和感はありません。
我々が知っている目に見えない情報は、全てマスコミが発している情報であり、すなわちマスコミが発しない情報は、存在しないこととイコールであるからです。
少し例が極端ですが、有名タレントが不倫を起こした場合、業界から干される人と干されない人との差は、マスコミによる情報操作が全てと言っても過言ではありませんよね。
普段我々は、何気ない日々の中で、そのような情報操作を日常的に受け入れているということです。
警察機関も、また然り、ということでしょうか。
また「パチンコで知り合ったチンピラ3人」が「クレームを聞いてもらえないから武装して家に踏み込んで社長を連れ出す」というのは行動が飛躍しすぎている印象もありますが、「謎の組織」が絡んでいるとすれば、最初からすべて計画していたとも考えられます。
その組織が中心となって、大手6社を利用して大きな利益を得るため計画を始動させたというわけです。
その場合、3人は元々その組織のメンバーであった可能性も出てきます。3人は最前線の実行部隊です。もちろん一時的な協力関係という可能性もあります。
そして、3人以外にもサポートメンバーがいたと考えれば、手際よく社長を拉致できたことも納得できます。
そう考えた場合、1さんがグリコ森永事件の始まりの部分を「なりゆきでそうなった」ように説明するのは、「謎の組織」の存在を隠すためだとも解釈できます。
株取引から発覚することはないのか?
1さんの暴露を信じるなら、グリコ森永事件の協力者たちは、特定の企業に関する事件がいつ始まっていつ終わるのかわかっています。
だから株式の取引で、事件が始まる前に売りポジションを取り、終わり直前に買いポジションに転ずれば売りでも買いでも莫大な利益を得ることができます。
でもそういう取引をタイミングよくやっていると怪しまれそうです。実際、捜査本部も株式売買の動向を調査しています。
この点については、発覚リスクを回避するためではないかと思われる事件があります。
当時、「ビデオセラー」と呼ばれる仕手集団(株価を操作して大きな利益を上げようとする集団)がありました。
ビデオセラーはグリコ森永事件の時期に、巨額な利益を得たと目され、「株のかいじん21面相」などとも呼ばれていました。
実際に警察からも事情聴取などを受けており、その行動をマークされていた組織です。
そして、グリコ森永事件の犯人による犯行終結宣言の2ヶ月後、ビデオセラー代表の高橋博氏は遺体で発見されています。死因は「心不全」と発表されたようですが・・・
この事件などは、ビデオセラーが利用された挙げ句処分されたか、あるいは高橋氏がグリコ森永事件の秘密をネタに有力者を脅した結果・・・とは思えないでしょうか?
タイミング的に、ありまりにも出来すぎた感じがしますよね。
※高橋氏の死については月刊「創」で少し取り上げられたようです。
https://www.tsukuru.co.jp/gekkan/1985/12/198512.html
滋賀県警本部長自殺の謎
本部長の自殺の原因は「責任を感じて」と説明されることが多いです。
しかし、自殺の方法が「焼身自殺」です。「焼身自殺」と聞いて、何を思い浮かべますか?
多くの人は「抗議」を思い浮かべるのではないでしょうか。
もちろん責任も感じていたでしょうが、捜査の邪魔をしたり捜査結果を揉み消したりしてくる上層部に対する「抗議」の意味も、自殺に込められていたと考えるのが自然でしょう。
また、一部の警察上層部が、利益の為に魂を売っていたことを、賀県警本部長はある程度は把握していた可能性も十分にあると考えます。
仮説まとめ
以上、「1さん」の暴露にそってグリコ森永事件を振り返り、疑問に思える部分について考察を加えてみました。
1さんの説明する範囲で、裏取引関係者それぞれの利益をまとめると、以下のようになるでしょう。
犯人グループ…金銭的利益、犯罪揉み消し
政治家…株による利益
警察上層部…株による利益、不都合な情報の隠蔽
企業上層部…株による利益、不都合な情報の隠蔽
企業関係者…上層部に協力したことによる会社内での優遇
マスコミ…スポンサー確保、上層部の金銭的利益
劇団…スポンサー確保、上層部の金銭的利益
ただ「株による利益」は目立たない範囲であれば、関係者すべてが享受できそうです。
(もちろん、一連の事件のより具体的な詳細を把握していたのは、上層部の、さらに一部の人間に限れられるようです)
1さんによれば事件のすべての起点はキツネ目の男を中心とする3人組ですが、当記事の考察では、彼らの背後にさらに「謎の組織」、「警察がタブー視、危険視しているある組織」を想定することで、全てがスムーズにつながる、というのが結論です。
日本版の愛国者、ディープステートが絡んでいた可能性、ということです。
もちろん、1さんの暴露内容の真偽は定かではありませんし、それを元にした当記事の考察であればなおさらです。
しかし、1さんの情報には説得力があることも確かです。
スレッドの最後に「創作」だという書き込みもありますが、本人のものとは限らないし、本人だとしても危険を避けるため「創作」ということにしたのだとも考えられます。
さいごに
この事件は、社会に大きな影響を与えたとともに、社会から影響を受けた事件でもあります。
核家庭化が進み、地域の交流が希薄になった事件の時期で、目撃証言が得られにくくなりました。
また大量消費・大量生産の時代を迎え、遺留品から犯人を辿るということが難しくなりました。
このことから警察の捜査はプロファイリングやDNA鑑定といった方向に変わっていくのです。
いずれにせよ卑劣な犯行に間違いはないので、このような事件が2度と起こらないことを望むばかりです。
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