【投稿者:ラムさん】
これは、私が中学生の頃の話です。
三年生になり、修学旅行に行くことになりました。テレビでも有名な観光地ということもあり、皆かなりテンションが上がっていたと思います。
泊まった旅館は、まだ新しくて部屋も広くて綺麗でした。ですが、夜になると男子たちか部屋のドアを叩いたり、勝手にドアを開けたりと、ちょっとした騒ぎになったんです。
担任の先生に注意してもらい、なんとか就寝時間には静かになりました。ですが、夜中のことです。
バンッ! バンッ!!
なんだかすごい音がしたんです。
私は寝ぼけていて、その音を聞きながら(また男子が騒いでいる)ぐらいにしか思ってもいなかったのです。
と、横に寝ていたW村さんがムクッと起き上がったんです。
どうしたのかと尋ねると、彼女が不思議なことを言いました。
「なんか、窓の向こうから音がするんだけど」
その言葉を聞いて、他の子達も起き上がってきました。どうやら、その音が気になっていたのはW村さんだけではなかったみたいです。
私も耳を澄ませてよく聴いてみると、確かに窓の向こうから音がします。
「怖いよ。カーテン開けておこうよ」
「やだよ。暗いの怖いもん」
という会話を繰り返していると、班のリーダーであるN田さんが冷静な声で「風の音でしょ」と言ったのです。
確かに、この日は風がかなり強くふいていました。そっか。そうだよね。風の音だよねと、全員が納得して寝ねることに。
ですが、朝方までその音は続き、私はほとんど眠れないまま朝を迎えました。
そして、翌朝。
誰かの悲鳴で私たちは布団から飛び起きました。
見ると、カーテンを開けた状態でN田さんが立ち尽くしています。そして、窓の外を黙って指差すのです。
そして、その指先の方を見た私たちは、言葉さえ出ませんでした。
結露で曇った窓に、大小混ざった手形が無数に残されていのです。男子のイタズラとも思ったのですが、ここは3階です。
「誰か、窓を叩いた?」
N田さんが聞きます。その問いに、全員が否定しました。窓を叩くどころか、カーテンを開けてもいないのです。
「ねぇ、昨日の音って、もしかして……」
W村さんが恐る恐る聞きます。その言葉に、思い出されるのは昨夜のバンッ!というものすごい音です。確かに、まるで誰かが窓を叩いているような音にも聞こえました。
「きっと、誰かのイタズラだよ……」
そんなことは不可能だとわかっていながらも、私たちは恐怖から、誰かのイタズラということにして、なんとか納得することにしました。
あの音は、誰かが窓の外から叩いていた音だったのでしょうか。
そして、その誰かとは、一体誰だったのでしょうか。