皆さん、日本中で一番多い神社は何神社だと思いますか?
それは、稲荷神社で、全国に3万社あるとも4万社あるとも言われています。
稲荷神社は、それ自体の他に、神社境内に摂社(せっしゃ)として、また路地の一角や個人のお宅のお庭にも祀られている、日本人にとっては「お稲荷さん」として、とても身近な神様です。
しかし、一方で、たまたま通りかかった稲荷に頼みごとをすると祟られる、とか、さびれた稲荷社(いなりしゃ)を拝むととり憑かれる、という話も同時によく耳にします。
実は、私もこの話を聞いてから、小さな祠(ほこら)を拝むのが怖くなりました。
稲荷社を拝むと、本当に祟られるのでしょうか。
稲荷社はどのように祟るのか、そして、稲荷社が日本中で祀られる理由についても見て行きたいと思います。
稲荷社の祟りの実例
祟りとは、人間にとっては恐ろしいものです。
まず最初に、実際に稲荷社に祟られた実例をいくつかご紹介したいと思います。
子孫が稲荷を信仰しない
自営業を営んでいる男性が、商売繁盛の神様としてご利益のあるお稲荷さんを、自宅の庭に祠を作ってお祀りしました。毎日お水を供え、商売繁盛を祈っていました。
しかし、その男性が亡くなると、子供達は稲荷社を何とも思っていなかったので、祠はそのまま庭に放置された格好になりました。
それ以来、家は衰退の一途を辿り、とうとう会社も倒産してしまったそうです。
子孫がお稲荷さんを手直ししたり撤去する
父や祖父がお祀りした稲荷社を、子孫が移動させたり、壊れかけた部分を勝手に手直しした場合も、子孫が急逝することがよくあります。
また、正式な手続きもせずに、稲荷社を撤去してしまうのは、最も祟りを受けるので、気を付けましょう。
特に、家が古くなって建て替えをする時など、稲荷社が邪魔となり、この機に・・・と、正式な手続きを踏まずに撤去してしまう人が現代では多くなっています。
しかし、そのようなことをすると、家族が次々とガンで亡くなったり、子供が授からずに家が断絶してしまう、といったことが起こります。
霊能者が見ると、そのような家の上を、祠を撤去され、行き場を失った狐の霊が怒りながらぐるぐると回っている姿が見えると言います。
歌舞伎稲荷神社の祟り?
2010年から2013年にかけて、歌舞伎座は建て替えを行い、歌舞伎座の後ろに29階建てのタワーが併設されました。
この時、歌舞伎座の中の上階にあった歌舞伎稲荷神社が、歌舞伎座入り口のすぐ右側に遷されました。
この工事期間前後、歌舞伎界では大御所だった役者が次々と6人も亡くなったり、役者が事件・事故に遭ったりと、ただ事では済まない状況となりました。
- 中村富十郎(人間国宝) 逝去
- 中村芝翫(人間国宝) 逝去
- 中村雀右衛門(人間国宝) 逝去
- 中村勘三郎 逝去
- 市川團十郎 逝去
- 坂東三津五郎 逝去
- 市川海老蔵 暴行事件
- 市川染五郎 奈落(ならく・舞台の地下部分)転落事故
中には、お年を召した役者さんもいますが、これらは、本来建物の最上階に祀るべき神社を、1階に遷したことの祟りでは、と言う都市伝説がささやかれています。
一般家庭で神棚を1階に祀る場合は、天井に「雲」と書いた紙を貼り、ここが最上階です、としますね。
1階に遷したことは良くなかったのでしょうか。
ある歌舞伎役者は、
「あんな高いタワーを建ててしまったら、役者の神様が下りてこられない」
と、言ったといいますし、
高度な霊能力を持つ大物歌手も、
「これではいけない。心を込めて慰霊碑を建てないと収まらない」
と言ったとか。
そうすると、建物の最上階に祠を見つけられない神様か眷属(けんぞく・神様のお使い)の狐の霊が怒っていると考えるのも、笑い事では済まなそうです。
突然狐憑きになった女性
ある女性が、オフィスで突然机の上に飛び乗り、変な動きをし出しました。
周りにいた人達には、それが狐の真似をしているように見えたと言います。いつまでも止めないし、止めるように声を掛けると、鋭い目でにらみつけると言います。
色々な霊能者の方々に狐を祓ってもらっても、またすぐに憑いてしまいます。
最後に神道系の優れた2人の霊能者に祓ってもらいましたが、しばらくはそれで収まっていたのに、ある日突然また狐がとり憑いたと言います。
しかし、2人の霊能者ももう手の施しようがなく、その女性が訪ねてきても、インターホンのカメラで彼女だとわかると応対しなくなってしまったそうです。
この女性が何故狐に憑かれたのか、それが稲荷社と関係があるのかはわかりませんが、狐の霊にとり憑かれるとこうなる、また、ある種の稲荷社と狐の低級霊とは関係があるので、載せておきます。
稲荷が祟る理由
お稲荷さんは祟りやすいと考えて信仰するのが無難です。
後述しますが、本来稲荷社のご神体や御本尊は狐ではありません。狐は本殿の外で狛犬(こまいぬ)の代わりに「狛狐」として立っているように、神様や仏様の眷属(けんぞく・神様のお使い)です。
しかし、神様と一緒に拝まれ、油揚げや食べ物の“お稲荷さん”をお供えされるに連れ、狐が自分も神様と同様に崇められる存在だと認識し出したのだと言います。
そもそも稲荷とは
稲荷は平安時代までは、神社のみでしたが、それ以降は仏教系の稲荷も現れました。
神道系稲荷
全国の稲荷神社の総本宮は、京都の伏見稲荷大社です。
創建は711年です。
ここは、元々は渡来人(とらいじん・主に3~7世紀にかけて朝鮮半島や中国大陸から日本に移住した人々)で、高度な織物、稲作、技術工芸を日本に伝えた秦(はた)氏の氏神様(うじがみさま)でした。
また、伏見稲荷大社の裏の稲荷山に、稲作の神様が降臨して稲作が豊かになったという伝説もあり、それが秦氏の稲作の技術と合わさり、伏見稲荷大社は五穀豊穣(ごこくほうじょう)の神様として人々から厚く信仰されるようになりました。
そして、平安時代、日本の五穀豊穣を司る「宇迦之御霊神(うかのみたまのかみ)」が伏見稲荷大社の主祭神とされました。
この神様は、穏やかなお顔のおじいさんだとも、女神だとも言われます。
更に、江戸時代になると、商人達から信仰されるようになり、江戸には路地の間にも小さな祠が建てられ、人々は商売繁盛も祈るようになりました。
因みに、稲荷信仰は元々は五穀豊穣を祈るものだったので、ご祭神も宇迦之御霊神の他に、神社によっては
- 豊受大御神(とようけおおみかみ・伊勢神宮外宮の主祭神で、天照大御神のお食事を司る神様)
- 宇賀神(うがのかみ・弁財天と合体して財をもたらす神様)
- 御饌津神(みけつのかみ・食物を司る神様)
- 猿田彦命(さるたひこのみこと・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の天孫降臨の際、道案内をした神様で、開運の他に商売繁盛、興業の発展の御利益がある神様)
をご祭神とする所があります。
いずれも五穀豊穣や商売繁盛に関係した神様です。
また、ご祭神は他の神社と同じく、1柱とは限らず、複数の神様を祀っていることが多いです。
仏教系稲荷
稲荷社は神社だけではなく、寺院系の稲荷もあります。
こちらの御本尊はインドの神話に出てくる「ダキーニー」です。
人間の心臓を食べていたダキーニーでしたが、大日如来の霊力によって良い神様となりました。
鬼子母神(きしもじん)のようですね。
このダキーニーは、ジャッカルに乗る姿で表されますが、ジャッカルを知らなかった日本人には狐に見えたので、稲荷神社でご祭神と共に崇められている狐に乗る神様として、ダキーニーは豊作の仏様と見なされました。
また、日本では古来、狐は稲を食べてしまうネズミを退治してくれるありがたい動物として見られていたことも、その理由でしょう。
このダキーニーを「荼枳尼天(だきにてん)」と漢字名にして、仏教と共に日本に持ち帰ったのが、高野山を開いた空海です。
そして、日本に稲荷信仰を広めたと言われています。
仏教系の稲荷で有名なのが、豊川稲荷(とよかわいなり)です。
特に東京の豊川稲荷は、五穀豊穣や商売繁盛の他、芸能の神様として、芸能界の人達も信仰するお寺です。
稲荷信仰と狐
このように、稲荷は神社とお寺でそれぞれ信仰されてきました。
そして、稲作と狐が切っても切れない関係だったので、神様や荼枳尼天と共に、狐も信仰の対象とされるようになりました。
狐は願い事を叶える代わりにお礼を要求する
神様や仏様に願い事をして、それが叶ったらお礼参りをするのが常識ですね。願いを聞き届けて頂いたお礼を言いに、また、お供え物を持って行く場合もあるでしょう。
人間同士でも、良くしてもらった人にはお礼を言いますね。
神様や仏様は目に見えませんが、お願い事を叶えて頂いたら、やはりお礼に行くようにしましょう。
そして、狐霊は神様や仏様より、お礼を強く要求すると言います。そして、稲荷を信仰するなら普段から拝むようにしましょう。
そうしないと、狐は不満を感じてとり憑いたり祟りをなすと言います。
稲荷社をむやみに怖がる必要はない
このように、稲荷社に願い事をしたなら、きちんとお礼参りをすることを忘れなければ、稲荷社にお参りすることをむやみに怖がることはありません。
また、願い事が結局叶わなかった場合は、「願解き(がんほどき)」をします。
これは、神様や仏様に以前お願いしたことは、もう済みました、という報告と感謝の気持ちを伝えるものです。
お願い事をした場合、このようにきちんと礼儀を弁えれば、祟られることはありません。
また、伏見稲荷大社や豊川稲荷のような、ちゃんとお祀りされている所なら、眷属の狐も高級なので、悪さをすることはありません。
気を付けなければならない稲荷社とは
上記の様に、稲荷社の狐霊は、普段のお参りやお礼参りを欠かさなければ、祟られることはありません。
しかし、中には安易な気持ちで手を合わせない方が良い稲荷社もあるのも事実です。
お金儲けを願う人が多くお参りする稲荷社
江戸時代、特に江戸には稲荷社が急激に増えましたが、それは、商人や芸妓さんのような人達が、産業の発展や商売繁盛を願って祀られた稲荷が含まれます。
更に、その中には、人々が、ひたすら現世での利益だけをお願いする稲荷社も作られました。そうなると、人々の欲の念だけが異常にそこに溜まってしまい、「気」が良くない場所となってしまうのです。
実際、伏見稲荷大社の境内ですら、千本鳥居の奥にある重軽石(おもかるいし・軽く持ち上げられれば願いが叶い、重いと感じれば願い事が叶う日は遠いとされる石)は、霊能者の人が見ると、大勢の人々の欲の念で暗く見えるそうです。
でも、これはただの石なので、これを持つことで祟られることはありません。
さびれている稲荷社
江戸時代に一気に増えた稲荷社の中には、今はお祀りする人もいなくなり、路地裏や道路脇にひっそりと建っている祠もあります。
祠が出来た時代も、どんな神様が祀られているかもわからず、小さな狛狐がいるのでお稲荷さんだとわかるような稲荷社のことです。
こういう稲荷社には神様はもうおられず、残っている狐霊はそれまで大切に祀られていたのに、と、人間を憎み、その低い波動が低級霊達を集めてしまいます。
つまり、そこは稲荷社ではなく、低級霊達の住み家にしか過ぎないということです。
そんな祠を神様だからと思ってうっかり拝んだり、ましてや願い事をしては、低級霊にとり憑かれても仕方がないという状態なのです。
狐霊にとり憑かれると、上述の女性のような状態になり、普通の生活を送るのが難しくなり、しかも祓うのはとても困難なようです。
神様にも段階があるように、本来は神様のお使いをする眷属も、そのものの性格や、修業不足の所為で格の低いものに成り下がり、人間に祟りを起こすようになってしまうのです。
祟りを受けない為には
では、稲荷の狐霊の祟りを受けない為にはどうすれば良いのでしょうか。
稲荷社を祀ったら代々受け継ぐ
特に、自宅に稲荷社を勧請(かんじょう・神仏の分霊をお迎えすること)した場合は、代々きちんとお祀りすることです。子供や孫、曾孫の代になって、庭の片隅に放っておかれては、神様は去ってしまい、眷属の狐霊も汚い住み家を嫌って祟る恐れがあります。
「稲荷を祀ると3代で家は潰れる」と言われるのは、自宅の稲荷社への信心を代々受け継がなかった為に潰れた家が多かった為と思われます。
お祀り出来なくなったら正式な方法でお帰り頂く
庭にお祀りしている稲荷社を撤去する場合には、神社やお寺に頼んで、神様と狐の霊に、正式に「本都御座(もとつみくら)・神様が元いらした所」にお帰り頂く儀式を行わなければなりません。
それをせずに、勝手に撤去したりすると、家族に死者が出るといった最も恐ろしい祟りを受ける確率が高くなります。
また、神棚に稲荷神をお祀りしている場合も、子孫が拝まなくなったら、上記と同様の儀式をしてもらい、今まで守って頂いたことに感謝しましょう。
稲荷を信仰するなら折々のお参りを
豊作や商売繁盛を願って、稲荷を信仰するのなら、折々のお参りを欠かさず、願いが叶った時には必ずお礼参りをすることです。
「苦しい時の神頼み」という言葉を都合よく使い、困った時だけ、苦しい時だけ手を合わせ、それが過ぎたら何の挨拶もしない、と言うのが一番失礼で悪い例です。
稲荷社の祟りは人間の心が起こすもの
このように見てくると、人間の勝手な信仰の仕方が狐の霊を怒らせることがわかりますね。
祟りを受けやすいさびれた稲荷社も、人間がいつの間にか信仰を止めてしまったことが原因です。低級霊が集まるような場所にしてしまったのは、他でもない私達人間だということがわかります。
きちんと拝んで、お願い事を叶えて頂いたら、必ずお礼参りをする、これだけで、祟りを受けることはありません。
ただ、縁起もわからないような稲荷社は、気の毒に思っても、拝まない方が無難です。
歌舞伎稲荷神社の怪
梨園(りえん・歌舞伎役者の社会)を震撼させた、大役者の相次ぐ死や事故については、稲荷神社の祟りとは思えない面があります。
何故なら、あのように縁起を担ぐ世界であるだけに、神社の遷座(せんざ・神社の場所を移すこと)についてもきちんと行っているはずだからです。
実際歌舞伎稲荷神社は、近くの鉄砲洲稲荷神社(てっぽうずいなりじんじゃ)から御霊を分けて頂いて祀られた稲荷社です。普段祭祀はこの鉄砲洲稲荷神社の神職が行っています。
当然遷座の時も、鉄砲洲稲荷神社が、工事中は株式会社歌舞伎座に御霊を移し、新歌舞伎座完成後は新しい神社に御霊をお戻ししています。
神社を1階に遷すことについても、鉄砲洲稲荷神社の宮司(ぐうじ・神社の長)から、
「大勢の人に見てもらった方が、神様も喜ばれる」
というアドバイスをもらってのことと言います。
それだけに、相次ぐ死者や事故の原因が気になります。
単なる偶然なのでしょうか。
それとも、やはり稲荷社を1階に降ろしたことが原因なのでしょうか。
まとめ
このように見てくると、道端の、縁起も主祭神もわからない稲荷は拝まない方が良いでしょう。
先述の通り、そこには、もう神様はおられず、いるのは人間に悪さをする低級霊達だからです。
江戸時代や明治時代位までは、近所中でお祀りしていた稲荷も、段々と開発が進むにつれ、稲荷も撤去して住宅街になるケースもありました。
そういう稲荷の中には、狐霊だけが行き場を失って、元の信者達が住んでいた一帯を祟ることもあります。
人が死ぬようなことはなくても、何故か近所づきあいが上手くいかなかったり、家が落ち着かないので、しょっちゅう住む人が替わる、といったことがあるようです。
人間は、そのようなことを知らずに家を購入しているのですが、狐霊には、時間の観念がありませんから、いつまでも自分の心地よい住み家を戻せと怒っているのでしょう。
このような場合は、神官、僧侶、霊能者のような人達に頼んで、狐霊に行くべき所へ戻って頂くしかないようです。
そして、稲荷を神棚や敷地内の祠で信仰するなら、他の神様と同じように、毎日お水をお供えし、眷属の狐霊に対しては、油揚げを時々供えて、拝むようにしましょう。
そして、繰り返しになりますが、願い事をしたら、お礼や願解きをすることです。
これは、稲荷社神や稲荷寺院を信仰する場合も同じことです。